インド最大の都市ムンバイに約2年間暮らした、Yさん夫妻とミニチュア・シュナウザーのアトムくん。街は自動車も人も野良犬もたくさんいるし暑いけど、お散歩は？　トリミングはどうしているの？　湧き上がる疑問の数々も、記事を読んで笑顔のアトムくんの写真を見れば解消されていきます！

うちの犬ファーストのインドでの家探し

インド最大の都市ムンバイに、2024年4月まで2年半暮らしたYさん夫妻は、日本からミニチュア・シュナウザーのアトムくんを連れて行きました。
「イギリスやチェコなど、夫は海外赴任が多く、アトムは7年前にプラハで生まれてチェコ生活も経験しているんですよ。だから、インドにも連れて行く選択肢しかありませんでした。とは言っても、ドッグフレンドリーな国でみんながちゃんと犬をしつけているチェコとは犬事情が違うので、不安はありましたが……」と、サチコさん。

Yさん夫妻とアトムくんが2021年秋にインドに到着してからは、まず約4ヵ月のホテル生活。その間、散歩コースなども含めて、アトムくんファーストと言っても過言ではない住まい探しを行ったとか。
「おかげで、夕陽スポットとして有名な海辺の遊歩道が近い、住宅街のレジデンスを見つけられました」と、サチコさん。

毎日２回のインド散歩。途中の路上で買い物も

アトムくんは毎日２回、散歩に出かけます。
まずレジデンスの門を出てからサチコさんが探すのが、路地に住み着いている地域犬のラニちゃん。
「見た目からして、短毛で中型の “ザ・インド犬”という感じ。アトムとすごく仲良しなんです。人懐っこいし、このあたりのガードマンたちにもかわいがられていて。数日間姿を見かけないと、『大丈夫かな？　交通事故にでもあってないかな？　病気してないかな？』とすごく気になります」

ラニちゃんも含め、インドの路上で多く見かける犬たちは首輪をしていて、それぞれの犬の縄張りともいえるエリア内の人々からごはんをもらうなどかわいがられています。
「ただ、狂犬病の予防接種まではしていないと思うので、顔なじみになった子以外はアトムをそばに行かせないようにしています。
インドに来た当初は、『きゃー、大きな野良犬が近づいてきた、どうしよう』とハラハラ。実際、ラニちゃんにアトムは１年近く吠えたてられていましたね。アトムは野良犬の集団に追いかけられたこともありますし、塀の間から後ろ脚を咬まれたことも……。この辺りの子たちからアトムが認めてもらえるようになってからですよ、平和に散歩できるようになったのは。今は私も、アトムを連れていないときは、かわいい“インド犬”たちの写真を撮って楽しんでもいます（笑）」（サチコさん）

散歩途中、露店の八百屋さんやフラワーショップなどに立ち寄って買い物をすることもめずらしくありません。
「うちのそばの果物屋のお兄さんは、アトムのことをすごくかわいがってくれていて。毎回、アトムにちょこっとフルーツをくれたりするんですよ」

海散歩がお気に入り

Yさん夫妻、そしておそらくアトムくんもお気に入りの散歩スポットは、海。
レジデンスがあるバンドラ・ウエスト地区から徒歩20分くらいのところにあってよく通うのは、たくさんの犬たちが大集結する海辺の遊歩道です。
原付バイクや自家用車で犬を連れてくる人も少なくありません。
「あ、アトム～。仲良しのあの子が来たよ」と、次から次へとすれ違う犬を、Yさん夫妻もアトムくんもチェックしながら歩きます。

遊歩道で人気のアイスクリーム店に寄り、Y夫妻はそれぞれマイブームのフレーバーアイスに舌鼓を打つことも。
夕方には水平線に沈む太陽を座って眺めながら、ゆったりとしたひとときを過ごします。

インド映画のスターが暮らす大邸宅が並ぶジュフビーチには、運転する車に乗ってアトムくんと足を運びます。
「こちらもムンバイ屈指の夕陽スポットで、夕方は、大げさではなく人々がわんさわんさと集います。ムンバイの人口は約1500～1600万人ですからね、どこへ行っても、人、人、人、車、車、車です（笑）。
平日の朝は人もまばらなので、ねらい目。アトムのお気に入りのボールを砂浜で投げてあげたりもします」（サチコさん）

飼い主さんもアトムくんもお気に入りの海ですが、6～9月の雨季は、なかなか訪れにくいそうです。
「１日中、激しい雨が降り続く日も少なくないですから。マンションの窓の外をチラチラ見ていて『あ！　止んだ』と思ったら、速攻でアトムを短時間外に連れ出すのが精いっぱいですね」（サチコさん）

トリミングも動物病院もペットホテルも問題なし

Yさん夫妻が暮らすエリアには、トリミングサロンも動物病院も、さらにはドッグカフェもそろっています。
「雨季に、車でアトムを動物病院に連れて行ったときのこと。動物病院がある路地が冠水していて、車から降りて、夫はアトムを抱っこして下半身ズブ濡れになりながらアトムを獣医師のもとまで運んだことも……。インドならではの、できごとですよね」と、サチコさんは笑います。

保護犬や保護猫を含め、犬や猫を飼っているインド人は多数。
「こちらではシュナウザーは見ないんですが、シー・ズーやマルチーズ、ヨーキーなど、トリミングが必要な犬種はもちろん、トリミングサロンに連れて行っていますよ。
アトムが行きつけのトリミングサロンには、プレミアムドッグフードやハーネスやウェアなど、日本でもおなじみの品々が並んでいます。最近、クッキーバーのコーナーもできて気になっています」とのこと。

新型コロナ渦で、デリバリー文化がさらに発展を遂げたインドでは、ドッグフードをデリバリーで注文する家庭も少なくありません。
「『あ、なくなりかけてる』と気づいてお店に頼めば、その日のうちに届いてとても便利です。
実はアトムがお世話になっているペットホテルでも、預けた量が１回分だけ不足してしまい……。『じゃぁ、デリバリーで取り寄せてあげておくね』と、助かった経験があります」（サチコさん）

ペットホテルに関しては、Yさん夫妻はいくつか見学したのち、車で渋滞時は1時間近い距離の施設に決めました。
「広いスペースでフリーにしてもらえて犬を愛するスタッフと遊べる時間もあるし、ごく短時間ですが裏庭に散歩に連れて行ってくれたりもするしと、アトムも楽しく過ごせそうなのが決め手になりました」（サチコさん）

インドのペットドッグライフも、日本とさほど変わらず楽しみ満載のようです。

文・写真：臼井京音