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2024.07.08

【#病気とたたかう】全盲でも楽しく暮らす8歳は今日もハッピー!補助具も安心をサポート

【#病気とたたかう】全盲でも楽しく暮らす8歳は今日もハッピー!補助具も安心をサポート

病気の治療中の過ごし方、病気やハンディキャップとの上手な付き合い方など、同じような悩みと向き合った先輩飼い主の経験や知恵を頼ってみませんか?
病中病後に少し不自由さがある犬たちとその飼い主さんの明日を少しでも明るく、楽しくするために役立つ情報をお届けします。(POCHI編集チーム)

8歳で全盲になってしまっても、元気で明るく過ごしているチワワのブルーノちゃん。その楽しみ満載ライフを紹介します。飼い主さんへの大きな気づきと学びも、ブルーノちゃんは失明後にもたらしたそうで……。

緑内障で、8歳で全盲に

「ブルーノの右眼に義眼を入れる手術が決まった2024年の1月はずっと、妻も私も笑顔を失い、暗い気持ちに包まれていました。『まだ若いのに、見えなくなるなんて……』と」
そう語るのは、東京都内でチワワのブルーノちゃんと、ブルーノちゃんより5ヵ月前に生まれたチワワとミニチュア・ダックスフンドのミックス(チワックス)のポンゴくんと暮らす、市川さん。

お出かけ前の一コマ。まずはポンゴくんがぴょんとカートに飛び乗ります

お出かけ前の一コマ。まずはポンゴくんがぴょんとカートに飛び乗ります

ブルーノちゃんは8歳で、緑内障が原因で右眼の視覚を失いました。
「右眼の手術から1ヵ月後に、左眼の緑内障も悪化してしまって。点眼薬で眼圧を管理する自宅ケアなどをしていましたが、眼圧が上がると痛くてつらいだろうと思ったのと、3月には角膜潰瘍を発症してしまい、いずれ失明する運命ならばブルーノの苦痛をはやく取り除いてあげたいと、3月に左眼も義眼を入れる手術をしたんです。
身体が元気なうちに全盲である状態に慣れたほうが、ブルーノ自身も今後暮らしやすいだろうとも考えました」(市川さん)

日課になっている点眼タイムのあとは、自らドッグソファに上ってくつろぎタイム

日課になっている点眼タイムのあとは、自らドッグソファに上ってくつろぎタイム

目が見えないけれど……

市川さん夫妻は、目が見えなくなってしまったブルーノちゃんのことを、当初とてもかわいそうに感じていたそうです。
「まだ老犬でもないし、元気だから走ることが大好き。つい数ヵ月前までドッグランでほかの犬たちと追いかけっこしていたのに、それができなくなるかもしれないなんて……、と。
ところが、自宅でブルーノを見ていると、目が見えなくても気にしていない。ポンゴと一緒に遊んだり、大喜びでおやつにかぶりついたりと、ちっとも凹んでる様子じゃなくて。な~んだ、人だけが『かわいそう、かわいそう』と後ろ向きだっただけで、当の本人というか本犬はすごく前向きじゃないか! 走れることがすべてではないし、できることはたくさんある。気の持ちようが大切なんだ。そう、気づかされたんです」

失明する前から知っている“犬トモ”との触れ合いも楽しみのひとつ

失明する前から知っている“犬トモ”との触れ合いも楽しみのひとつ

ブルーノちゃんの目が見えない生活を、助けてくれたアイテムもあると言います。
「それは、“ドッグバンパー”という、人間の視覚障碍者が使用する白杖のようなもの。顔の前の輪っか部分が、障害物に触れると衝撃を逃してくれるしくみです。
インターネットで『全盲 犬 装具』などと検索していたら見つけ、さっそく、神奈川県横須賀市までブルーノを連れて採寸に行きました」

ドッグバンパーを装着したまま横向きでスヤスヤ

ドッグバンパーを装着したまま横向きでスヤスヤ

目の見えない犬のための装具で安心生活

ブルーノちゃんは、ドッグバンパーを室内でも装着しています。
「術後10日目に、角膜潰瘍になってしまったんです。それが外的な衝撃によって生じたのかわかりません。でも、ドッグバンパーをつけていないとこちらが心配になってしまって。ブルーノが安全に過ごせるように、寝るとき以外はつけることにしました。
そうしたら、ブルーノもつけているほうが安心するようで、スタスタと違和感なく動けるようになりましたね」

カーペットを敷いてあるので歩きやすいリビング&キッチン。写真右手前が、2頭のトイレ

カーペットを敷いてあるので歩きやすいリビング&キッチン。写真右手前が、2頭のトイレ

ブルーノちゃんは慣れたリビングで、ドッグバンパーをつけたままトイレも水飲みもスムーズにこなします。
パパとママがくつろぐソファや、ドッグソファにも軽々と上り、全盲だとは信じがたい軽快さ。
「一番の楽しみは、食べることじゃないかな? なんでも喜んで食べてくれるので、その姿を見ていると私たちもうれしくなります」とのこと。

おやつに目がない2頭。オスワリして、そろそろもらえそう!

おやつに目がない2頭。オスワリして、そろそろもらえそう!

屋外でもマイペースに楽しみを重ねて

ドッグバンパーをつけて、ブルーノちゃんはポンゴくんと一緒に散歩にも行きます。
「この間は小学生に、『カチューシャつけてるの? かわいい』と言われました(笑)。
ブルーノはまだ外は緊張するみたいで、前みたいにスタスタは歩かないですね。自宅ではしっぽが上がっていることも多いですが、外では下がってしまいます。
でも、カートに載せていると鼻を高く上げてにおいを嗅ぐしぐさを見せたりして、きっと外の風、音、においなんかを感じるのは楽しいんじゃないかな?」と、市川さん。

目が見えなくても鼻は使えるので、以前のようにじょうずにあいさつできます

目が見えなくても鼻は使えるので、以前のようにじょうずにあいさつできます

視覚を失う前、ブルーノちゃんはドッグランに毎週末のように通っていました。
ほかの犬との追いかけっこに興じるブルーノちゃんの横を、ポンゴくんが市川さん夫妻が投げたボールを追いかけて猛スピードで駆け抜けるのが、定番の過ごし方。
「全盲になってから、なじみのドッグランに4~5回行きました。足元がフカフカして柔らかいし、きっとにおいや雰囲気で大好きなドッグランだとわかるんでしょうね。10~15分、うれしそうにトコトコ歩いたり、たまに小走りする姿を見せてくれました。帰り道の横断歩道も、ちゃんと渡ってくれて。感動して、動画も撮ってしまいました(笑)」

ポンゴくんもブルーノちゃんのそばに寄り添いながらエスコートとサポート

ポンゴくんもブルーノちゃんのそばに寄り添いながらエスコートとサポート

市川さんが「ブルーノが外に慣れていくプロセスを見守りながら、私たちも手探りであれこれ試しながらサポートしていく」と語るとおり、ブルーノちゃんは自分のペースで焦らず、市川さん夫妻を信頼して身をゆだねているようです。

ゆっくり、ゆっくり、ブルーノちゃんのペースに合わせて

ゆっくり、ゆっくり、ブルーノちゃんのペースに合わせて

これから先、健やかに楽しく

眼圧のコントロールを行っていたときは、ブルーノちゃんは最多で6種類の点眼薬を4時間置きにささなければなりませんでした。
今は、ドライアイを予防するために1日3回の点眼をしています。
「ブルーノはこれまで、アレルギー、椎間板ヘルニア、前提疾患と、眼病以外にも健康トラブルがありました。でも、これから共有する時間はまだまだたくさん。一緒に、健やかでいられる生活を心がけたいですね。たとえば“筋活”とか。
我が家の犬たちが楽しさを感じられる毎日を重ねられれば、私たちも幸せです。
ブルーノにはいつも、前向きでいることの大切さを教えてもらっています」
市川さん夫妻は、そう言いながら、じゃれあうブルーノちゃんとポンゴくんを目を細めながら見つめていました。

「今日も楽しかった~♪満足よ」byブルーノちゃん

「今日も楽しかった~♪満足よ」byブルーノちゃん

文・写真:臼井京音



参考:ドッグバンパー過去記事

*1 【#真のプロフェッショナルに迫る】失明しても不自由なし!世界にひとつ"ドッグバンパー"開発ストーリー https://www.pochi.co.jp/ext/magazine/2024/02/bigdog-dog-bumper.html