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2022.10.26

【#大きな犬と】"介助犬"と"盲導犬"が小学校で実演!働く犬はすばらしい!

【#大きな犬と】

同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、最新情報やお役立ち情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)



今回のお役立ち情報働く犬

大きめなサイズの犬だからこそ活躍できる“補助犬(サポートドッグ)”がいます。そのなかでも“介助犬”と“盲導犬”の仕事ぶりを紹介する「小学校での特別講義」を取材しました。小学生たちも「おぉぉ!」と何度も歓声をあげたり、補助犬との触れ合いで笑みをこぼしたりしながら、介助犬や盲導犬への理解を深めた講義の様子をぜひご覧ください。

レトリーバーを見て目を輝かせる小学生たち

「わ~、かわいい!」「おっきいけど、やさしそうな顔してるー」
2022年夏、東京都八王子市内の小学校に、4年生の歓声が響いています。
教室で児童たちを出迎えたのは、日本介助犬協会の元PR犬ヨーゼフくんと、現役の盲導犬であるレジーナちゃん。
教壇に立ったヤマザキ動物看護専門職短期大学の山川伊津子先生は、日本の“身体障害者補助犬”には“盲導犬”“介助犬”“聴導犬”の3種類があると説明したのち、さっそく質問をします。
「ねぇみんな、介助犬や盲導犬は全国に何頭いるか知ってる?」
子どもたちは首をひねりながらも、「1000頭」「50頭」「1万頭!」などと手を挙げては予想数を発言。

まずはレジーナちゃんとヨーゼフくんのあいさつ。その後、出番を待つ2頭

まずはレジーナちゃんとヨーゼフくんのあいさつ。その後、出番を待つ2頭

「正解はね、2022年4月現在、介助犬が57頭、盲導犬が848頭、聴導犬が61頭なんですよ」と発表されると、
「えー、思ったより少ない!」という声が一斉にあがりました。

介助犬はどんな仕事をする犬?

「介助犬って知ってるかな?
介助犬は、手足が不自由な人のお手伝いをする犬です。手足が不自由な方のことを肢体不自由者と呼びますが、その多くの方は車椅子に乗っていますね」
山川先生が説明をすると、早く介助犬の具体的な仕事を知りたいといった様子です。

「介助犬は、落ちたものを拾います。車椅子に乗っているときに何かを落としても、手を伸ばしても届きません。また、肢体不自由者の方々はうまく力を入れることができません。だから、拾ってもらうと助かるんですよ。
冷蔵庫の中のペットボトルなど、少し遠くの物を取りに行くこともします。手足が不自由な方のなかには暑いとか寒いとかを感じにくい場合がありますから、定期的に水分を補給する必要がありますが、しょっちゅう冷蔵庫に行くのは大変ですからね。
そうそう、介助犬はスーパーの駐車場で駐車券を取ることもできるんですよ。自動車の窓から身を乗り出して。
あと、洋服の袖や靴下を引っ張って、着替えの手伝いもします」と、山川先生。
すると「すごーい!」と、子どもたちは感心しながら、待機中の元PR犬ヨーゼフくんに熱い視線を注ぎます。

子どもたちの前で意気込み十分な介助犬の元PRドッグのヨーゼフくん

子どもたちの前で意気込み十分な介助犬の元PRドッグのヨーゼフくん

介助犬のデモンストレーションに感嘆の声

「では、介助犬をみんなに知ってもらうために活動していたヨーゼフくんに、デモンストレーションをしてもらいましょう!」
13歳のヨーゼフくんが飼い主の加藤涼子さんと登場すると、子どもたちは身を乗り出します。

デモンストレーションは、自宅前でキーホルダーを落としたという設定。
「ヨーちゃん、カギ」と加藤さんがヨーゼフくんに指示を出すと、ヨーゼフくんはすかさず拾って加藤さんの手元に届けます。
「誰か、キーホルダーを拾ってくれる人を待つのは大変ですよね。そんなときに、介助犬が助けてくれるんです。
お財布からコインを落としたときも、手足の不自由な方は誰かにどのタイミングでお願いするかすごく考えるそうです。『でも、いつもうれしそうに拾ってくれる介助犬のおかげで、1円をあきらめることがなくなりました』と、にこやかな顔で教えてくれるユーザーさんも少なくありません」(山川先生)

落としたカギなどを拾ってユーザーさんに渡します

落としたカギなどを拾ってユーザーさんに渡します

さらにヨーゼフくんが、携帯電話やペットボトルを拾って加藤さんに渡すと、子どもたちは拍手喝采。
「ペットボトルは、冷蔵庫の扉を開け閉めもして、ちゃんと持ってきてくれますよ。介助犬は24時間ユーザーさんと一緒にいて、指示が出されたら探して持ってきます。
介助犬も盲導犬も、働く犬たちにとって仕事は遊びのひとつ。褒められるとうれしいってしっぽを振ります」と山川先生が付け足すと、しっぽをブンブン振るヨーゼフくんを見ながら子どもたちも笑顔になっていました。

介助犬は離れたところの物も、探して運んでくれます

介助犬は離れたところの物も、探して運んでくれます

盲導犬ユーザーからのリアルな話に聞き入る

盲導犬は視覚障害者の歩行を安全に導く犬。目が不自由な方たちが歩く際に、盲導犬は一緒に歩きながら安全に導きます。
講義では、レジーナちゃんのユーザーであるゆきこさんも登壇して、日々の暮らし方や、点字や機械などを使って文字を読んだり書いたりする方法なども紹介されました。子どもたちも興味津々に聞いています。
その後、目が見えないのはどういう感覚かを目隠しをして経験する児童もいました。

「目が不自由な方が外を歩く方法は、3つあります。
一番安全なのは、ガイドヘルパーさんと歩くこと。でも、ガイドヘルパーさんにいつもお願いするのは相手の都合もあるし大変で、少し気を遣います。そこで独りで歩くには、白い杖を持つ方法があります。もうひとつ、盲導犬と歩く方法もあります。法律で、視覚障害者が外出する際は、白杖か盲導犬を伴わなければならないと決められているんですよ」(山川先生)

誘導中以外は盲導犬もオフタイム。目を閉じてひと休み

誘導中以外は盲導犬もオフタイム。目を閉じてひと休み

ゆきこさんは、次のように語ります。
「盲導犬は私にとっては“愛犬”でもあります。ハーネスをはずしたら、仕事はせずふつうのワンちゃんと同じ。だから、私はお散歩で出会う飼い主さんたちに、犬との暮らし方についてたくさん教わりました。
盲導犬は、段差を教えてくれます。車が来ても止まって教えてくれます。ホームの端に近づいたら止まってくれます。
だけど、『〇〇駅までお願い』と言っても盲導犬は地図を読めないので、右や左などの方向の指示を出すのはユーザーなんですよ」
実際にレジーナちゃんに指示を出しながら教室を歩くゆきこさんに、子どもたちは目が釘付け。

レジーナちゃんの動きにまばたきも忘れて見入る子どもたち

レジーナちゃんの動きにまばたきも忘れて見入る子どもたち

「あ、そうそう。犬は信号の色の判断はできないので、もし盲導犬と一緒にいる人を見かけたら、信号の色は教えてもらえると助かります」と、ゆきこさん。
続いて、山川先生は言います。
「私たちは盲導犬やハーネスには、決して触らないように。盲導犬の目を見たりするのも、仕事に集中できなくなるのでやめましょう。
もし手助けすることがあれば、『何かお手伝いしましょうか?』『どうやって誘導しますか?』と聞いてくださいね。『肩を貸してください』『肘を貸してください』などとユーザーさんが教えてくれるはずですから」
子どもたちとそばで聞いていた保護者の方も、それを聞いて深く頷いていました。

教室をまわったあと、椅子の前でゆきこさんに合図を送るレジーナちゃん

教室をまわったあと、椅子の前でゆきこさんに合図を送るレジーナちゃん

触れ合いタイムに子どもたちが感じたことは?

講義の最後には、補助犬全般について。
「盲導犬と介助犬と聴導犬は『身体障害者補助犬法』という法律のおかげで、公共交通機関に乗ったり、公共施設に入ったりすることができます。スーパーや飲食店も同伴可能だと法律で決められています。
だけど実際には、ユーザーさんが入店を断られることも少なくありません。だから、みんながもし断られて困っているユーザーさんを見かけたら『法律を知らないんですか?』と、お店の人などに伝えるのも助けになりますね」(山川先生)

小学生からの質疑応答コーナーでは、こんな質問も出ました。
「補助犬になるために、大きさは決められていますか?」
答えは、次のとおり。
「盲導犬と介助犬はある程度の大きさが必要です。人を支えたりする必要もありますからね。聴導犬は、大きさは関係ありません」

ヨーゼフくんのぬくもりとやさしさを感じながら

ヨーゼフくんのぬくもりとやさしさを感じながら

最後は、ヨーゼフくんとレジーナちゃんとの触れ合いタイム。
「わぁ、あったかい」
「ニコニコしてるなぁ」
「あのね、おじいちゃんの家にもレトリーバーいるんだよ」
「やさしい顔してるー!」
などと声をかけながら犬たちと触れ合う子どももいれば、声も出さず目を細めながらずっと背中を撫で続ける子どももいました。
2時間の講義で、子どもたちは貴重な経験を伴う大きな学びを得たことでしょう。

レジーナちゃんを撫でながら「かわいい~」を目を細めます

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ライター・臼井京音



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