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2023.05.24

今年もマダニ注意報。草むら、森の中で寄生する厄介者について獣医さんが教えてくれました。

今年もマダニ注意報。草むら、森の中で寄生する厄介者について獣医さんが教えてくれました。

夏に向かって増えてくるのが厄介な虫たち。犬と散歩しているとまとわりついてくる蚊やノミのほかにもとくに注意が必要な害虫がいます。「マダニ」です。

一度ついてしまうと、大量に血を吸って大きく膨らみ、不気味なだけではなく、吸血しているマダニをとるのも素人には難しく、非常に厄介な存在ですよね。

今回はそんなマダニについて、改めて獣医さんに解説してもらいました。マダニの生息地や着きやすい体の部位など、ぜひチェックしてみてくださいね。

DOG's TALK

監修者:獣医師 菱沼 篤子

監修者:獣医師 菱沼 篤子

犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。

犬に寄生するマダニの生息地

マダニが付くと厄介なことになる、というのは日本で暮らすほとんどの飼い主さんはご存知だと思います。
そして、できることならマダニに寄生されたくない、ですよね。
それならまずは、どういった場所でマダニが潜伏しているかを知っておきましょう。

マダニは本来、野生の動物や鳥などについています。
そのため、少し前まではマダニに接触する機会があるのは自然豊かな山の中や保護林などに限られている、と考えられていました。
しかし、近年ではマダニは生息域を広げ、都市部や市街地でも見られるようになっています。
また、全国的に見ても東北地方など、従来ではマダニがあまり見られなかったエリアでも発見されるようになり、着実に生息域を広げていることが分かります。

マダニは少しでも樹木や草が生えているところなら、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道のほか、公園や河川敷であっても生息している可能性があるといわれます。
犬は茂みの中に入っていくのが好きな子が多いと思いますが、その時にマダニが付いてしまうことが多いようです。

とはいえ、全体の傾向としてはやはり都市部よりは自然豊かな郊外、そして山林のほうが規制のリスクは高い傾向にあります。

■ シカの生息密度とマダニの関係

国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所によると、マダニが多く出現する森や茂みには一定の法則があるとの見解を示しています。
マダニが特に多くなる条件としては以下のものがあるとのことです。

・シカの生息頭数が多い地域である
・大きく背の高い樹木と、その木陰で繁る背の低い植物(下層植生)という構成が顕著に見られる
・湿度が保たれており、ジメジメとしている
・気温が25度以上である


ちょっと分かりにくいのですが、様々な高さの樹が生えている森というよりも、背が高く大きな木と茂みばかりで構成されていて(木の高さにばらつきがない)、なおかつ木陰の水はけが悪く、落ち葉などでジメジメしているような環境をイメージしていただければ良いと思います。

これらの条件がすべて満たされている必要はなく、いずれかが満たされていればマダニのリスクがあるということになります。
普段の散歩ルートでは、マダニの活動が活発な時期はこういった場所はなるべく避けるようにしてくださいね。

犬の体でマダニが付きやすいのは、お腹、耳

マダニは、目・鼻・口の周り、耳、胸、お尻の周り、内股、指の間などの毛が薄い部分につきやすい傾向にあります。
これらの部位は、茂みの草と物理的な距離が近いこと、そして被毛が比較的薄い傾向にあります。

ボルゾイやグレートデンのような脚が長い大型犬と比べると、ミニチュアダックスやチワワ、シーズー、マルチーズ、トイプードルなどの背が低い犬や脚が短い犬の方が寄生されやすい傾向にあります。
草が生い茂っている場所、ジメジメしている場所などを通ったり、茂みの中に入ったら、マダニが付いてしまっていないかチェックしてあげてくださいね。

もしも、犬の体にマダニが付いてしまっていることに気が付いたら、飼い主さんが自分で取り除こうとするのはNGです。マダニは皮膚の奥にまで頭を突っ込んで噛みついているので、簡単には取れません。
無理やり引っ張ってしまうと、マダニの胴体だけがちぎれて、頭部はそのまま犬の体内に残ってしまい、さらに厄介なことになってしまうこともしばしば。
マダニを取り除くのは、動物病院での処置が最も安全で確実です。

動物病院で行われる犬のマダニ治療とは

動物病院では、寄生しているマダニを取り除く専用のピンセットを使って、潰さないよう犬の皮膚から取り除いてから、駆除薬も投薬します。
マダニは一度寄生すると、簡単には振り落とされないようにセメント質の物質で自分の体を固定することはご存知の方も多いのではないでしょうか。
ガッチリと犬に結合しているマダニを無理に引きちぎると、既に吸血された血液がマダニの持っている病原菌やウイルスと混ざった状態で逆流し、犬や人間の感染症の原因になる可能性もあります。

そのため、マダニの処置は慎重に行う必要があるのです。
また、マダニの寄生部分が既に炎症を起こしていたり、化膿している場合には、消炎剤や抗生物質を使用して治療することもあります。
ただ単にマダニを取り除くだけ、ではなくさまざまなリスクを考慮して処置を行っています。

マダニの生息していそうな場所に行くときは、必ず対策を。

普段からノミ、マダニの対策として投薬を行っているというご家庭も多いと思います。
普段、都市部で暮らしている犬であったり、様々な事情で普段は投薬をしていない、という犬でも野山に出かける時は必ず予防薬を使用するようにしてください。
リスクが高い場所に行くときだけ、予防薬を使用するような一時的な利用でも効果は変わりません。(※動物病院で処方されるようなものであれば、です)

ただ、注意してほしいのが、一般的に使用されている害虫予防のお薬などは効果が現れるまでに48時間ほどかかるものが多いです。
与えてすぐに虫除け効果が現れるわけではないので、お出かけのタイミングの2~3日前までには投薬しておくことをオススメします。

■犬のマダニ対策のお薬の種類について

犬に使用される害虫対策のお薬には、働きによって大きく分けて2種類あります。今回のお話では主に「駆除剤」を前提にお話ししています。


・駆除剤:マダニやノミが犬の体にくっついて吸血して初めて効果を発揮します。吸血することによりこれらの害虫に有害な成分が働き、すぐに死んでしまいポロっと落ちます。寄生による感染が広がる前にしっかりと駆除し、家族などに被害が及ぶことを防ぎます。

・忌避剤:マダニやノミが犬の体に付かないようにすることが目的です。ハーブ由来の成分などを使っているものもあります。

おわりに

今回は暖かくなってくると活動が活発になる厄介者、「マダニ」について改めてご紹介いたしました。
現在ではニュース番組などでも取り上げられることが増え、知名度が上がってきたマダニですが、正しい対策ができている人は多くはないのだと思います。
マダニは、犬にとっても、そして家族である私たち人間にとっても非常に厄介な存在です。犬の体にマダニが付いていることに気が付いたとしても、安易に取り除くことは絶対に避け、動物病院で相談するようお願いします。

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