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2024.04.08

犬の耳掃除のケア方法自宅でできるコツ、道具選びを獣医師が解説します

犬の耳掃除のケア方法自宅でできるコツ、道具選びを獣医師が解説します

家庭で犬のケアはどれくらい行っていますか?シャンプー、爪切り、歯磨きなどのほかにも耳掃除も大切なケアですよね。
でも、犬の耳掃除ってどれくらいの間隔で行ったらよいのか、どんな道具を使ったら良いのか、あまり自信がなくて「なんとなく」やっているという方も多いのでは。
犬の耳はとってもデリケート。正しくお手入れができないと、かえって耳のトラブルの原因になってしまうことも…。
そこで、今回は獣医師が犬の耳掃除について解説します。犬の耳掃除を安全かつ衛生的に行うためのポイントをまとめてみました。

DOG's TALK

獣医師 菱沼 篤子

獣医師 菱沼 篤子

犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。

犬の耳の汚れの原因


健康的な犬でも耳垢が出ることがあります。耳垢は剥がれ落ちた表皮や耳の分泌物が固まったものなので、生きている限りは必ず出るもの。
健康的な犬から出る耳垢は、黄色みがかった白色で、量も少なく臭いやベタつきもありません。
耳の中の赤みやかゆみなどもありませんので、これらの異変はトラブルのサインということになります。

犬の耳垢が黒や茶色でべたつきがある場合は、細菌などが繁殖している可能性があります。ひどいようであれば、マラセチア性外耳炎や細菌性外耳炎にかかっている可能性も疑われます。

耳垢がドロっとした黄色で膿の臭いがする場合は、耳の中の皮膚が細菌に感染している可能性が疑われます。
症状が進行すると耳から膿がでる場合もあり、強いかゆみや痛みが特徴です。耳の状態を気にすることが多くなったり、ぶるぶるの回数が増える、耳を足で掻こうとするなどの仕草が増えることは細菌感染のサインかもしれません。

これらの犬の外耳炎は、耳の中が蒸れたりバリア機能が低下することで、耳の中にいる菌のバランスが乱れることで起こりやすくなります。
基本的にはこれらの耳のトラブルを防ぐためにも、家庭での定期的なお手入れが必要になります。とくに垂れ耳の犬で長毛の、プードルやゴールデンレトリバー、コッカースパニエル、ダックスフント、皮膚が弱いフレンチブルドッグやボストンテリアなどでは注意して耳の状態をチェックしてあげるようにしてくださいね。
水に入ることを仕事にしていた犬種(プードルやシュナウザー)は耳の中にも毛が多い傾向にあるので、注意してあげてください。

■ 犬の耳ダニに要注意!

耳ダニという言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
耳ダニはその名の通り、犬などの耳に寄生するミミヒゼンダニによって引き起こされるトラブルで、赤黒い耳垢が出るようであればその可能性が高いです。
耳ダニを持っている犬や猫などと接触することで広がり、家庭でのケアで改善することは難しいのが現実です。ほかの犬や猫に移してしまう可能性もあるので、専門的な治療は必須となり、場合によっては隔離が必要になるケースもあります。

犬の耳は中を傷つけないように要注意

犬の耳のケアをするときには、注意するべきポイントとして「目に見えているところだけ」を心掛けるようにしてください。
目に見えない部分まで綿棒などを使ってお手入れをする必要はありません。
拭き取りをする際も、犬の耳を傷つけないように柔らかいコットンや布を使うほか、犬の耳掃除用のシートなども販売されていますので、そういったものを使うのがオススメです。
また、トリミングサロンなどでは犬の耳の中が蒸れることを防ぐために耳の中の毛を抜くことがあります。
しかし、これを家庭で行うのはオススメできません。
垂れ耳の犬などで、蒸れてしまうことで外耳炎を繰り返したり、ニオイが気になる場合には、トリマーや獣医師にご相談ください。

■ 耳掃除の頻度はどれくらいが適切なの?

犬の耳掃除はどれくらいの頻度で行うべきなのか、という点については犬によってまちまちだと思います。
犬の耳を覗いて、汚れや耳垢が気になったとき、ニオイが気になったときに拭き取るという程度で問題ないと思います。

犬の耳の状態チェックは毎日でも行っていただいて構いません。
とくにたれ耳の犬、フレンチブルドッグなどでは週に1度以上かならず耳の状態を見て、赤みがないか、耳垢が出ていないか、嫌なニオイが出ていないかなどを確認する習慣は、お互いのコミュニケーションを深めることにもつながります。

獣医師が教える、犬の耳掃除の手順

初心者向け:ふき取りタイプの場合

1.コットン数枚をひたひたになるまで耳洗浄液をしみこませる。(耳掃除用のシートを使用するのも◎)この時、耳洗浄液を人肌程度に温めておくと、犬が嫌がらない可能性が若干上がります。

2.耳の内側の汚れを毛の流れに沿って優しく拭き取る。犬が嫌がるようであれば、無理に押さえつけたりせず、少しずつ慣れさせていくのがオススメです。ご褒美を与えても良いと思います。

3.コットンを犬の耳の奥まで押し込んだりせず、耳の穴周辺を撫でるように優しく拭き取る。

4.コットンに汚れがつかなくなったら終了です。

■耳の洗浄液について

犬の耳の洗浄液も販売されていますよね。犬の耳の中まで汚れを落とすことができたり、ニオイ対策にも効果的ですが、嫌がる子も一定数います。使い方は、耳の中に洗浄液を流し込んだ後に耳元を軽く揉む。その後、犬がブルブルすることで奥まで入った洗浄液が汚れと一緒に外に排出されるという流れです。
難しいようであれば、動物病院などで耳の中を洗浄する処置を行うこともできますので、無理に行うことはせず、犬の気分と体調を優先してあげてくださいね。

おわりに

今回は犬の耳掃除について獣医師からのアドバイスをご紹介しました。犬の健康維持のために必要なケアの一つではありますが、犬の性格などによっては定期的に行うことが難しいケースもあると思います。そういった場合は無理に押さえつけたりするようなことはせず、動物病院やトリミングサロンでも処理ができますので、プロの手に頼るのも一つの方法です。
飼い主も犬もストレスなくできるのが理想的なお手入れですので、難しいようであれば相談するのも犬のための選択肢として考えてみてくださいね。