• コラム

2025.10.16

【#真のプロフェッショナルに迫る】犬の幼稚園(保育園)ってどんなところ?社会化の大切さとは

【#真のプロフェッショナルに迫る】犬の幼稚園(保育園)ってどんなところ?社会化の大切さとは

あまり目立たないけれど、実は犬との生活を陰で支えている繊細なプロの仕事の存在を、意識したことはありますか?犬と暮らしていくうえで欠かせない知識や知っておきたい情報、身に着けておきたい技術などについて、"真のプロフェッショナル"とたたえたい、ある方面で専門性の高い有識者の方々にインタビューした内容をご紹介しています。
今回は、犬の幼稚園(保育園)についてご紹介します。(POCHI編集チーム)

今回のお役立ち情報通園型の犬のしつけ教室=いわゆる犬の幼稚園(保育園)

人の幼稚園や保育園同様、犬が飼い主さんから離れて午前中に登園し、夕方までほかの犬やドッグトレーナーと遊んだり、トレーニングを教わったりする通園型のドッグスクールに、潜入取材! 子犬の健全な社会化ができるなど、そのメリットを紹介します。

犬の幼稚園や保育園とは?

犬の幼稚園や保育園とは、その名のとおり犬を半日ほど預かり、その間にほかの犬や人との触れ合いをする施設です。
預かってほかの犬と遊ばせるだけの施設もあれば、滞在中にドッグトレーナーがトレーニングをしてくれる施設もあります。

今回は、2009年に開業した“犬のためのようちえん WanPeace”(ワンピース/神奈川県川崎市麻生区)にPOCHI取材班は潜入取材。
犬たちがどのような時間を過ごし、どんなことを学んでいるかを見学しました。

楽しい経験を積むことが、犬の幼稚園(保育園)でのとても大切!

楽しい経験を積むことが、犬の幼稚園(保育園)でのとても大切!

「通園型のしつけ教室のメリットは、まず、飼い主さんから離れることで独立心が養えることですね。
そして、ご自宅だけでは経験できないのが、ようちえんでの集団生活。ほかの犬と一緒に楽しみながら、適切な社会性を身につけられるんです。その結果、飼い主さんとのお散歩やお出かけや旅行などあらゆるシーンで、犬たちは自信を持って行動できるようになるでしょう。気持ちにゆとりがある子は、自分自身で落ち着いて考えられるようにもなります。
私自身、2頭のMダックスフンドとの暮らしでも実際に感じてきましたが、自信があって怖いものが少なくてストレスに強い子は、きっと健康で長生きもしてくれるはずです」と、代表の大沼香織トレーナー(以下「」内、同)は語ります。

左から、元代表の宮岡アドバイザー、大沼トレーナー、保竹トレーナー

左から、元代表の宮岡アドバイザー、大沼トレーナー、保竹トレーナー

犬の幼稚園の1日のスケジュールは?

WanPeaceの「ようちえんクラス」の1日のスケジュールは、以下のとおりです。



10~12時登園、健康チェックと遊び

飼い主さんからランチ(フードやおやつ)入り“ようちえんバッグ”を預かったら、ドッグトレーナーが相性を考慮しながら犬同士を遊ばせます



12~13時ランチと休憩

心身を休めるための時間としてはもちろん、クレートトレーニングとしても大切な時間です



13~15時トレーニング、遊び、夏以外は散歩トレーニング

「楽しい!」「もっとやりたい!」という気持ちを引き出しながら、トレーニング。トレーナーと1対1ですることもあれば、グループレッスンをすることもあります



15時~グルーミング(ブラッシング、体を拭くなど)タイム

お手入れタイムが終わったら、トレーナーは降園前に、その日の犬の様子やトレーニングの進捗状況などをノートに記入



16~18時位降園

飼い主さんのお迎えを待つ間にも、友だちと遊んだり休んだりします



人の幼稚園と同じように、WanPeaceにいる間は、さまざまなプログラムによる学びがあることがわかります。

“社会化”ができるのがメリット!

犬の幼稚園(保育園)の大きなメリットは、犬同士の“社会化”ができることです。
社会化とは、人間社会で必要になることへの適切な行動パターンを身につけることを言います。人間社会で犬が生活していくうえで、家族以外の見知らぬ人やほかの犬、乗り物、生活音、初めての場所などに慣れておく“社会化”はとても重要です。
家庭だけで過ごすと、ほかの犬やさまざまな物事へのスムーズに慣れるのは簡単ではないでしょう。
けれども、犬の幼稚園に犬を通わせれば、ほかの犬とのあいさつや遊び、ほかの人と接すること、知らない人に体を触られることなどをとおして適切で効果的な“社会化レッスン”が行えます。

ほかの犬との社会化ができるのが、犬の通園型しつけ教室の大きなメリット

ほかの犬との社会化ができるのが、犬の通園型しつけ教室の大きなメリット

好奇心が高くてあらゆることを柔軟に受け入れられる“子犬の社会化期”は、一般的には生後3~15週齢位といわれています。
個体差はありますが生後3~4カ月齢で好奇心が少なくなってきても、生後半年くらいまでであれば、まだ警戒心が上がりきらず幼さも残っていて、成犬よりも新しい環境に慣れやすかったり、ほかの犬との適切な遊び方も学びやすかったりする傾向が高いものです。

「ワクチンプログラムとの兼ね合いもありますが、できれば生後3カ月くらいまでには入園していただければ、社会化レッスンが行いやすいですね。
生後7~8カ月過ぎて、いわゆる問題行動が出てきてから入園前カウンセリングを申し込まれる飼い主さんもいます。WanPeaceではその場合、まずは“ようちえんコース”ではなく個別の出張レッスンをおすすめするケースもあります」

生後半年くらいまでにかけて、犬は日に日に警戒心がアップして新しい物事を受け入れにくくなるので、もしほかの犬との社会化を目的に“犬の幼稚園”に通わせたいのであれば、早めに入園すると良いでしょう。

「まて」のトレーニングも、だんだんレベルアップ。ほかの犬のレッスン風景をクレートから見学するのも学びの一環

「まて」のトレーニングも、だんだんレベルアップ。ほかの犬のレッスン風景をクレートから見学するのも学びの一環

もちろん、子犬の社会化期にたくさんの“大丈夫だと確認”して安心できた経験を積ませてあげるのが理想ですが、社会化自体は、子犬期より時間がかかり許容レベルが低くなる可能性はあるものの成犬になってからもできます。
そのため、WanPeaceをはじめ、成犬になってからも入園できる犬の幼稚園も少なくありません。

ドッグトレーナーのサポートが効果的

「入園してすぐは、ほかの犬と一緒にいるのが精一杯な子もいます。でも、その子がストレスがないように過ごさせてあげることを大切にしています。
一段一段、それぞれががんばれる範囲でレベルアップをしていくんです。たとえば、ほかの犬との間に3メートルの距離がないと怖い犬の場合、その子の性格ならば毎回50センチずつ縮めていけるな、などと目標を立てて慣らしていきます。
今日いるこの子は、食欲旺盛なので、犬が苦手でもおやつを見せるとトレーナーのもとへ先頭を切って寄って来ます。で、おやつに集中してると、ほかの犬と体が触れても大丈夫という具合です(笑)」

ドッグトレーナーは、犬同士の遊びタイムにも、それぞれの個性をしっかり考慮して同時に遊ばせるメンバーを選び出します。
「楽しく過ごす時間を大切にして、メンバーを入れ替えてもいますよ」とのこと。
子犬期などに恐怖体験をしてトラウマになってしまうと、適切に社会化が行えません。精神的なストレスを犬が負うことがないようにドッグトレーナーがサポートしてくれるのも、飼い主さんとしての安心材料として大きいでしょう。

ドッグトレーナーが見守り安全や安心を確保しながら、犬同士を遊ばせます

ドッグトレーナーが見守り安全や安心を確保しながら、犬同士を遊ばせます

トレーニング法はマンツーマンで飼い主さんに引継ぎ

WanPeaceの「ようちえんコース」にいる犬たちは、トイレトレーニング、ハウストレーニング、お手入れトレーニング、お散歩トレーニングのほか、おいで、おすわり、ふせ、まて、ついての5種類のオビディエンス(基本的な指示)トレーニングも行います。
「人間社会で生きていくなかで、犬自身の心身の安全と安定のためにも、これらのコマンド(指示)は覚えてもらいたいですね。
ようちえんで学んだことを飼い主さんがちゃんとできるようになるよう、WanPeaceでは“おうちレッスン(個別レッスン)”5回がようちえんコースに含まれています。そのときにうかがったお困りごとは、アドバイスやWanPeaceでのレッスンをとおして解決できるようにもサポートしています」

「ついて」の練習中。引っ張らないで歩いたり、拾い食いや飛びつきを防止できるようになります

「ついて」の練習中。引っ張らないで歩いたり、拾い食いや飛びつきを防止できるようになります

WanPeaceのようちえんコースは通園20回と通園40回のプランがあります。
「コース終了後は、『お友だちができたから、そのまま週に何回か幼稚園で遊ばせてあげたい』という飼い主さんの要望に答えるべく“フリークラス”も用意しています」とのこと。
2025年9月現在、小型犬から大型犬まで、両コースを合わせて毎日平均20頭が登園しています。
「最年長は18歳の子で、16年半通っているんですよ」

子犬の適切な社会化ができるのはもちろん、施設によっては犬たちの楽しみの場として生涯にわたって利用できる、犬の幼稚園(保育園)などの通園型のしつけ教室は全国にたくさんあります。
お近くの施設を探して見学し、うちの子に合いそうであれば活用するのも良いでしょう。

右側に注目を。幼稚園生活でしっかりトイレトレーニングもマスター!

右側に注目を。幼稚園生活でしっかりトイレトレーニングもマスター!



取材協力:

*1 犬のためのようちえん WanPeace https://wan-peace.jp

■ 文・取材:臼井京音

profile_202506.jpgドッグライター・ジャーナリストとして、20年以上にわたり世界の犬事情を取材。現在は犬専門誌『Wan』をはじめ週刊誌、Web媒体、会報誌等で情報発信を行う。以前は『愛犬の友』誌、毎日新聞の連載コラム(2009年終了)などでも執筆。著書に『うみいぬ』『室内犬の気持ちがわかる本-上手な育て方としつけ方をアドバイス!』がある。
現在は元野犬の中型犬と暮らす。歴代愛犬のノーリッチ・テリア2頭と同様にボールを追いかけることが喜びで、趣味はテニスとバレーボールと写真撮影。パリやNYで撮影し自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、ペットショップP2などのインテリアにも使用されている。