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2026.02.02

働く犬の特性を徹底調査!牧羊犬のDNA研究について~南半球のDog's letter~

働く犬の特性を徹底調査!牧羊犬のDNA研究について~南半球のDog's letter~

世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?!共通してるかも?!と思える目新しいドッグライフ情報。今回はNZの牧羊犬のDNA研究についてご紹介します。

DOG's TALK

この記事を書いた人:グルービー美子

この記事を書いた人:グルービー美子

ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。

牧羊犬が対象のDNZ検査

近年、犬の民間DNA検査がアメリカを中心に盛んに行われています。方法は専用キットで犬の唾液を採取し、検査機関に送るだけと簡単。ミックス犬のルーツを調べたり、遺伝的にかかりやすい疾患のリスクを把握したりと、うちの子への理解を深めるために利用する飼い主さんが多いようです。
こうしたDNA検査はニュージーランドでも可能ですが、現在注目されているのは牧羊犬を対象としたゲノム解析とDNA研究です。一体どのようなものなのか、調査してみました。

牧羊犬のDNZを研究する目的とは?

ニュージーランド国立マッセイ大学が進めている牧羊犬のゲノム解析とDNA研究プロジェクトの名称は「Right Dog for the Job」。牧羊犬の健康と作業パフォーマンスの向上を目的に行われています。
同プロジェクトは検疫や農林水産業などを管轄する政府機関・第一次産業省(MPI)の基金「the Sustainable Food and Fibre Futures fund」によってサポートされています。この基金は食と繊維分野のイノベーション推進のために立ち上げられたもの。牧羊犬のDNA研究が農業のよりよい未来へつながると考えられているのです。

一緒に働くヘディングドッグとハンタウェイ

一緒に働くヘディングドッグとハンタウェイ

研究の主な対象となる犬種はハンタウェイとヘディングドッグ。どちらもニュージーランド原産の牧羊犬種です。

ハンタウェイは主に大きな声で吠えながら羊の群れを追い立てる役割を果たし、ヘディングドッグはにらみを利かせて細かい方向転換などのコントロールをするのが仕事。この2頭が組んで牧場作業にあたることが多く、ニュージーランドでは非常に一般的な犬種ですが、国外ではあまり見られない希少種でもあります。他国ではほとんど繁殖されておらず、これまでほかの犬種のようなDNA研究はされてきませんでした。その結果、健康リスクや行動パターンなどの把握が遅れていたのです。

研究で判明したDNA変異体

左:ハンタウェイ/右:ヘディングドッグ

左:ハンタウェイ/右:ヘディングドッグ

「Right Dog for the Job」プロジェクトが130頭のハンタウェイ、104頭のヘディングドッグ、15頭のミックス犬のゲノム解析・DNA研究を実施したところ、1900万のDNA異変体が特定されました。
また、ほかの犬種の健康や身体的特徴に影響を与える約400の変異体のうち、27の変異体を研究対象の牧羊犬249頭が有していると判明。27の異変体のうちの5つは深刻な疾患につながるもので、キャリア同士を交配させると生まれた犬の25%が発症することもわかりました。

マッセイ大学主任研究員のマット・リトルジョン教授は「今後はこの5つの変異体についての遺伝子検査を推奨します」と発表。異変体は劣性遺伝子なので保有しているキャリア犬自体に症状は現れません。しかし、前述のとおりキャリア同士の子犬は発症する可能性があるので、交配を防ぐために事前の検査が有効といえるでしょう。

国の産業を支える牧羊犬

ニュージーランドは第一次産業が盛んな農業国。牧羊犬の数は約20万頭に上り、この国の産業・経済に欠かせない存在です。「Right Dog for the Job」プロジェクトは、次の段階としてニュージーランドの牧羊犬のみに見られる固有の遺伝子の発見と、農家・獣医師と連携して犬の作業能力の測定に注力中。牧羊犬がその特性を発揮して健康でイキイキ働けるよう、今後の研究に期待が集まっています。