• コラム

2026.07.29

【#獣医師に聞く】夏の"皮膚活"~犬の皮膚トラブルを多湿な時期に適切に管理する方法~

【#獣医師に聞く】夏の

文・取材=臼井京音

あまり目立たないけれど、実は犬との生活を陰で支えている繊細なプロの仕事の存在を、意識したことはありますか?犬と暮らしていくうえで欠かせない知識や知っておきたい情報、身に着けておきたい技術などについて、"真のプロフェッショナル"とたたえたい、ある方面で専門性の高い有識者の方々にインタビューした内容をご紹介しています。(POCHI編集チーム)



今回のお役立ち情報多湿な時期の犬の皮膚トラブル管理方法

ジメジメした日本の梅雨時期から初秋まで、犬の皮膚トラブルをなるべく予防したり、症状を軽減したりするための管理方法を、犬と猫の皮膚科専門の獣医師に聞きました。 

高い湿度が犬の皮膚トラブルを招きやすい

“犬と猫の皮膚科”(東京都江東区)の院長でアジア獣医皮膚科専門医である村山信雄獣医師は、高温多湿の時期は犬の皮膚症状やかゆみが出やすいと語ります。

「湿度が65%以上に上がると、犬アトピー性皮膚炎の原因物質のひとつであるハウスダストマイト(室内に生息する小さなダニ)が一気に増えるという研究論文があります。また、湿度70%以上で犬の常在菌であるマラセチアが増殖しやすくなるといった学会発表も存在します。
科学的な裏付けがあるわけではありませんが、個人的にも、犬が過ごす場所の湿度の管理がされていると、犬アトピー性皮膚炎やマラセチア皮膚炎などによる症状が落ち着くケースもあると感じています」(村山獣医師、以下「」内同)

湿度が高いと真菌や細菌やハウスダストマイトが増えるといわれるため、室内の湿度管理は重要

湿度が高いと真菌や細菌やハウスダストマイトが増えるといわれるため、室内の湿度管理は重要

関東から九州地方にかけては5・6月から湿度が65%以上になり、地域差はありますが10・11月ごろまで湿度が高い日々が続きます。

「かゆみは、犬にとって大きなストレスになります。
ぜひ、飼い主さんができる“皮膚活”をして、犬がかゆみで苦しまないように予防や改善に努めてあげてください。
まずできる皮膚活は、熱中症予防策としてはもちろんですが、それほど気温が高くない日でも湿度が高い日は冷房を活用し、犬が過ごす部屋の湿度を下げること。
扇風機では室内の湿度は下げられないので、エアコンの使用をおすすめします」

皮膚トラブルのある犬はやせ気味!?

村山獣医師が診察する皮膚トラブルをかかえる犬には、やせ気味の犬が多いそうです。

「膿皮症、マラセチア皮膚炎、犬アトピー性皮膚炎など、皮膚にトラブルが起きている状態では、平常時よりも多く栄養が消費されてしまいます。皮膚や被毛が、たんぱくからできているからです。
摂取する量より消費する量のほうが多いと、当然のことながらやせていきます。
皮膚を良好な状態に戻そうとする過程でもたんぱくが必要になるので、皮膚に炎症がある犬には、良質なたんぱく質を多めに与えるように心がけると良いでしょう」

皮膚トラブルがあるとやせる可能性があります

皮膚トラブルがあるとやせる可能性があります

うちの子に皮膚トラブルがある場合、やせてきていないか、一度チェックを。もしやせていることがわかったら、フードの給与量の見直しも行いたいものです。

「また、皮膚に炎症が起きると、体のミネラルやビタミンが奪われがちです。その代表的なものは、ビタミンEです。
ビタミンEをはじめビタミンやミネラルが適切に配合されたプレミアムドッグフードを与えることによって、かゆみが出にくくなるような皮膚づくりや、いったん傷んだ皮膚が治癒することへの手助けになるでしょう」

フードはビタミンとミネラルが配合され栄養バランスがすぐれた、総合栄養食が良いでしょう

フードはビタミンとミネラルが配合され栄養バランスがすぐれた、総合栄養食が良いでしょう

夏はシャンプーの頻度を高めて

うちの子がかゆがっている場合、まずはその原因を突き止めなければなりません。

「かゆみの原因が犬アトピー性皮膚炎であれば、スキンケアというよりはかゆみの管理を行うことが最優先の選択になります」

もし、膿皮症やマラセチア皮膚炎を患っている犬であれば、それらに適したシャンプー製品を使って、ふだんよりマメに洗ってあげるのが効果的だと、村山獣医師はアドバイスをします。
「同じ皮膚疾患でも重症度により適したシャンプー剤が異なるので、獣医師に相談のうえ、最適なシャンプー剤を使用してください。
重症でない場合は、お手持ちのシャンプーを使い、高温多湿な時期は洗う頻度を増やすと良いでしょう。皮脂が多い犬種と少ない犬種がいるので、最適なシャンプー頻度には個体差がありますが、たとえば、かゆみが落ち着いている冬期に月1回の犬は週1回に、通常は週1回の犬は週2回に増やすといった具合です」

シャンプー頻度をアップすると、真菌や細菌の増殖を防げます。ただし、洗いすぎは皮膚のバリア機能を損ねるので厳禁

シャンプー頻度をアップすると、真菌や細菌の増殖を防げます。ただし、洗いすぎは皮膚のバリア機能を損ねるので厳禁

ジメジメする季節になると、耳をかゆがる犬も少なくありません。
「シャンプーやイヤークリーナーだけで対処せず、耳を掻いたり地面や壁にこすりつけたりしている場合は、なるべく早期にかかりつけ医に診てもらってください。
マラセチアが増殖して皮膚炎になっているのか、耳の内部にまで異常があるのかなどを確認して適切な処置をすることが大切です。耳の皮膚炎が重症になると患部が化膿したり、鼓膜が破れてしまったりする恐れもあるので軽視できません」

飼い主が悩まないことも大切

村山獣医師のもとには、うちの子の皮膚疾患をなんとか根治させたいと強い思いを抱いて訪れる飼い主さんが多いと言います。

かゆそうにしているうちの子を見ると、なんとかしてあげたいと思う気持ちはありますが…

かゆそうにしているうちの子を見ると、なんとかしてあげたいと思う気持ちはありますが…

「現実的には、皮膚の病状を改善することはできても、皮膚の病気を根治することはむずかしいんです。
薬を使って皮膚をキレイにしたあとに、薬をやめてもぶり返さないことを求めるご家族がほとんどです。けれども、多くの皮膚病は体質が原因で、体質改善はとても困難だと言わざるを得ません。そのことを受け入れて、犬がかゆみで苦しまないように、私たち獣医師や薬の力にも頼りながら皮膚活に取り組んでいただければと願います。

獣医療が進歩した現在、良い治療薬や治療法が出てきています。それらをうまく取り入れて治療を進めることで、薬による副作用もなく、皮膚トラブルを持つ犬たちが快適に過ごせるようになっているのも事実です。
皮膚トラブルがある場合、最初はしっかり治療をして、症状が落ち着いたら投薬や治療を休止できる可能性があります。
大切なことは、犬にかゆみをガマンさせないこと。皮膚の治療をすることに悲観的になるというより、治療により皮膚の状態が良好になったら、湿度が低い季節は治療をやめられると期待を持って、大変な時期だけ犬にも飼い主さんにもがんばってもらいたいと思います。
決して、飼い主さんの育て方や管理の方法に問題があって、犬が皮膚病になるわけではありません。不安を感じた際には、いつでもサポートしますので獣医師にお気軽にご相談ください」

皮膚活をしながら、うちの子の体質とおおらかな気持ちでつきあっていきましょう

皮膚活をしながら、うちの子の体質とおおらかな気持ちでつきあっていきましょう

日本の気候は、そもそも湿度が高め。そのような環境で暮らす犬たちがかゆみをなるべく感じないように、住環境の湿度を下げる工夫、ビタミンとミネラルなどのバランスが良い高品質なドッグフードを適量与えること、シャンプー頻度のコントロール、動物病院での適切な治療などによる皮膚活に取り組んであげたいものです。

■ 取材協力:村山信雄獣医師

bigdog-dermatology-coat_prof.jpg獣医学博士、アジア獣医皮膚科専門医。2016年に“犬と猫の皮膚科”(東京都江東区)を開設し代表を務めるほか、講演の講師としても活躍。





■ 文・取材:臼井京音

profile_202506.jpgドッグライター・ジャーナリストとして、20年以上にわたり世界の犬事情を取材。現在は犬専門誌『Wan』をはじめ週刊誌、Web媒体、会報誌等で情報発信を行う。以前は『愛犬の友』誌、毎日新聞の連載コラム(2009年終了)などでも執筆。著書に『うみいぬ』『室内犬の気持ちがわかる本-上手な育て方としつけ方をアドバイス!』がある。
現在は元野犬の中型犬と暮らす。歴代愛犬のノーリッチ・テリア2頭と同様にボールを追いかけることが喜びで、趣味はテニスとバレーボールと写真撮影。パリやNYで撮影し自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、ペットショップP2などのインテリアにも使用されている。