- コラム
2026.07.16
【#犬のキホンおさらい】熱中症から犬を守る5原則!ベテラン飼い主が油断しがちな盲点とは
文=臼井京音
毎日一緒に暮らしている犬について、「そういえば、なぜなんだろう?」「これって、何のために必要なのかな?」と思うことはありませんか?犬に関する基礎知識や健康管理の基本など、知っているようで知らないことは、意外とたくさんあるものかもしれません。
犬との暮らしをより豊かなものにするためには、土台となる正しい知識を身につけることが大切。そこで、犬に関する基本情報や知っておきたい基礎知識をおさらいしながら、犬の理解を深めるヒントをお届けします。(POCHI編集チーム)
今回のお役立ち情報熱中症から犬を守る方法
犬は人間よりずっと熱中症になりやすい動物です。そのことを頭に入れて、うちの子を熱中症から守る5原則を徹底しましょう。
熱中症を発症した若犬! 体験談から
筆者は犬の熱中症に関しては何度も取材し、記事にしてきました。
そのなかに、忘れられないエピソードがあります。
ひとつは、“犬友”の1歳の若齢で元気なテリアが、曇った日の30度以下の屋外で熱中症を発症し、1週間近く入院治療をしたこと。
飼い主夫婦にとっては初めての犬でもなく、熱中症に関する知識もありました。発症日は曇天で、高原の別荘地でのバーベキューを1歳のテリアとともに楽しんでいたそうです。
その日の夜、テリアの食欲がなく、翌日はぐったりしていたので動物病院を受診。そこで、体温が平熱より高く熱中症であることを獣医師から告げられ、とても驚いたと振り返ります。すぐに入院して点滴治療などを開始し、1週間ほどで退院できました。
獣医師は「若くて元気だったからどうにか回復できたけど、子犬や高齢犬だったら命の危機もあったかもしれない」と語っていたそうです。
若くて体力もあり、これまで熱中症になったことがなくても油断は禁物
もうひとつは、犬に関する知識豊富なドッグトレーナーが、シェパードを連れて出かけ、保冷剤や冷却グッズなどフル活用で公園の木陰で犬を待機させていたところ、ハァハァと呼吸が荒く舌の色も紫に近いことに気づき、動物病院に急行したこと。
どちらにも共通しているのが、熱中症を発症しやすい老犬や短頭種でもないことや、犬が高温や直射日光が当たる環境で過ごしていないことです。飼い主が危険を感じるほど暑い日でもありませんでした。
いかに、人間より犬のほうが熱中症になりやすいか、そしてどんな犬でも熱中症の予防を万全にするべきかを思い知ったエピソードでした。
■熱中症予防の原則1
若いから、どんな環境にも慣れているから、老犬や短頭種ではないからと油断しない
屋外では曇っている日でも熱中症に要注意
熱中症の症状は? 気づいたらすぐ対処を
前述のエピソードからもわかるとおり、犬が熱中症を発症する原因は、高温や直射日光だけではありません。
犬は人間のように全身から汗をかいて放熱できず、ハァハァというパンティング呼吸や足裏からのわずかな汗によってしか放熱できないため、湿度が高い環境が人間より苦手です。梅雨時や、曇っていても湿度が高い日は要注意なのです。
とくに、梅雨入り前後は犬の体がまだ暑さに慣れておらず、同じ気温でも熱中症の発症率が晩夏や初秋よりも高め。油断は大敵です。
熱中症の危険性があるかを判断するには、パンティングや舌の色の状態を知っておきましょう。
危険な状態では、「ハッハッハッ」とパンティング呼吸が荒いだけでなく、舌先を巻き上げるように呼吸をしていて、舌の色がふだんより強い赤みを帯びていたり紫っぽくなっていたりします。目が充血している、よだれを伴うといった状態も危険なサインです。
体毛が少ないお腹あたりを触ってみると、通常より熱く感じた場合も要注意です。
上記の状態に気づいたら、様子見は禁物。すぐに水を飲ませ、水を含ませて冷やしたバスタオルなどにうちの子を包んで動物病院に向かってください。
■熱中症予防の原則2
高温の日だけでなく、多湿の日も犬にとっては熱中症の発症ハイリスクだと認識して注意する。
うちの子の異変は、早期に気付いて早急な対処を!
犬の様子をよく見たり触ったりして、熱中症が疑われる場合はすぐに水を飲ませ、冷たいタオルなどでくるんで体温を下げましょう
動物病院に熱中症で来る犬は…
筆者が取材してきた獣医師の多くは「熱中症の症状で来院する犬の一定数が、自動車内で発症している」と口をそろえます。
発症の理由は、飼い主さんがほんの短時間だからと、犬を自動車内に置いて買い物などをしたからだそうです。
日の当たる車内の温度はたった10分で、外気温が20℃であっても31℃に、外気温30℃の場合は40℃になります(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」参照)。
コンビニの駐車場に数分間だけ…が、うちの子の命取りになる可能性も
熱中症の犬を診た獣医師によると、「うっすら窓をあけていた」「日陰に停めていた」と語る飼い主さんが少なくないそうです。
日陰に駐車しても、ひとりになり不安になった犬がハァハァとストレスで呼吸を荒くするだけで体温は上昇しやすく、車内の温度だけでなく湿度もどんどん上がるので安心できません。
熱中症と診断された犬のうち、約半数は命を失うと言われています。
また、高体温により臓器がダメージを受け、後遺症を背負う恐れもあります。簡単に表現すると、重度の熱中症により臓器がゆで卵状態になり、ゆで卵をもとの生卵に戻すことができないように、臓器も元の健康な状態には戻らないのです。
熱中症にさせないために、高温多湿の時期はうちの子との外出計画そのものを見直して、冷房の効いた場所で待っていてもらうことも検討しましょう。
■熱中症予防の原則3
たとえ数分でも、車内に決して犬を残していかない。車から離れる場合は、家族の誰かが犬と一緒にいること。
暑い日は一緒に外出しないという判断が、うちの子を守ることにもつながります
留守番時に潜む危険対策を
冷房管理がされた室内で犬を留守番させる際には、なんの心配もいらないと思うかもしれません。
けれども、夏にはゲリラ豪雨が発生することもしばしばで、停電する恐れもあります。停電によりエアコンが停止してしまったら、当然のことながら犬が留守番している室内は気温がぐんぐんと上昇していくでしょう。
停電時の熱中症対策のためにできることは、いくつかあります。
ひとつは、室内の気温上昇リスク軽減のため、窓は遮光カーテンなどを閉めて出かけること。
防犯上問題がなければ、犬が移動できる部屋の窓を一か所開けておくのも良いかもしれません。
昼間でも遮光カーテンの一部を閉めておくなどして、万が一の時の室温上昇を抑えて
もうひとつは、飼い主さんが外出先から操作できるエアコンを設置しておき、停電時はすぐに冷房をオンにし直すこと。
とはいっても、飼い主さんがいる場所が停電していないケースでは、自宅の冷房が停電によって切れてしまったかどうかわかりません。
また、仕事中で気づかなかったり、すぐにエアコンの遠隔操作ができなかったりすることもあるでしょう。
そのような心配が不要で、危険温度に達するとエアコンのリモコンを自動でオンにできる機器なども、近年は発売されています。このような製品を活用して、停電対策も万全にしておきたいものです。
■熱中症予防の原則4
留守番時のエアコン停止対策も講じておく。
停電後のエアコンのコントロールができる工夫と対策もしておきましょう
熱中症のハイリスクにならない健康管理を
高齢、病気などの犬は体力がなかったり環境変化への適応力が弱かったりするため、熱中症になりやすいことが知られています。
こればかりは飼い主さんができることはないため、熱中症対策をしっかり行うしかありません。
けれども、飼い主さんの健康管理によって、熱中症リスクを減らせるケースもあります。
そのひとつは、肥満にさせないこと。
肥満の犬は、放熱が苦手で熱中症リスクが高まります。飼い主さんによる日ごろの食事管理や運動管理で、うちの子を太らせないようにしましょう。
熱中症のリスクを上げる肥満にさせないように、適切な体重管理を
うちの子に、皮膚が見えるほどのサマーカットをしている場合も、熱中症リスクが上がります。
読者の方は、うちの子にこまめなブラッシングをして抜け毛を取り除き、皮膚への通気性を保つようにしていることでしょう。さらに、夏はサマーカットも欠かさないかもしれません。
けれども、被毛を短くしすぎると、直射日光が皮膚にダイレクトに届いて体が熱を帯びやすくなってしまいます。冷感ウェアを着せれば日光を遮断できますが、本来は自分で長毛の犬が短すぎる被毛で過ごすと、冷房の効いた部屋では寒さに震えることになる可能性もあります。
サマーカットをする場合は、ある程度は被毛の長さを残す仕上がりにしましょう。
■熱中症予防の原則5
肥満にさせないこと、被毛を短く切りすぎないことなど健康管理も大切。
地肌が見えるほど短くサマーカットしすぎないことも、熱中症対策のひとつ
今回は、基本的な熱中症予防策はすでに毎年しているベテラン飼い主さん向けに、盲点になりやすい熱中症対策について紹介しました。
熱中症は、飼い主さんの対策次第で予防ができます。
日ごろの健康管理も含めて、しっかりと予防策を講じて実践したいものです。
■ 文:臼井京音
ドッグライター・ジャーナリストとして、20年以上にわたり世界の犬事情を取材。現在は犬専門誌『Wan』をはじめ週刊誌、Web媒体、会報誌等で情報発信を行う。以前は『愛犬の友』誌、毎日新聞の連載コラム(2009年終了)などでも執筆。著書に『うみいぬ』『室内犬の気持ちがわかる本-上手な育て方としつけ方をアドバイス!』がある。
現在は元野犬の中型犬と暮らす。歴代愛犬のノーリッチ・テリア2頭と同様にボールを追いかけることが喜びで、趣味はテニスとバレーボールと写真撮影。パリやNYで撮影し自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、ペットショップP2などのインテリアにも使用されている。


