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2019.06.19

犬の健康維持に役立つハーブ『パセリ、セージ、ローズマリー&タイム』フィトセラピスト解説

犬の健康維持に役立つハーブ『パセリ、セージ、ローズマリー&タイム』フィトセラピスト解説

この特集の資料提供】Urara Herb Design Lab. フィトセラピスト 堂山うらら氏

*1 現在、ホリステックケアアドバイザーとして人と犬へのフィトセラピーを中心としたカウンセリングや、人と犬のクオリティ・オブ・ライフに役立ち、犬と一緒に楽しめるフィトセラピー講座、ハーブ講座を行っている。

(本コラムは、過去にお届けしたコラムをコラムアーカイブとして、再紹介します。)

1960年代後半の代表的なフォークデュオ、サイモン&ガーファンクルの歌で、 映画「卒業」の中で使われていた「スカボローフェア」という曲はご存知ですか?
その曲では、「Parsley sage rosemary and thyme」という、今回のハーブ名のフレーズを 何度も繰り返して歌っています。 イギリスではとても一般的なこれらハーブたちは、私たち日本人にとっても、今では、結構馴染み深かったりします。

実はこのフレーズ、イギリスのハーブ商人の売り口上だったらしく、 「Parsley sage rosemary and thyme!」という声は、 色とりどりの野菜やハーブが並び、活気ある市場の賑わいが目に浮かぶようです。

スカボローフェア」という曲は、彼らのオリジナルではなく、アイルランドの歌手が作った元歌があって、 主な部分は、イギリスに昔から伝わる童謡の「マザー・グース」の中のから引用されているのだそうです。
歌詞の中で、「波打ち際と海水の間に1エーカーの地面を見つけてほしい」、「革製のカマで刈り取った収穫をヒースで束ねてほしい」など、 無理難題な歌詞が続くのですが、これは、妖精や魔物が人間に向かって言っている問いかけの言葉で、 言われた人間は「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」の4つのハーブの名前をおまじないとして唱えていた、と伝えられています。 これらのハーブは、古くから疫病の予防、悪夢や悪霊を遠ざけるための魔よけとして使われていて、 また、古い文献にも多数残されているんですよ。

そして、「スカボローフェア」が作られた1968年といえば、
アメリカやヨーロッパで広がり始めたヒッピーたちによる反戦運動が盛んで、 「自然回帰」という運動の中でそのシンボルとされていたのもこれらのハーブたち。

ヒッピーの時代から40年以上が過ぎ、科学、医薬品に追いやられていたハーブたちですが、 近年、人はもちろん犬たちも、スローライフ、スローフードといったライフスタイルが注目されるようになり、 新たにハーブたちが見直されていることをつくづく感じます。
ということで、少し前置きが長くなりましたが、 今回は身近なハーブ、「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」をご紹介させていただきます。

6月のオススメハーブ「パセリ」

●パセリ
学名:Petroselinum crispum
別名:オランダゼリ
科名:セリ科 オランダゼリ属
使用部位:葉・茎部
有効成分:
揮発性成分(アピオール、アピオリン、ミリスチシン、ピネン)フラボノイド、配糖体、ビタミンC、A、鉄、クロロフィル、マンガンなど
注意:妊娠・授乳中は使用を避けましよう。

繊細な葉のパセリですが、働きは広く、脂質やタンパク質の消化を助け、 ビタミンA、B、C、カルシウム、カリウム、クロロフィル、鉄が豊富なため、犬の手作りゴハンの栄養バランスを整えるためにも役立ち、 特有の香りの主成分はアピオールとピネンです。

アピオールは腸内の有害細菌の繁殖を抑えて腸の働きを整え、食欲を促進します。
ピネンは胃に適度な刺激を与えて消化を促し、防腐、消臭効果があるので、口臭予防としても用いられてきました。

まずはパセリ、花言葉は「浄化の象徴」、「祝祭」です。
パセリは世界中で最も広く使われているハーブで、料理の飾り付けによく使われていますが、残されてしまうことがある少し可哀想なハーブです。
魚・肉料理をはじめ、揚げ物など、用途は広く、独特の苦味と青臭さがあり、刻んでスープやサラダに、 そしてブーケガルニにもかかせません。実は肉類や魚のニオイ消しなどに使われているほか、ミックスハーブなどにも良く使用されているので、そのままの形では食べなくても調味料などの形で口にしている機会は多いハーブです。
ちなみに、私たちが見慣れているのはカーリーパセリで、ヨーロッパでは平葉のイタリアンパセリの方がメジャーなんですよ。育てるのも簡単なので、キッチンなどに小さく植えておくと目にも優しいみずみずしい緑色で気持ちを明るくしてくれます。

■ こんなことが気になったら…。

○ オシッコトラブルがあるので、老廃物の排出を助けたい。
○ さらに、尿酸がたまると関節が痛むので、積極的に老廃物の排泄をしたい。
○ フケや脱毛を予防したい。

■ オススメハーブの取り入れ方

1.パセリの入ったハーブティーで犬の身体を拭く。

2.生のパセリを細かく刻んだり、パセリのドライハーブを食事に混ぜる。

3.生のパセリをすり鉢でつぶしたペーストや液汁で虫刺されに。

6月のオススメハーブ「セージ」

●セージ
学名:Salvia officinalis
科名:シソ科
使用部位:葉
有効成分:
揮発性成分(ツヨン・シネオール・カンファー・ボルネオール)、フラボノイド、縮合タンニン、エストロゲン類似物質、フェノール酸など
※妊娠、授乳中は使用を避けましょう。

セージの働きは多岐にわたり、特に抗酸化に優れ、フリーラジカル(活性酸素)の悪影響を軽減することができるため、 ローズマリーと同様、細胞の若さを保ち老化予防に役立ちます。

その他にも、歯や喉のトラブル、消化促進、精神疲労などに用いられてきました。
特に口腔や皮膚、消化器の炎症、潰瘍に役立ち、優れた抗菌力は大腸菌やサルモネラ菌、真菌などに対して優れているので、 消化器系のトラブル全般にも用いられます。 
濃いめのハーブティーやチンキは、歯肉炎や歯のトラブル予防に用いられているんですよ。

セージの花言葉は「尊敬」、「忍耐」です。
ローマ人にとっては最も神聖なハーブとされ、料理や薬草として広く使われてきた歴史があり、 アラビアには「庭にセージがあれば人は死なない」、「長生きしたければ5月にセージを食べなさい。」ということわざも。
セージは、ラテン名「治癒」または「救う」という意味をもつ、ありがたい植物なのです。

料理では、肉の臭み消しをはじめ、チーズやソース類にもよく使われ、セージの葉をワインやオイルにつけこんだハーブワイン、ハーブオイルなどもよく知られています。
セージは、古くから油っぽい料理に加えられていました。
ショウノウのようなすっきりとした香りのセージは、脂肪の消化や腐敗防止にもよく使われ、 語源でもあるソーセージ作りには欠かせないハーブのひとつです。

■ こんなことが気になったら…。

○ 口臭が気になる。
○ カラダを痒がる。

■ オススメハーブの取り入れ方

1.セージは、健康的な歯の白さを保ち、歯茎の健康に役立ったり、また、髪に艶を与え育毛が期待出来るので、ハミガキやシャンプーなどケア用品を選ぶときは、原材料にセージが入っているのを選ぶ。

2.特にオススメ!セージにウィッチへーゼルやネトル、エキナセア、タイム、ローズマリーなどをブレンドしたハーブティーをガーゼなどにしみ込ませ、 日頃の歯と歯肉のケア。

3. 犬の皮膚トラブルの中でも特に菌に感染したことで起こる疾患には、カレンデュラ、エキナセア、ジャーマンカモミール、セントジョンズワートなどをブレンドしたもので、沐浴させたり、身体を拭いてあげるといいんですよ。

6月のオススメハーブ「ローズマリー&タイム」

■ローズマリーについて。

ローズマリーの花言葉は「貞節・永遠の愛・想い出」
殺菌、防腐、強壮、消化を助け、記憶力を良くするなど多くの薬効があり、薬草として、また、料理、美容など幅広く用途があるハーブです。
ローズマリーは、心身ともに元気づけてくれ、これからの梅雨、夏の暑さによる活力低下にもおすすめです。
また、2009年には、肝臓のトリグリセリド(中性脂肪)はローズマリーエキスを摂取することで顕著に減少したという研究結果が得られ、 体重増加や脂肪の蓄積を抑制する効果があるとされています。
雨のためにお散歩の時間が減りがちなこれからの季節、ダイエットサポートとしても良いかもしれませんね。

●タイム
学名:Thymus vulgaris
別名:タチジャコウソウ / コモンタイム
科名:シソ科
使用部位:葉部
有効成分:
フェノール系のチモール、カルバクロールといった揮発性成分(精油成分)、 配糖体類、フラボノイド類、p-シメン、ボルネオール、サポニン類、タンニン類、ビタミンB複合体、C、Dなど

注意:妊娠・授乳中は使用を避けましよう。

高血圧の犬への継続利用や使用量に注意が必要とされています。 主成分のチモールは、口腔洗浄液にも利用されている成分のひとつで、 タイムは口や喉のトラブル、口内炎、歯肉炎の予防に役立ち、市販の歯磨き粉やうがい薬にも使用されています。

アピゲニンなどのフラボノイド類やサポニンは、 ケンネルコフなど感染して起こる乾いた咳に役立ちます。

また、肝臓の浄化にも使われ、消化器と肝機能に働きかけることで、 お腹、消化、消化不良による口臭予防、寄生虫、膀胱のトラブルなどに利用されています。

さらに、心身の疲労、緊張、不安の緩和に役立ち、他にも血液循環を促します。

清々しい香りを持つタイム。
日本ではタチジャコウソウとも呼ばれ、花言葉は、ギリシャ語で「勇気」をあらわす、「thymos」に由来すると言い伝えられ、その他、ギリシャ語の「thyo(良い香り)」、「thyein(香らせる)」が語源とされています。
タイムは数あるハーブの中でも最も抗菌力の強いハーブであることからも「勇気の象徴」とされ、 「タイムの香りのする人」と言われるのは男性にとって最大の誉め言葉のひとつでした。

古代エジプトでは王のミイラを作るとき、タイムの精油を防腐剤に使い、 また、不衛生だった時代にヨーロッパでは、人の集まる教会などで消毒剤として使用されたハーブのひとつです。
タイムはスープや煮込み料理に用いられるブーケガルニに欠かせないハーブのひとつです。
料理の風味づけや、肉や魚介類の臭みを消し、ローズマリーやセージ同様、保存力を高めるためにも利用されます。

■ こんなことが気になったら…。

○ 梅雨時の消化器系の不調が気になります。家庭で食中毒予防やケアをしたい。
○ この季節、カイカイのしぐさが多くなった…。身体の内側からもケアしたい。
○ 神経質なので、緊張や不安をやわらげたい。
○ 口臭が気になります。日頃から口腔内を清潔に保ってあげたい。
○ シニア犬なので血行不良が気になります。

■ オススメハーブの取り入れ方

1.タイムが入ったハーブティーで犬の身体を拭く。

2.生のタイムを細かく刻んだり、タイムのドライハーブを食事に混ぜる。

*1 タイムに含まれるチモールやカルバクロールなどのフェノール系のこれらの精油成分は、 過剰摂取による肝毒性が指摘されており、ハーブエキスや精油の過剰摂取や単独での使用には注意が必要ですが、 フレッシュやドライハーブを適量、食事に加えたり、ハーブティーを用いる場合は安心して使用できます。 一例として、ドイツでは小児科の呼吸器系疾患にタイムのハーブティーが処方されています。

おわりに

今回ご紹介させていただいた4種のハーブは、いずれも微量の揮発性成分(精油成分)が主成分になるため、内用による単独使用、過剰摂取、長期連用には注意が必要です。 エキス、ティンクチャー、精油(エッセンシャルオイル)を使用する際には十分に注意してくださいね。
フレッシュハーブやドライハーブを適量使用したり、ハーブティーで利用する分には、揮発性成分(精油成分)が微量なので、小型犬でもさほど心配はありません。

これらの季節、ハーブを育てるのにとてもよい季節を迎えます。
ハーブは家庭でも手軽に育てることができて人気ですよね。 フレッシュハーブの心地良い香りは幸せな気分にしてくれます。 ご自宅でハーブを育てて、犬の健康と長寿を願いつつ、ハーブを収穫するのも結構楽しいですよ。

DOG's TALK

フィトセラピスト 堂山うららさん

さぁ、ハーブのやさしいチカラをかりて、今よりもっとHappyな毎日をスタートしましょう。