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2024.03.25

働く犬のセカンドステージをバックアップ!引退したワーキングドッグが家庭犬になるまで~南半球のDog's letter~

働く犬のセカンドステージをバックアップ!引退したワーキングドッグが家庭犬になるまで~南半球のDog's letter~

世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?共通してる?目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。

多くの犬が人間のお手伝いをして"働く犬"として活躍しているニュージーランド。前回は、ケガや病気などで働くことができなくなった犬たちのその後をお送りしましたが、今回は幸せそうなシニア犬たちの笑顔をご紹介。
大好きなお仕事の量を減らしながらのんびり頑張るシニア犬、そして猟犬たちのその後についてお送りします。
ひと言で働く犬と言っても、その個性や特性、育ってきた環境もさまざま。引退後の幸せの形も犬の数だけ存在しました。

今回は、新たな幸せを手にした犬たちの、そのあとのおはなしです。

働く犬の幸せな余生のために

酪農大国ニュージーランドでは全国で約20万頭の牧羊犬が働いています。
老化やケガで働けなくなった引退牧羊犬を保護し、新しい家庭に送り出す活動を行っているのが、「リタイアド・ワーキングドッグスNZ」。
牧羊犬をメインに、さまざまな分野で働く犬に特化した保護団体です。
保護から譲渡までの流れは一般的な保護団体と異なるのか、そして幸せなサクセスストーリーを知りたく、話を聞いてきました。

保護から譲渡までの流れ

たくさんの働く犬たちがいるNZ。それだけ、引退する

たくさんの働く犬たちがいるNZ。それだけ、引退する"働く犬"たちも多くなります。

牧羊犬がこれ以上働けないと判断されると、飼い主であるファーマーからリタイアド・ワーキングドッグスNZに連絡が入ります。
スタッフが犬を迎えに行き、動物病院で必要なケアを受けるなどある程度準備が整うと、預かりボランティアの家庭で最短1カ月暮らし、家庭犬となる訓練を受けるそうです。

「預かりボランティアになるには、犬に対して十分な時間を割け、忍耐強く愛情を注げることが条件。犬の飼育に必要な物資や動物病院の費用は団体がカバーします」
そう話す広報担当のジョージアさん。
引退牧羊犬は野良犬とは異なり人間やほかの動物に慣れているとはいえ、急激な環境の変化はストレスが伴います。
犬の気持ちに寄り添い、最適な第2のステージを見つけるのが同団体のモットーなのです。

 

これまで働いてきたからこその

これまで働いてきたからこその"特性"や"個性"なども尊重しながら次の幸せ探しを行います。


「引退牧羊犬の里親希望者は、獣医師からの推薦状を添えて申し込む必要があります。それぞれの犬の性格などを見て、里親希望者と犬のマッチングは慎重に行います」
牧羊犬などの仕事をしてきた犬のバックグラウンドを踏まえ、理想的なマッチングのため、スタッフが面談や家庭訪問をして飼育環境をチェック。十分な設備があるのか、ワーキングドッグとして働いてきた彼らと上手に付き合えそうか…様々なことを確認します。

問題がなければトライアルに進みます。引退牧羊犬のトライアル期間は比較的長めに確保していて、1カ月を目安としているそうです。
「トライアルを無事に終え、犬も里親もハッピーな状態であれば正式譲渡が決定。この際、譲渡料350NZドル(約3万1500円)を団体に支払っていただき、今後の保護活動の資金に充てています」

好きな仕事が若さと健康の秘訣

シニアになっても仕事モードになると表情が引き締まるマックとボー。

シニアになっても仕事モードになると表情が引き締まるマックとボー。


第一線を退いても仕事への意欲が高く、小規模のファームでマイペースに働きたいと考える引退牧羊犬もいます。
それは人間でも同様。
両者の希望が絶妙にマッチした例が、コリンさん・ロイスさん夫妻のもとに引き取られたヘディングドッグのマックでした。

コリンさんは88歳となる今でも小さなファームを持ち、ともに作業をしてくれる引退牧羊犬を探していたそう。
ご夫婦のもとにはもう1頭、ヘディングドッグのボーがおり、今では2人と2頭で毎日楽しく働いているとか。
仕事以外ではロイスさんにたっぷり甘やかされ、満足そうな2頭。
好きな仕事を続けることで若さと健康を保てるのは、人間も犬も同じようです。

狩猟を引退して愛される家庭犬に

猟犬の中でもとくに力強いといわれるピッグドッグ(猪犬)。その特長を理解したうえで、セカンドキャリアを模索します

猟犬の中でもとくに力強いといわれるピッグドッグ(猪犬)。その特長を理解したうえで、セカンドキャリアを模索します

リタイアド・ワーキングドッグスNZには牧羊犬以外の働く犬が持ち込まれることがあります。
その一例がピッグドッグ(猪犬)として活躍していたウィッピー。
ピッグドッグとはイノシシ専門の猟犬で、獲物となるイノシシを探し、見つけたら追い立てて猟師が仕留めやすい場所まで連れてくるのが主な役目。
獲物を探す嗅覚はもちろん、イノシシに立ち向かえるだけの身体能力や力強さも求められます。
ときにはイノシシの鋭い牙で大けがを負うリスクも伴うそうです。
そんな厳しい狩猟生活をリタイアし、現在は家庭犬としてのんびり暮らすウィッピー。
新しい飼い主さんは以前も引退したピッグドッグを引き取った経験があり、「ピッグドッグは最高の家庭犬です」と微笑みます。

 

「ウィッピーは我が家に来てものの10分ですっかりうちの子になってくれました。寒い夜は一緒に寝て、片時も離れません。ピッグドッグの魅力がもっと広まるといいのにと思っています」
ピッグドッグは気性が荒いという偏見があり、保護犬としては人気がないのだとか。
しかし、十分にトレーニングを受けた猟犬たちは物静かで社会性もあり、完璧な呼び戻しができるため十分な準備があれば良いパートナーになると飼い主さんは言います。
それぞれの引退犬に合う新しい家を用意するリタイアド・ワーキングドッグスNZ。
人間のために働いてきた彼らの幸せな今後を願ってやみません。

すっかり落ち着いた様子のウィッピー。犬それぞれの個性を理解すれば、どんな子も幸せになるチャンスがあります

すっかり落ち着いた様子のウィッピー。犬それぞれの個性を理解すれば、どんな子も幸せになるチャンスがあります