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2018.11.30

【獣医師コラム】アミノ酸スコアから考える、犬にはどんなタンパク質をあげるべき?

【獣医師コラム】アミノ酸スコアから考える、犬にはどんなタンパク質をあげるべき?

■ この記事を書いた人

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(庄野 舞 しょうの まい)獣医師 東京大学 農学部獣医学科卒業。 東京大学付属動物医療センターにて、血液腫瘍科、神経内分泌科、消化器内科で従事。 たくさんのペットの生死を見てきて、共に戦った飼い主さんが最終的に願うのは「食べさせてあげたい」という思いであることに気づく。 現在は、病気予防のふだんの食事のこと~漢方、植物療法の世界の探求に励む。はじめの一歩に漢方茶マイスターを取得。 得意分野は、犬猫の血液腫瘍と回虫。講演なども行っている。(詳しいプロフィールはこちら

「良質なタンパク質をとろう!」

よく耳にする言葉だと思いますが、この”良質”って一体なに?悪質なタンパク質が存在するの?とかねてから疑問に思っていました。

今回は、タンパク質の評価方法として提唱されているアミノ酸スコアを元に、家族にどんなタンパク質をあげたらいいのか、自分自身もどんなタンパク質を食べればいいのか、探ってみます。

タンパク質とアミノ酸

動物の体を構成している成分のうち、最も多いのは約70%を占めている水分です。この次に多いのが、約20%を占めるタンパク質。このタンパク質、体の中では筋肉、骨、臓器、血液、ホルモン、皮膚、つめ、髪、酵素などを構成していて、体のほとんどの部位に関与している、とても大事な成分です。

タンパク質ひとつひとつは、それぞれさらに小さな物質が50個以上結合し、さまざまな形態をとりながら体内に存在しています。この小さな物質のことをアミノ酸と呼び、タンパク質を作るアミノ酸は20種類存在しています。この20種類のアミノ酸の結合の順番や結合の形によって、タンパク質は種類が決められているのです。

タンパク質を口から摂取した場合は、消化管の中でこのアミノ酸レベルまで分解され、アミノ酸として体内に吸収されます。吸収されたアミノ酸は肝臓へ運ばれ、必要な分だけ体の一部に合成されたり、エネルギー源になったりし、必要ない分は老廃物として処理されていきます。

アミノ酸の種類

タンパク質を構成するアミノ酸は、大きく「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」に分類されます。必須アミノ酸とは、体内で作り出すことができないアミノ酸のことを指し、食事からの摂取が必要になってくるため、必須、と呼ばれています。一方、非必須アミノ酸は、体内で他の物質から作り出すことができるため、必ずしも食事に含まれていなくても問題がありません。ヒトの必須アミノ酸は「バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・スレオニン・トリプトファン・フェニルアラニン・ヒスチジン」の9種類が該当します。犬猫ではこの9種類に加えてアルギニンが必須アミノ酸となります。

(猫ではこれらに加え、タウリンも必須栄養素として知られていますが、タウリン自体ははアミノ酸ではありません。)

良質なタンパク質って?

どんなタンパク質が良いタンパク質と呼べるのか、今まで様々な評価方法が考えられてきました。たとえば、タンパク質を1g食べたら、とれだけ体重が増えるか調べる方法(タンパク効率:PER)だったり、タンパク質中に含まれる窒素がどれだけ体に残ったか、摂取した量と、排泄された量の差から調べる方法(生物価:BV)だったり。しかしこれらの方法は、ヒトや動物で測定する必要があったため、時間と経費がかかっていました。

そんな中、1973年に国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)が提唱した評価方法が、「アミノ酸スコア」と呼ばれるものです。この方法は、その食品に含まれるアミノ酸の利用効率を評価した方法であり、この方法であれば、今まで考えてきたPERやBVともある程度相関し、かつヒトや動物で測定しなくてもよい簡便さから、現時点で広く使用されているようです。そして、アミノ酸スコアが高い食品=タンパク質として良質、と広く受け入れられているようです。

アミノ酸スコアの考え方

アミノ酸スコアは、その食品に含まれるタンパク質を構成するアミノ酸のバランスを元に、利用効率を評価したものです。なぜアミノ酸のバランスに注目しているか、それは、アミノ酸が体内で利用される時の原理によります。

タンパク質を食事として口から体内にいれた際、消化管でアミノ酸レベルまで分解されます。そして小腸で吸収され、肝臓まで運ばれて初めて利用されるわけですが、この時、必須アミノ酸はそれぞれお互いのバランス保ちながら利用されると言われています。つまり、何かが多すぎたり、何かが少なすぎたりするまま利用されることはなく、必須アミノ酸みんなが、決められた割合で、せーの、で体内に入っていくイメージです。たとえば、ヒトでの9種類の必須アミノ酸のうち、8種類がたくさんあっても、1種類が少なければ、他の8種類も少ない量しか利用されない、ということなのです。
この原理は、「アミノ酸の桶理論」と呼ばれています。

必須アミノ酸の桶理論

必須アミノ酸の桶理論


必須アミノ酸9種類をそれぞれ桶板にたとえ、含有量によって長さが変わるとします。すると、一番少ないアミノ酸が最も短い桶板となり、9枚の桶板で囲った桶を作ったとき、最も短い桶板によってその桶に入る水の量が決まってしまう、といった例えです。
アミノ酸の体内利用効率を決めるのは、この最も少ない必須アミノ酸であり、このアミノ酸を「第一制限アミノ酸」と呼びます。

アミノ酸スコアはこの第一制限アミノ酸に着目し、該当アミノ酸が理想に対してどの程度含まれているかを数値化したものになります。

具体的な計算式は、

「食品タンパク質の第一制限アミノ酸含有量÷アミノ酸評定パターン当該アミノ酸含量×100」

アミノ酸評定パターンとは、タンパク質を構成する窒素1gにつき、それぞれの必須アミノ酸がどの程度含まれているのが理想か検討した基準値を指します。この値に対して、第一制限アミノ酸の量がどの程度含まれているかをこの数式で計算していることが分かります。
アミノ酸スコアは最大値を100とし、計算上100をこえた場合でも、その食品のアミノ酸スコアは100と記載されます。

トウモロコシで実際に計算してみましょう。

アミノ酸評定パターンは1985年にWHOから発表されているものを、各種食物におけるアミノ酸成分値は文部科学省の当該サイト(http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365478.htmにて発表されているものを使用しています。

 

アミノ酸評定パターン トウモロコシ成分 アミノ酸スコア
イソロイシン 180 240 240÷180×100 >100
ロイシン 410 960 960÷410×100 >100
リジン 360 110 110÷360×100 31
メチオニン+シスチン 160 310 310÷160×100 >100
フェニルアラニン+チロシン 390 590 590÷390×100 >100
スレオニン 210 200 200÷210×100 95
トリプトファン 70 33 22÷70×100 47
バリン 220 300 300÷220×100 >100
ヒスチジン 120 190 190÷120×100 >100

トウモロコシの場合、最も少ないアミノ酸はリジンであることが分かり、そこからアミノ酸スコアは31であることが導きだせます。このアミノ酸スコア、評定パターンが時折更新されるため、一定ではないのですが、現在発表されている数値で計算すると、

スコア100…大豆、卵、牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、魚類
スコア91…プロセスチーズ
スコア65…精白米
スコア48…トマト

などが挙げられます。
このアミノ酸スコアが高いほど、必須アミノ酸が効率的に利用できる“良質”なタンパク質、と言えます。

アミノ酸スコアの注意点

このアミノ酸スコアを考えるにあたって、注意点が3つあります。

1つ目、このアミノ酸スコア、あくまで必須アミノ酸の“利用効率”を数値化したものなので、実際の含有量は考慮されていない、という点です。たとえば、牛乳はアミノ酸スコアが100のタンパク源ですが、この牛乳を水で薄めたとしても、スコアは100のまま。なのでスコアが100だからと言って、少量で必要なタンパク質が十分とれる、という話にはなりません。

必須アミノ酸は人、犬、猫で異なります。

必須アミノ酸は人、犬、猫で異なります。


2つ目、これは犬猫で考える時の注意点です。アミノ酸スコアは必須アミノ酸の最低量によって決まると書きました。そして、ヒトと犬猫では必須アミノ酸が異なります。上にも記載しましたが、ヒトでの必須アミノ酸に加え、犬ではアルギニンが、猫ではアルギニンに加えて必須栄養素のタウリンが加わります。そのため、ヒトで算出したアミノ酸スコアが必ずしも犬猫では使えない、ということになります。計算することは可能なので、論文ベースでは様々な報告がでていますが、一般的にネットに書かれている数値はヒトのものなので、そこは注意が必要です。ただし、第一制限アミノ酸になりやすいのは、リジンとメチオニンと言われていますので、アルギニンやタウリンが影響を与えることは少ないのではないかと考察します。ペットフーに添加されているアミノ酸の種類を見ると、リジンとメチオニンが多いのは、第一制限アミノ酸になりやすいから、と考えられますね。

3つ目、これが最も大事な点だと思うのですが、アミノ酸スコアはあくまでその食品単体の評価であるため、アミノ酸バランスが違ういろんな食品を摂取すれば、アミノ酸の利用効率は変化する、という点です。

たとえば、リジンの低い白米を食べた場合、一緒にリジンが多い豆類を摂取すれば、食事全体として考えた時、無駄になるアミノ酸は少なくなります。アミノ酸スコア上悪質(=利用効率が悪い)、とされるタンパク源であっても、食事の組み合わせによっては、必ずしも悪質にはなりません。

では、何をあげるか

アミノ酸スコアの低いものばかり偏って食べてしまった場合、タンパク質全体の量は十分摂取できていても、体内でうまく利用できない、ということが起こり得ます。そのため、どんな食材がタンパク源として優秀であるかは頭に入れておくといいかもしれません(と言っても、多くの肉や魚、乳製品はアミノ酸スコアが100なので、比較してこっちの方がいい、ということはできません)。

また、このアミノ酸スコアの考え方を知ったら、やみくもな高タンパク食は必要ないこともわかります。アミノ酸スコアの高い食材を、体にあった量食べる、これがもっとも効率のよいタンパク質の摂取方法です。


しかし、アミノ酸スコアが100である食品中でも、それぞれの必須アミノ酸の含有量にはばらつきがあります。これらを最大限体に利用させようと思ったら…多くの食材をバランスよく食べる、これが最もいい方法であることに気づきます。

たとえば、卵はアミノ酸スコアが100ではありますが、その中でも第一制限アミノ酸はあるので、卵ばっかり食べていたら、一部無駄になるアミノ酸がでてきます。すこしもったいないですよね。この無駄をなくそうと思ったら、卵以外の食材もとにかくたくさんの種類をバランスよく食べること、がお勧めできます。そうしたらアミノ酸のバランスは平均化され、単体しか食べてない時よりも、より体内にアミノ酸を吸収できるようになる、と言えます。

トッピングに最適なドッグフードとおかずレトルト

トッピングに最適なドッグフードとおかずレトルト


人では一日30品目、などが流行りましたが、これには意味があって、たくさんの食材を食べることで、自然とバランスが保たれるから、なんですね。これはぜひ、犬猫にもおすすめしたいです。普段のフードは一種類だったとしても、食材が多いものを選ぶとか(アレルギーのある子はまた話が変わってきますので注意が必要ですが)、トッピングやおやつの種類を増やしてみるとか。POCHIをご愛用されているみなさんなら、トッピングの楽しさや、おやつの楽しさも知っているはず。栄養学を勉強すればするほど、いろんなものをバランスよく、が結局は最も自然にバランスを整えることに繋がるんだなあと思います。

今回学んだことのまとめ

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食品単体のタンパク質に評価方法としてアミノ酸スコアがある

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スコアが高ければ吸収効率の良い(=良質な)たんぱく質と言える

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食品の組み合わせによってさらにアミノ酸の吸収効率を上げることは可能

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いろんなものをバランスよく、が結局は最強である

最近はアレルギー検査が発達してきたこともあいまって、タンパク源について注目されることが増えてきたように思います。この食材にアレルギーがある、と分かっている子は、もちろんその食材を避けるべきですが、そうでない場合は、いろんな食材を食べてみるのがやっぱりお勧めです。好き嫌いも含めていろいろな食材を楽しんで、試してもらいたいなと思います。