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2022.08.17

犬のマイクロチップ装着のメリットとデメリットを比較してみました【#獣医師コラム mini】

犬のマイクロチップ装着のメリットとデメリットを比較してみました【#獣医師コラム mini】

2022年6月1日から、犬・猫に対するマイクロチップの挿入について、新たな制度が始まりました。今回は、この制度の概要や、マイクロチップの挿入方法、利点や欠点などをお伝えします。

DOG's TALK

この記事を書いた人 (庄野 舞 しょうの まい)獣医師

東京大学 農学部獣医学科卒業。 東京大学付属動物医療センターにて、血液腫瘍科、神経内分泌科、消化器内科で従事。 たくさんのペットの生死を見てきて、共に戦った飼い主さんが最終的に願うのは「食べさせてあげたい」という思いであることに気づく。 現在は、病気予防のふだんの食事のこと~漢方、植物療法の世界の探求に励む。はじめの一歩に漢方茶マイスターを取得。 得意分野は、犬猫の血液腫瘍と回虫。講演なども行っている。

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犬・猫に装着するマイクロチップとは


マイクロチップとは、名前の通り、とても小さな筒状の物体で、ICチップが内臓されています。
ICチップには15桁の番号が記録されており、専用のリーダーで読み取ると、その番号に紐づく情報が参照できるという仕組みです。
このICチップを動物の身体に挿入することで、それぞれの動物の個体識別をすることがマイクロチップ挿入の目的になります。

義務化の詳細

このマイクロチップの挿入はもともと任意とされており、犬では35%程度の普及率とされていました。これが、動物愛護法の改正により2022年6月から変更されています。

 

マイクロチップに関する制度の主な変更点

■ブリーダーやペットショップなどの犬や猫を販売する事業者

2022年6月1日以降に迎え入れた犬猫にはマイクロチップの挿入を義務化されました。そのため、2022年6月以降は必ずマイクロチップが入った状態の犬猫が販売されることになります。
一方、保護団体などから迎え入れた保護犬・保護猫などの場合はマイクロチップの装着は必須ではありませんが、迎え入れた後に装着するように努めることが推奨(努力義務)されています。

■すでに犬猫たちと暮らしているご家族

2022年6月1日時点で、すでに犬猫たちと暮らしている方には、犬猫たちへのマイクロチップの挿入が努力義務として定められました。努力義務のため、強制ではありません。

■マイクロチップが挿入された犬猫たちと暮らしているご家族

2022年6月1日以降に、ブリーダーやペットショップなどから犬猫たちを迎え入れた方、あるいは、すでにマイクロチップを挿入されている犬猫と暮らしている方は、環境省への所有者情報の登録が必要になります。
マイクロチップが入っている、だけではいけないというのがポイントです。忘れずに登録手続きを行うようにしてくださいね。
新しく迎え入れた方には、事業者から「登録証明書」が渡されますので、そちらを元に申請、すでにマイクロチップを挿入されている方は、獣医師が発行する「マイクロチップ装着証明書」を元に30日以内に手続きをする必要があります。申請は、指定登録機関である公益社団法人日本獣医師会を通して行い、オンライン又は郵送にて申請することができます。
登録される情報は、15桁の識別番号、所有者情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス など)、動物情報(名前、品種、毛色、生年月日、性別、狂犬病予防法登録番号 など)になります。

 

*1 ※すでにマイクロチップを挿入しており、かつ民間業者にて所有者情報の登録を行っている方は、無料で環境省のデータベースに移行することもできます。 環境省「犬や猫のマイクロチップを、既存の民間登録団体 (Fam、JKC、AIPOなど)に登録している飼い主の方へ」

装着方法とトラブル

マイクロチップの挿入は、専用の注射器で行います。医療行為のため、実施できるのは獣医師資格を持った者のみです。挿入箇所は首の後ろで、皮下への埋め込みとなります。一般的な注射器(血液検査や皮下注射の際に使用するもの)よりも一回り大きな注射器で、注射と同じく施術自体は数秒で終わります。皮下に埋め込むと聞くと、痛いのでは?と心配に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、犬猫の場合、ヒトと異なり、皮膚が良く伸びること、また皮下に脂肪が多いことから、施術の瞬間のみの疼痛で、挿入後痛みが見られることはありません。

マイクロチップの挿入によるトラブルについてはほとんど報告されておらず、海外で、装着部位の炎症が起きたとの事例が数件確認されている程度です。施術自体も流れは皮下注射とほぼ同じのため、獣医師によって手技が異なるなどもありませんので、これから装着を考えられている方は、かかりつけの先生にぜひ相談してみてください。犬では生後2ヶ月以降、装着が可能とされていますので、避妊手術や去勢手術のタイミングで実施をすることもあります。

利点

マイクロチップ挿入の最大の利点としては、迷子になり別の場所で保護された時に、チップから飼い主情報にたどり着ける、といったことが挙げられると思います。
マイクロチップの必要性について特に議論が白熱したのは災害の時で、大きな地震などがあり、犬猫たちが予期せず家から逃げ出してしまった時など、身元判定する術がないという問題がありました。

この問題を解決するために、環境省が義務化したのが今回の制度改正になります。
また、犬猫と暮らし始めたはいいものの、途中で問題が起きて捨ててしまう、といった方が、悲しいですが一定数いらっしゃいました。こういった置き去りや遺棄の防止にも役立つとされています。
犬や猫の安全を守り、不幸な子を増やさないための取り組みです。

おわりに

マイクロチップは世界でも広く普及しており、イギリスやスウェーデンなど義務化されている国も多くあります。首輪などと異なり、外れる心配もほぼありませんし、日本のように地震災害が多い国にはよいかもしれません。一方で、マイクロチップがあるから少し迷子になっても大丈夫、というのは違います。外に出たら交通事故のリスクもありますし、悪意のある人間も少なからずいます。チップ装着は万が一のトラブルの時のためのものということを意識したいですね。