- コラム
2026.01.19
【#犬学部】犬の気持ちと健康を優先した世界各国の法律に注目!
取材・文=臼井京音
取材協力=公益社団法人アニマル・ドネーション
暮らしを支える科学技術や科学的な研究分野の「最新科学」の情報や、日々変化する社会の状況に適合していく「法律」や「ルール」の最新の世界の情報など、ドッグライフにも小さな変化から大きな変化までをもたらす可能性を秘めるあれこれについて知ることで、役立つ"何か"に出会えるかもしれません。読んだら犬がもっと魅力的に感じる。思わず誰かに話したくなる。そんな情報をお届けします。
今回のお役立ち情報犬に関する海外の法律
世界31ヵ国の動物法をリサーチしている公益社団法人アニマル・ドネーションに、ドイツ、スイス、イギリス、スペイン、フランス、カナダなどの動物福祉先進国の犬に関する最新の法律について教えてもらいました。
動物法の世界標準は“3K”を考慮
動物福祉活動への寄付支援を行っている公益社団法人アニマル・ドネーション(以下、アニドネ)は、大学や企業と連携して調査物を発表するなど、「人と動物の真の共生」を提言する「AWGs(アニマルウェルフェアゴールズ)」サイトも運営しています。
今回は、AWGsが調べた世界31ヵ国の、犬に関するさまざまな最新の法律をピックアップして紹介します。
アニドネ代表の西平衣里さんは、調査チームが収集した約500の最新の法律情報から、「日本よりも動物関連の法律が上位の動物福祉先進国は今、“3K”が基準である」と気づいたと言います。
その3つのKとは、感受性、健康、環境。
「2年間かけて調べていますが、動物には豊かな感情や感受性があることを前提に、動物の気持ちに添った法律が山ほどあることに衝撃を受けました」(西平さん)
それでは、3Kを軸として法改正が進む各国の法律を見ていきましょう。
犬の幸せを願う人々ならば誰でも、法律でも犬が守られ大切にされることを願っていることでしょう
犬の共同親権も導入されているスペインの法律
スペインの動物福祉法では、動物は人と同じように「意識・感受性のある生物」であり「家族の一員」と明記されています。
ちなみに犬や猫などの動物は日本の民法では「動産」、動物愛護法では「命あるもの」と定義されています。
スペインでは2023年に動物福祉法が改正され、飼育に関する既定の講習コースの受講が、犬を新たに家族に迎えたい人に義務化されました。
2021年に改正された民法・抵当法・民事訴訟法では、スペインでは離婚や別居するカップルで合意がない場合、司法当局がペットの世話を片方または両方に委託し、飼育していない方がペットと会う方法やペットの世話にかかる費用の分担方法を決定することも定められました。この決定は、ペットの登録簿にも記載されます。
スペインの犬の散歩風景。人口約4760万人のスペインには約950万頭の犬が飼育されていると言われています
犬の気持ちに法律上でも寄り添うイギリスとフランス
「犬の気持ちを反映した法律として話題になったのが、イギリス(スコットランド)で2023年6月に施行された花火法ですね」と、西平さん。
これは、犬や猫などのペット、家畜、野生動物の不必要な苦痛を除くために、自治体が花火禁止区域を制定できる法律です。
日本をはじめ世界中で、打ち上げ花火の音に驚いたり恐怖を感じたりした犬が逸走してしまう事故が絶えません。
「音に敏感な犬たちから、大歓迎される法律ではないでしょうか。花火の破片などの有害物質に自然や動物たちが接するのを防ぐことにもつながり、すべての動物にやさしい法律だと思います」(西平さん)
EU諸国ではカフェでも当たり前のように飼い主と一緒の犬の姿があります。写真はフランス ©Kyone Usui
フランスでは、テレビ放送、メディアサービスのバラエティ番組、ゲーム番組、ノンフィクション番組において、飼育されているか自然環境から連れ出されたかを問わず、家畜でない動物を使用することは禁止されています。
これも、場合によっては飼い主から離れたり、普段と異なる環境下に置かれて不安になったりする犬の気持ちに寄り添った法律といえるでしょう。
パリでは大きな犬もほとんどのマンションで飼育可能です ©Kyone Usui
犬の健康に配慮した各国の法律
世界的にもめずらしく、犬に特化した法律「動物保護-犬規制(Tierschutz-Hundeverordnung)」があるドイツでは、犬と暮らすにあたり、飼い主が守るべき項目が詳細に規定されています。
たとえば、犬は日光があたる部屋で飼育しなければなりません。日光が少ない場合は、昼夜のナチュラルなリズムに合わせて部屋を照らす必要があること、部屋に新鮮な空気を十分に供給する必要があることも決められています。
デンマークの法令にも、犬の飼育に関する細かいルールが記載されています。
デンマークではそもそも犬を常につないでおくことは法令で禁止されていますが、一時的につなぐ場合、鎖の長さは最低5メートルなければならず、風雨や暑さ、寒さから犬を守れるリビングルームにアクセスできるようにする必要があります。
くさりに関してや快適さなど、犬が過ごす環境にも決まりがある法律も各国にあります
スイスでは、「つながれた犬は最低5時間は自由に動くことができ、それ以外の時間は最低20㎡を移動できなければならない」と、動物愛護条例に記載されています。
さらに、「必要に応じて、犬を毎日散歩させなければならない」という条例もあります。
繁殖に関しては、メス犬は生後18ヵ月より早く交配することはできないとする法律が、スウェーデンにあります。
このように、世界各国には犬の心身の健康を守るための環境整備や飼育法、繁殖ルールなどが法律で設けられています。
散歩が大好きな犬のために、寒い日も一緒に外に出るフランスの飼い主さん ©Kyone Usui
見た目よりも健康を優先した法律もある
近年、人間目線のルッキズムを脱却し、犬本来の健全性を取り戻そうとする動きも、一部の国の法律に盛り込まれ始めました。
パグやフレンチ・ブルドッグなどのマズルが短い犬種は、短頭種気道症候群と呼ばれる、呼吸がしづらい、目を損傷しやすいといった先天的な健康問題を抱えがちです。
短吻種の生活の質と健康状態の向上のため、オランダでは、マズルの長さが頭蓋骨の長さの3分の1より短い犬を繁殖させることが違法になりました。
また、スイスでは、成犬時の体重が1500グラム未満の犬はドッグショーへの出陳が法律で禁止されています。
長い歴史の中で、犬種ごとの特徴がより強調されるようなブリーディングがなされてきてしまった可能性は否めません。かつては、もっとマズルも長かったり、骨格もしっかりしていて骨量も体重もあったりした犬たちの本来の姿に立ち戻ろうとする動きは、今後さらに世界に広がっていくのではないでしょうか。
今後は世界的に、短頭種など犬種の外見に変化が見られるようになるかもしれません
日本とは違う、犬の販売に関する法律とは
ペットショップで犬を展示販売しない国が増えていますが、各国では法律でも犬の販売に関して明記されています。
スペインでは犬、猫、フェレットの販売は仲介業者を介さず、登録簿に登録されたブリーダーが直接行う必要があるため、ペットショップでの販売や商業目的の展示、オンラインでの直接販売は法律上できません。
同様にフランスでも、2024年からペットショップでの犬と猫の販売が禁止されました。ただし、ペットショップでは動物保護団体の立ち会いのもと保護犬の紹介は可能です。
アメリカのカリフォルニア州でも、ペットショップでは犬・猫・ウサギは保護動物のみしか販売が認められておらず、譲渡費も500ドルを超えてはならないと州法で定められています。
アニマルシェルターなどと呼ばれる保護施設には新しい飼い主を待つ犬が多くいます
イギリスでは2020年に「ルーシー法」が施行されました。パピーミル(子犬工場)と呼ばれる繁殖場から救出された子犬の名にちなんだ法律で、生後6ヵ月未満の子犬の商業販売は禁止され、子犬はブリーダーから直接購入するか保護施設から引き取ることのみ可能です。
2024年には、カナダのオンタリオ州動物福祉サービス法により、パピーミルの禁止とパピーミルの定義が明記されました。この定義には、子犬の繁殖にかかる衛生面や感染症などについて記されており、世界的にも類を見ない法律とされ動物福祉関係者の間で話題を集めています。
「アニドネが調べた31ヵ国中16ヵ国で“感情のある生命存在”として動物を定義していました。
犬の感情や気持ちを考えてあげることが、アニマルウェルフェア(動物福祉)の大切な一歩になることにも、世界の法律を見渡してあらためて気づかされました」(西平さん)
イギリスでは、犬を求める人に母犬と子犬が交流している様子を見せることを義務付ける「ペットフィッシングキャンペーン」も行われています
たとえ日本の法律や条例に記載されていなくても、私たちの身近にいる犬たちが心身ともにいつも健康で幸せに過ごせるよう、犬という動物の特性をよく知ったうえで気を配ってあげたいものです。
■ 取材・文:臼井京音
取材協力
*1 アニマルドネーション https://www.animaldonation.org/
参考サイト
*1 世界の動物の法律に関する情報 https://www.animaldonation.org/awgs/law/


