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2023.12.20

犬の鼻が乾燥しているのは病気のサイン?獣医さんに聞いてみました[#獣医師コラム]

犬の鼻が乾燥しているのは病気のサイン?獣医さんに聞いてみました[#獣医師コラム]

犬は言葉を話すことができないので、些細な体調の変化でも飼い主が早めに気付いてあげられたらいいですよね。「なんだか変だな」という飼い主の気付きが、病気の早期発見にもつながる、と語る獣医さんも少なくありません。

犬の健康状態を知るためのヒントには、食欲やウンチ、おしっこの状態、体臭や行動の変化など、さまざまなものがあります。
その中の体調の変化のサインとしてまことしやかにささやかれているのが「鼻」です。
「犬の鼻が乾いていると具合が悪い」という説を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これって本当なのでしょうか?犬の体調と鼻の状態の関連について、ポチの獣医さんに質問してみました。

DOG's TALK

獣医師 菱沼 篤子

獣医師 菱沼 篤子

犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。

犬の鼻が乾いている=体調不良とは断定できない

犬の鼻が乾燥していると、どこか体調が悪いのかも…と思いがちですが、体調不良のサインだとは限りません。

犬の鼻が常に濡れているのは、分泌物で保護されているというのが理由の一つ、もう一つの理由が犬が意識的に自分の鼻を舐めて湿らせているからなんです。

また、犬の目を保護する涙も鼻の奥に流れ、犬の鼻の奥にある外側鼻腺と呼ばれる腺から出る分泌物と混じって鼻を湿らせるのに一役買っています。

犬の鼻は素晴らしい嗅覚を持っていますが、それは敏感にニオイの分子を感知できるからです。

ニオイの分子がどの方向からやってきたものなのか、空気の流れから判断したり、ニオイの分子を細胞にしっかり吸着させるために、犬の鼻は薄い粘膜で覆われています。

そしてその感度を維持するために、犬は定期的に鼻をペロッと舐めて湿らせているのです。

犬の鼻を乾燥させる代表的な理由


では次に、犬の鼻が乾燥する時の代表的な理由をご紹介します。犬の鼻を触って「なんだか乾いてるな」と感じたら、以下の可能性を考えてみてください。

■犬が眠っている時、寝起きのタイミング

犬の鼻が濡れているのは、犬が自分で鼻を舐めているからというお話をしました。
では、寝ている時はどうでしょうか。寝ている間、犬は鼻を自分で濡らすことはほとんどしません。(寝ぼけてすることはあるかもしれませんが)
犬が鼻を使ってニオイを確かめるのは、情報収集のためです。寝ている時は情報を集める必要がないので、鼻を濡らすことがないということなんでしょうね。
睡眠中や寝起きは、健康的な犬であっても犬の鼻は乾燥していますが、目覚めと共にすぐに鼻を濡らすはずです。

■高齢犬は要注意

高齢の犬は、鼻が乾燥しやすくなるといわれています。
人間でもそうなのですが、加齢に伴い体内の水分量は減っていく傾向にあります。犬の鼻が乾燥するのも、この影響なのかもしれません。
人間でいうところの、お年寄りの耳が遠くなったりするように、犬では高齢になったために嗅覚が衰えるのかもしれません。

シニア犬は運動量の低下や関節のこわばりのために、とくに冬場に飲水量が減りやすくなります。
鼻が乾燥している時に、気付かずにいると脱水症状を引き起こしているケースもあるため、とくに寝ている状態でいることが多いハイシニアなどでは、注意深く見守ることをオススメします。
こたつに入ったまま寝てしまったりすると、気付かないうちに水分不足になっていることがありますので要注意です。

 

■鼻が乾いている以外に症状があるときは

犬の鼻が乾燥している以外にも、ぐったりとしていて元気がない、食欲が落ち込んでいる、下痢や嘔吐がある…など、気になる症状があるようなら、病気による体調不良の可能性があります。

繰り返しになりますが、犬にとって鼻は情報収集のための大切なツールです。それがきちんと働くように濡らしておくことは、野生の生活では身を守ったり食事を手に入れるなど、命を守る行動につながります。
発熱している場合はさまざまな病気、感染症も疑われます。犬の体調に明らかな異常が見られる際はすみやかに動物病院で診てもらいましょう。

乾燥以外で気を付けるべき犬の鼻のトラブル

■ドロッとした鼻水が出ている

犬の鼻水は通常サラッとしていて透明です。それがネバネバ、ドロッとしていたり、黄色~緑がかっているようであれば、鼻の奥で膿が溜まっている可能性が高いです。
膿が溜まるようになる原因としては、感染症や鼻の中の腫瘍などが考えられます。いずれにせよ、この状態になっているようであれば速やかに動物病院で相談されることをオススメします。
そのほかにも、歯周病が進行することで、歯や顎にたまった膿が鼻から出るようになってしまった…ということもありました。

 

■鼻血が出ている

犬が鼻血を出しているようであれば、それにも注意が必要です。犬は人間と違い、突発的に鼻血が見られることはほとんどありません。
犬の鼻血が出ている時、まず考えられるのは外傷によるものです。強い衝撃でぶつかったり、鼻の中に異物が入り込んでしまったことで血が出ている可能性があります。
その他にも、鼻の中に腫瘍ができていたり、免疫系のトラブルの可能性も考えられます。
最近は減ってきているようですが、昔は殺鼠剤などを誤って食べてしまった犬が鼻血を出すこともあったようです。
いずれにしても、犬の鼻血はただ事ではありません。気が付いたら、犬の様子にかかわらず、なるべく早く動物病院でご相談ください。

おわりに

今回は犬の鼻が乾燥する理由や、注意したい犬の鼻の変化についてご紹介しました。世間一般では「鼻が乾燥している=体調が悪い」という説は広くありますが、実際は寝ている間は鼻が乾燥していることが多かったりして、一概には言えないのかなと思います。
犬の鼻が乾燥している以外にも、何か気になる症状があるようであればそちらの方が病気のサインの可能性が高いと言えます。