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2023.11.16

犬の歯石は家庭で取れる?治療が必要って本当?[#獣医師コラム]

犬の歯石は家庭で取れる?治療が必要って本当?[#獣医師コラム]

犬の口の中を見てみると、歯に茶色っぽい汚れのようなものが固くこびりついていたりしませんか?多くの犬は、歯に歯石が付いているといわれます。
この歯石、放っておくと厄介なトラブルにつながる原因になります。

そこで、今回はこの犬の「歯石」に改めて注目。
歯石ができるメカニズムや必要となる治療、どんなトラブルのリスクとなるのかについて、獣医師からのアドバイスを交えながらご紹介いたします。
犬の口臭や歯の健康は、飼い主にとってはかなり気になる要素。犬の歯石の取り扱いについて正しく知り、犬の健康維持に役立つアドバイスをまとめてみました。

DOG's TALK

監修者:獣医師 菱沼 篤子

監修者:獣医師 菱沼 篤子

犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。

犬の歯石ってどんなもの?

犬の歯石の大部分は、「リン酸カルシウム」というミネラル類の結晶です。もともとは歯に付着した食べかすをエサにして繁殖した口内細菌の塊である歯垢の表面が石灰化して硬くなったものです。
この食べかすと口内細菌の塊は、だいたい約75%が菌、そして約20%は菌が作り出した粘着物質で構成されているといわれていて、唾液に含まれているカルシウムやリンと言ったミネラルを取り込んで表面を固めていきます。これが歯石です。

歯石そのものも、犬の健康に悪影響を与え、歯石から分泌される口内細菌が作る毒素は、歯肉や顎の骨などを溶かしたり、血液に乗って全身で悪さをするなど、さまざまな影響を及ぼすことが知られています。

歯石と犬の歯周病の関係

歯石と歯周病には深い関係があります。
歯の表面に歯石が付着して、細菌たちが繁殖しやすい口内環境に変えようと活動し、より分泌液を出すようになります。口内のpHを変えたりする成分を分泌するなどして、口内細菌が増えやすくなり口内のいたるところで歯石ができやすくなります。
大きく成長した歯石からは、やがて歯を支えている歯肉(歯ぐき)や歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる歯を支える骨を溶かす酸が分泌されるようになります。この影響で、歯肉がはれたり歯周組織が破壊される歯周病が引き起こされます。

歯周病の代表的な症状は徐々に進行していきます。

■ 犬の歯周病の段階

1.まず歯茎が炎症を起こします。健康的なピンク色から赤色へと変わり、腫れ上がります。この状態を歯肉炎と呼ぶことがあります。

2.炎症を起こした部分から出血や口臭も発生するようになり、よだれの量が増えることもあります。この状態くらいから歯周病と呼ばれることが多いようです。

3.歯がぐらぐらし、痛みも伴うようになります。また、口を触られるのを嫌うようになります。食事をするにも痛がることが出て来るので、食欲が低下するなどの変化も見られます。

4.歯周病がひどくなると、鼻炎、根尖膿瘍(こんせんのうよう:歯根の最下層に膿ができ、腫れる病気)、下顎骨の骨折などを引き起こすこともあります。

犬の歯周病は健康寿命を大きく損なう原因となります。犬の健康長寿のためには、口内環境を健康的に維持することがとても大切。そのためにはなるべく歯石ができないよう、飼い主が歯石の予防を意識していくことが重要です。

犬の歯石は歯磨きで予防

犬の歯石ができないようにするために、意識したいのは「歯石ができない/できにくい」口内環境づくりです。そのための取り組みと言えば、やはりデンタルケアです。
ひと言でデンタルケアといっても、さまざまな選択肢があります。効果的にデンタルケアを行うためには、デンタルケアアイテムの特長を把握することがとても大切。
それぞれの方法のメリットとオススメの使い方をご紹介します。

 

■犬の歯磨きは効果的です

まず、オススメしたいのはやはり「歯磨き」です。歯石ができてしまう原因のひとつは、口の中に食べかすが残っていることにあるので、食べかすを取り除くことを意識して犬の歯磨きを行いましょう。

まずは、「歯磨き=楽しいもの」とイメージ付けることからはじめるのがオススメ。
犬が口を触らせてくれたら、褒めたり、ご褒美を与えてください。口を触ることを嫌がらなくなったら、ご褒美をやめて歯や歯茎を少しずつ触り、褒めましょう。触れる歯の本数を徐々に増やしていき、まずは触ること、次に歯ブラシにも慣れさせていきましょう。最初は歯磨きができなくても大丈夫。焦らずじっくり慣れていきましょう。

 

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■犬の歯ブラシの使い方

犬の口を開かせ、唇をめくったら、歯を1本ずつ細かく歯ブラシを動かしながら磨きます。力は入れずに、歯に着いた食べかすを取り除くことを意識しながら動かすようにして下さい。
特に重点的に磨いていきたいのは、上顎の奥歯、大きな歯です。内側(舌側)は、軽く口を開けさせて、無理に行わずに、おとなしく磨かせてくれたときにうんと褒めてあげましょう。

 

■歯磨きの頻度はどれくらいがオススメ?

毎日歯磨きができれば理想的です。なかなか実行できなくても徐々に頻度を増やして、犬も家族も無理なく続けられるのが一番です。

 

■デンタルガムも活用しよう

犬用デンタルガムは犬たちが喜んで食べてくれるオヤツとしても活用できることが魅力です。固さや味わい、使用されている成分も様々なので選ぶ楽しみもありますね。

デンタルガムは適度な硬さがあるものであれば、犬の歯にこびりついた歯垢を絡めとる働きがあります。
より歯磨き効果を期待したいのであれば、飼い主が手に持って左右の顎で交互に噛ませるといいですね。犬に任せてしまうと、犬にも利き手のような効き顎があるといわれていて、左右どちらかの顎でばかり噛んでしまう可能性がありますので、コントロールしてあげてください。
デンタルガムは汚れを落とす力自体はあまり強くありませんが、歯垢を取り除くサポートアイテムとして取り入れるのはいいと思います。

犬の歯石は自然に取れるの?

一般的に、犬の歯石は一度ついてしまうと家庭で使われるようなケア用品で取り除くことは難しいです。
そのため、歯石を除去する際には動物病院で行う方が多いのですが、家庭でも歯石を除去するのに使われるスケーラーやペンチなどは手に入ります。
手軽に手に入るケア用品だからこそ、注意が必要です。

歯石が付いている犬の歯肉は出血しやすいだけではなく、犬も痛みを感じやすくなっていることも多いです。素人がスケーラーで歯石を削ろうとすると、犬に激痛を感じさせてしまったり、出血がひどくなる可能性もあります。
また、歯周病が進んで歯石や歯垢で菌が繁殖していると、潰瘍を起こし、そこから菌が入り込んでしまい、病気のリスクになることもあるようです。
歯肉の奥や歯周ポケットについている歯石はスケーラーなどで簡単に取れるものではなく、一般に全身麻酔を用いての処置が必要になることもあります。それから、たとえスケーラーで歯石を取り除くことができたとしても、その後しっかりとケアを行わないと再び歯石が付いてしまいます。
やむを得ない理由で家庭で歯石のケアを行う際にはリスクも踏まえて慎重に行うか、動物病院などの専門家に相談してからがオススメです。

動物病院での犬の歯石の治療について


目に見えている歯石よりも、見えない位置(歯の根元など)についている歯石の方が危険なことも多いので、動物病院では、歯石が酷い犬の場合は処置として歯石の除去を行うことがあります。多くの場合、歯石の除去は全身麻酔(※)で行われることになります。そのため、麻酔が高リスクとなる持病を持っている犬や高齢の犬では、そもそも歯石の除去ができないということも起こります。
いずれにしても、まずは歯石をつきにくくすること、そして歯石を大きくさせないことが重要です。ついてしまったものを取り除くことも大切ですが、それ以上歯石をつけさせないようにするアプローチを重視していただければと思います。

おわりに

本日は家庭で行う犬のデンタルケアについてご紹介しました。
犬の歯石は一度ついてしまうと家庭で取り除くことは難しいので、家でのケアは新しく歯石が付いてしまうことを予防する目的で継続して行うことで犬の健康維持に繋がります。
何を使えばいいのか迷ってしまうようであれば、まずは犬と飼い主が無理なく続けられる方法やアイテムを選んでみてください。
家庭での犬のデンタルケアは、新しく歯石が付いていないか、歯周病が進んでいないかという視点でチェックしてみてくださいね。