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2023.10.16

【#大きな犬と】ニュージーランドの保護犬は大きな犬が多い!?

【#大きな犬と】ニュージーランドの保護犬は大きな犬が多い!?

同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)



今回のお役立ち情報ニュージーランドの愛護団体

約150年前に誕生した、SPCAのダニーデンセンターを見学取材。ニュージーランドの保護犬事情や、動物愛護先進国ならではの取り組みを紹介します。

150年以上の歴史を持つNZの動物愛護団体とは?

ニュージーランド最大の動物愛護団体である“SPCA”のダニーデンセンターを、筆者は2023年の春に訪れました。
世界最古の動物愛護団体として1824年にイギリスの“RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)”が設立されてから48年後、ニュージーランドのダニーデンでSPCAがスタート。以後150年以上にわたり、犬や猫だけでなく、馬、豚、羊、ヤギ、小動物、鳥などをニュージーランドのSPCA全体で保護し続けています。その数は、全国の合計で毎年およそ3万1000。

SPCAニュージーランドの活動は、“センター”と“インスペクター”という2つの柱で成り立っています。
ニュージーランドには、2023年現在、北島と南島あわせて29のセンター(施設)と6つのパートナー動物病院があります。
いわゆる“アニマルポリス”のような役割を担っているのが、インスペクターです。政府の第一産業省から任命されたインスペクターは、ニュージーランドの動物愛護法(動物福祉法)に沿った法的権限を持ち、動物虐待やネグレクトを行う飼い主のもとから動物を保護してセンターに移すことができます。必要に応じて、動物を保護するために動物の所有者を起訴することもできます。

SPCAニュージーランドのダニーデンセンター

SPCAニュージーランドのダニーデンセンター

南島の学園都市、ダニーデンのSPCAの現状

ニュージーランド初のSPCAとして誕生したダニーデンセンター(SPCAオタゴ)は、海を見下ろす小高い丘の上にあります。現在は南島のS2というエリアのハブとしての役割も担っているダニーデンセンターの敷地面積は、約17万㎡。馬やヤギなどの大きな動物たちも、のびのびと過ごせます。

「ダニーデンセンターにいる動物のうち、約3割はインスペクターが保護するケースと言えるでしょう。
残りは、飼い主による飼育放棄や迷子などですね。迷子の動物がセンターに来ると、必ず飼い主を探すためにSNSや複数のウェブサイトなどに広告を出します。飼い主が見つからなかった場合、広告掲載から8日目以降はSPCAが責任を持ち、獣医療や避妊・去勢などのケアを行って新しい家族を募集します」と、当時のSPCAのS2オペレーションマネージャーのシェーン・ステビッチさんは言います。

海を望むノースダニーデンにあるSPCA

海を望むノースダニーデンにあるSPCA

センターを案内してくれたシェーンさんの腕には生後数ヵ月の子犬が抱かれています。
「この子は、ミックス犬ですね。外貌からすると、グレーハウンドの血が入っているかな? いつもは一時預かりさん宅にいるけど、今日は撮影があるからセンターへ連れてきてもらったんですよ。身体にトラブルがあって、もう少し詳しく検査をしたり獣医療を施したりする必要があります」とのこと。
そのような事情はまったく感じさせない子犬のクルゥーイちゃんは、シェーンさんの後を追いかけて陽光を浴びながら元気に走り回っています。

社会化の一環として冒険中のクルゥーイちゃん。その姿を見つけてボランティアスタッフの顔にも笑みがこぼれていました

社会化の一環として冒険中のクルゥーイちゃん。その姿を見つけてボランティアスタッフの顔にも笑みがこぼれていました

途中、ロットワイラーのリードを引くスタッフに、シェーンさんは“Hi”と声をかけます。
「クルゥーイは、まずは病気の治療、それから社会化をしてから新しい家族を募集することになると思います。
SPCAのダニーデンで新しい家族を募集する犬は、中型犬や大型犬も少なくありません。ダニーデンは一軒家がほとんどで、大きな犬も好まれますからね。
センターでは、トレーニングが必要な犬に、ケーナイン(犬)チームのリーダーやその指示を聞いたスタッフが目標を目指してトレーニングも行っているんですよ」とも、教えてくれました。

保護犬の運動や遊び、トレーニングなどで利用するスペース

保護犬の運動や遊び、トレーニングなどで利用するスペース

約100名のボランティアが登録

シェーンさんに、たくさんのウサギが自由に駆け回るエリア、ヤギやニワトリのスペース、室内の猫部屋などを案内してもらうたびに、筆者は多くのスタッフから“Hi”と声をかけられました。
「多くがボランティアスタッフです。ダニーデンのSPCAに登録しているボランティアは、約100名。実際はもっとボランティアスタッフが必要で、いつも募集をしているけれど……。
ダニーデンセンターでのボランティアワークは、毎月合計で450時間。SPCAの活動は、ボランティアと寄付金と行政支援に支えられています」

SPCAの職員やダニーデンセンターのボランティアスタッフが散歩するコース

SPCAの職員やダニーデンセンターのボランティアスタッフが散歩するコース

動物病院も併設

ダニーデンセンターには、動物病院も併設されています。一般家庭の動物の診察はできませんが、飼い主不明の動物が交通事故に遭うなどして運び込まれたら、連れてきた人は支払いの必要なく、SPCAが動物を保護してすぐに治療を開始します。

「ニュージーランドは獣医師や動物病院が不足していて、一般の飼い主さんが犬の避妊・去勢手術を申し込むと数ヵ月待ちになるケースもめずらしくありません。
でもニュージーランドは動物愛護先進国ですから、すべての動物や鳥が、傷ついて動物病院に運ばれた場合、獣医師は必ず早急に治療をしなければならないと法律で決められているんですよ。行政は、その治療費などを負担します。
動物病院に緊急で運び込まれたのが迷い犬だった場合は、マイクロチップの番号を獣医師は読み取り、飼い主を特定できます」

ダニーデンセンターは手術もできるクリニックを備えています

ダニーデンセンターは手術もできるクリニックを備えています

ちなみに、ダニーデンセンターで保護している動物のうち、猫とウサギが多数を占めます。
「2019年にダニーデンのSPCAが保護した約900の動物のうち、迷い猫は約240匹、迷い犬は約20頭でした。
私が米国フィラデルフィアのSPCAにいたときは、保護動物のほとんどが犬だったんですけどね。
ニュージーランドでは犬のマイクロチップ装着は義務ですが、猫のマイクロチップ装着は任意です。猫にも自治体への登録とマイクロチップ装着を義務化したら、今よりも迷い猫や捨て猫は減るのではないかと考えています」と、シェーンさん。
また、猫よりも犬のほうが、里親募集をするとすぐに新しい飼い主が決まるそうです。

行政との連携で保護活動

迷子のペットや傷ついた動物、飼い主から虐待やネグレクトを受けている動物などを見つけると、まずは自治体に連絡をするダニーデン市民が多いとか。
「シティが動物のために動いてくれることを、市民は認識しています。
行政から連絡を受けて、SPCAのインスペクターなどが出動するケースも、もちろんあります」(シェーンさん)
まさに、行政と一体になっての保護活動が、ニュージーランドのSPCAでは行われています。

保護された動物たちが運動や日光浴をする場も広々

保護された動物たちが運動や日光浴をする場も広々

ダニーデンセンターでは、2020年は750、2021年は約723の動物を保護しました。
「2019年の約900に比べて少ないのは、コロナ渦による影響でしょう。コロナ渦が終わったころから、飼い主の飼育放棄による保護件数が増加傾向にあります。残念ながらコロナによる経済状況の悪化で、ペットを手放す人が増えているという印象ですね。
SPCAでは、人も動物も幸せに暮らせるよう、教育や啓蒙活動も行っています。今後、保護される動物たち自体が減るように、力を尽くしていきたいと思います」(シェーンさん)

過去記事で紹介したとおり<【#大きな犬と】ニュージーランドの大きなワクワク犬の笑顔をお届け|プレミアムドッグフード専門店・通販 POCHI - ポチ公式サイト>、人と一緒に大きな犬も多く暮らすダニーデンの、そしてニュージーランドのすべての動物たちが幸せになることを願ってやみません。

新棟にある教育室では、学校やコミュニティグループ向けのセミナーも行われています

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文・写真:臼井京音



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