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2025.04.07
覚えておきたい!犬の鼻トラブル《RETRIEVER + POCHI archive013》

イラスト=macco
カメラマン=野口祐一
構成・文=RETRIEVER編集部
「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)
そもそも健康的な鼻ってどんな鼻?
「犬が鼻水を垂らしていると心配になってしまいますよね。でも、実はある程度の鼻水は、元気な証拠なのです」
そう話すのは、『グラース動物病院』の小林豊和統括院長。特に大型犬の鼻は小〜中型犬に比べて鼻腔が長く、その分、鼻腔粘膜の分泌量も多いのが特徴です。
もちろん、鼻水の量があまりにも多くボタボタ垂れていたり濁っている場合は、病気の可能性があるので医師に診てもらう必要があります。元気のバロメーターとして、鼻鏡の濡れ具合を気にする人もいると思いますが、これも間違いではありません。

「鼻腔の奥にある外側鼻炎と呼ばれる器官から分泌される分泌液が、湿り気のもとなのです。分泌量が少ない時は、舌でペロッとなめて自ら濡らすこともあります」大型犬は鼻が大きく効率よく呼吸ができますが、フレンチブルドッグやパグのような短頭種は呼吸器系の鼻トラブルが起こるリスクがあります。
一方、大型犬などマズルの長い犬は、鼻腔内に腫瘍ができることがあるので注意が必要です。腫瘍ができた時にわかりやすいのは鼻水や鼻血。ただ、鼻水はアレルギー性鼻炎や感染症でも止まらなくなることもあり、素人判断は難しいところ。
いずれにしても、「何かおかしいな?」と思ったら、自己流で何とかするのは禁物。なるべく早く病院を受診し、医師の判断を仰ぐようにしましょう。
ウチのコの鼻 こんな症状には要注意
+乾燥
考えられる原因は…
✓ 発熱(感染症や炎症など)
✓ 甲状腺機能低下症
✓ 脱水
四六時中乾燥していて、体調もぐったりしている場合は、病気を疑ってみましょう。代表的なところでは、感染症や体内の炎症などによる発熱が考えられます。
また、“元気ホルモン”と呼ばれる甲状腺ホルモンか低下し甲状腺機能低下症を発症すると、毛づやが悪くなり皮膚も乾燥します。皮膚の一部である鼻も、熱中症や下痢・嘔吐などによる脱水時も、鼻がカサカサと乾燥します。
銅や亜鉛の欠乏時も皮膚炎から発症する場合がありますが、一般的なドッグフードは栄養バランスが整っているため、このような栄養不足に陥ることはあまりないでしょう。
+くしゃみ

考えられる原因は…
✓ 感染症
✓ アレルギー
✓ 異物混入
ウイルスや細菌などによる感染症(ケンネルコフや犬ジステンパーウイルス感染症など)にかかると、くしゃみをすることがあります。この場合、咳や鼻水などの症状も同時に出ることが多いので、注意してようすを見ましょう。
散歩コースに生えている雑草から花粉症にかかるケースもあり、発症するとくしゃみや涙目、結膜炎といったアレルギー症状を引き起こします。 非常にまれですが、果物の種など異物が鼻に混入してくしゃみをする場合もあります。
ただし、異物の混入は外見から判断するのは難しく、口から内視鏡を入れて初めてわかるケースもあるます。また、鼻腔内の粘膜をきれいにするために、生理的に鼻水やくしゃみをすることもあるので覚えておきましょう。
+鼻血
考えられる原因は…
✓ 歯周病
✓ 鼻腔内腫瘍
✓ 異物混入
人間とは違い、犬が病気以外で鼻血を出すことはほとんどありません。言い換えると、鼻血が出たら病気の可能性が高いということを覚えておきましょう。
代表的なのが、歯周病です。歯周病が上アゴで進行すると、細菌が歯根と鼻の間の薄い骨を溶かし、鼻腔まで侵入し、膿の混ざった鼻血を出すことがあるのです。鼻腔内腫瘍になった場合も、鼻から出血することはよくあります。
また、異物混入時に鼻水やくしゃみたけでなく、鼻血を出すケースもまれにあります。
少量の場合はなめ取ってしまうので気づきにくいですが、犬が寝ていたクッションに血がついていたことから判明するケースもあります。犬の日々の体調の変化を見落とさないようにしましょう。
+鼻水・鼻詰まり

考えられる原因は…
✓ 感染症
✓ アレルギー
✓ 冷感刺激
✓ 異物混入
鼻水の原因でまず考えられるのが感染症です。
ケンネルコフや犬ジステンパーウイルス感染症などにかかると、咳やくしゃみとともに鼻水を出します。症状が軽度の場合はサラサラした透明の鼻水ですが、重症化してくると白濁したり、黄色っぽくなることがあります。花粉やハウスダストなどによるアレルギーを発症した際も、くしゃみや鼻水を出します。
大量の鼻水から鼻が詰まり、口でハアハアと息をするケースもあるので、ツラそうな場合は、病院へ行くまでの間に応急処置として濡れタオルで鼻をそっと拭き、適度な湿り気を与えれば、鼻詰まりが和らぐでしょう。
出典:『RETRIEVER』Vol.106/覚えておきたい レトリーバーの鼻トラブル
*1 監修=小林豊和 こばやしとよかず。『グラース動物病院』統括院長。帝京科学大学元教授。日本大学大学院獣医学研究科博士課程修了。1993 年10 月に『グラース動物病院』を設立。動物に負担が少ない腹腔鏡手術など、新たな分野に挑戦。人と動物のよりよい共存をサポートしている。著書に『犬の看取りガイド』(エクスナレッジ)他、多数。