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2025.10.09

予後を大きく左右するがんの早期発見~そのためにできること~《RETRIEVER + POCHI archive035》

予後を大きく左右するがんの早期発見~そのためにできること~《RETRIEVER + POCHI archive035》

写真=恩田拓治
構成・文=RETRIEVER編集部

「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)

がんのステージが 早いほど予後は良好に

がんにはさまざまな種類がありますが、基本的には、それぞれのがんの進行状態を示す「ステージ」と、悪性度を表す「グレード」があります。ステージが低いものほど早期ということができ、『Team Hope』代表理事の上條圭司先生は、早期に発見し、治療することが大切だと話します。「早い段階でがんを発見できると、手術で取ったり、取った後に抗がん剤を使うことでがんを抑えたりすることができるようになり、犬が穏やかな状態でいられる時間を延ばすことになります。対してステージが進むほど、カラダの状態も悪くなり、治療にもマイナスに影響してしまいます。早期発見のポイントは、症状が出る前の、犬が元気な状態で見つけることなのです」

がんのための健康診断はX線検査と超音波検査も大事

がんの早期発見に大きく貢献する健康診断。「健康診断の目的は健康状態のチェックであり、その中に腫瘍がないかどうかというのも当然含まれています。その上で大切にしてもらいたいのが、がんをより意識して行う“がん検診”という考え方です。『がんを探していく』という目的を主治医に伝えた上で健康診断をすると、血液検査に加え、レントゲン(X線検査)とエコー(超音波検査)が必ず実施されるはずです。レントゲンで肺に影はないか、お腹のエコーで脾臓や肝臓にしこりがないかどうかがわかります。特に沈黙の臓器といわれる肝臓や脾臓は、血液検査に表れる前に、超音波検査によって見つかることがあります。特に大型犬は脾臓の血管肉腫が多いですが、脾臓のしこりが破れそうな状況でも、犬は元気で、血液検査上でも貧血もなく、白血球も上がっていないというのはあり得るのです。大切なことは、“がんを探すための健康診断”という意識を持つことなのです。

普段の生活のなかで気づけることも多い

「がんがわかるきっかけとして、飼い主さんが見つけて来院されること多いです」と上條先生。乳腺腫瘍や肛門周囲腺腫、肥満細胞腫、また口の中や目のできものなど、触れたり目視でわかるものは飼い主でも見つけられます。歯磨きやブラッシングなどのケアや、コミュニケーションで行うスキンシップは、がんの早期発見のためにも大切なことです。症状が出てからでは早期発見とはなりません。普段から犬と触れ合いよく観察し、人と同じように健康診断をすることをお勧めします」

目標を定め、そこに向けた治療をスタートするために欠かせないインフォームド・コンセント

「インフォームド・コンセント」とは、検査前に伴うリスクや検査の目的、また診断が下りた際に、獣医師によって行われる「説明」と、それを理解した上で飼い主がする「同意」のことなどを表します。がんの治療方法は、目標に向けて治療を組み立て、スタートさせます。 そのためにまずは、インフォームド・コンセントをしっかり行い、治療方針を決めることが大切なのです。その上で、「飼い主さんは、がんの診断そのものや犬の余命に、ショックを受けると思います。でも、余命はあくまでデータの平均値であり、それより長く生きる犬も多いのです。また、犬は自分ががんであることはわかりませんよね。恐れや悲しみなど、人間のがんに対するイメージを犬に向けてしまわずに、治療に前向きになってほしいと思います」

その1がんの種類

がんの種類は何であり、どんな性質を持ったがんであるか。ステージやグレードの確認も忘れずに。

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その2予後について

治療の選択にも関係してくることなので、 最初に余命を含めた予後を確認しておくことは大切だ。

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その3治療方法

治療方法は複数になることが多いので、すべての選択肢を聞いておく。獣医師の勧める治療は特にしっかり頭に入れて。

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その4治療期間

入院の有無や通院の頻度、期間など、治療にどれくらいの時間を要するのか確認。

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その5リスク

治療に伴うリスクの他、投薬に伴う副作用や合併症なども確認しておくこと。

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その6治療費

高額となることも多いがんの治療。治療 費は事前に確認を。これらを経て、治療を選択していく。

出典:『RETRIEVER』vol.115/「予後を大きく左右する早期発見」

*1 監修=上條圭司先生 かみじょうけいじ。獣医師「ゼファー動物病院」グループ代表、ペットの予防医療のも積極的な治療 大切を啓発することを目的 効果への期待が に発足されたプロジェクト「Team HOPE」代表理事。「Team HOPE」では、全国2749(2024年1月11日地点) の賛同動物病院とともにペットの健康診断を推進。早期発見・早期治療の重要性を伝える情報を発信している。 https: //teamhope-f.jp/