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2025.11.17
なぜか大型犬に多い手術必須の!?「前十字靭帯」損傷を知る -知識編- 《RETRIEVER + POCHI archive040》
イラスト=macco
構成・文=RETRIEVER編集部
「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)
前十字靱帯損傷について知識があれば安心
何よりも散歩が大好きで、元気にボールを追いかけたり、ドッグランで疾走したり…そんな活発さが喜びの犬達にとって、そして飼い主にとっても、足の疾患で手術をするなんて思いもよらないことだと思います。でも、実際には多くの犬達が経験している「前十字靭帯損傷」。飼っている犬がこの疾患を経験した読者アンケート(回答数40)によると①発症年齢5歳以下が20人、6歳が9人、7歳が4人、8・9・10歳が各2人、13歳以上が1人。②両足とも発症が8人。③手術した人31人。この数字を見るだけでも、思いのほか若い年齢で経験していることがわかります。
前十字靱帯損傷ってどんな病気?
前十字靭帯というのは、ヒザの後ろから前に走っていて、スネの骨を上下からつないで支えるのが主な役割です。人間はスポーツや転倒によるケガで切ることがほとんどですが、犬の場合、日常生活中に切れてしまいます。なぜ切れるのか、原因究明には至ってなく、どの犬種にも起こりますが、特に大型犬に多い疾患です。完全に損傷する前から徴候や症状が出ます。動き始めや運動後に足をつきづらそうにしたり、ケンケンで歩いたりするので、家族もおかしいと気づくはずです。その時点で整形外科専門医のいる動物病院で診てもらえれば早めに診断がつくでしょう。目安としては1カ月の間で、歩行の際に何回も足を上げたり、かばうという不調を繰り返したら、一度診察することをオススメします。
前十字靱帯損傷の症状
前十字靱帯損傷はヒザ内部の疾患です。当然、外から目で確認はできなませんが、後ろ足をかばって歩くなど歩き方がおかしかったり、ヒザが腫れていたりしたらこの疾患が疑われます。
✔ 動き出しが鈍い
✔ 足をかばって歩く
✔ 足を上げたまま (ケンケンで)歩く
✔ 足を痛そうにする
靱帯が切れたからといって、必ずしも悲鳴を上げるような痛みがあるわけではありません。特に初期は、昨日は足をかばっていたけど、今日は大丈夫のように症状を断続的に繰り返すこともあります。もちろん、患部を触ってみて、いつもと違う反応を示したら要注意です。犬は我慢して動いていることもあるので、気づいたら早めに受診をしましょう。
前十字靱帯損傷の検査
犬の症状から前十字靱帯損傷を疑う場合、整形外科の獣医師がいる動物病院(クリニック、二次診療 病院、ともに検査設備がある病院)では、まず以下の検査を必要に応じ組み合わせて行い診断を受けましょう。
1)触診検査
患部であるヒザ関節など足の状態を触診することで、前十字靱帯が切れた結果、スネの骨が異常な方向に動かないか、ヒザ関節が腫れていないか、曲げ伸ばしで痛がらないかなど外側から細かくチェックします。ヒザ以外の場所の見落としがないよう一通り確認します。
2)オスワリテスト
犬を座らせた時、健康な状態なら、足の全関節を折り曲げた正常な座り方をしますが、前十字靱帯損傷の場合、ヒザをかばうような座り方をします。損傷したヒザが曲げられずに足を横に流して座るいわゆる「お姉さん座り」や、あぐらをかいたような座り方など。
3)レントゲン検査
目視や触診ではできない関節内部のようすをレントゲンで検査します。患部=ヒザの位置や関節の状況をレントゲン撮影して診断。レントゲンに前十字靱帯は映らないので、損傷によって確認できるスネの骨の位置や脂肪変位の状態などにより確認します。
4)関節液検査
ヒザの中にある関節液を採取して検査。前十字靱帯が損傷したことにより、関節液がヒザの中で増える(いわゆるヒザに水がたまる状態)をチェックします。しかし、時には別の病気でヒザに水がたまっていることがあるので、他の疾患と識別する目的でこの検査を行いましょう。
5)関節鏡検査
ヒザを少しだけ切開し、その内部を胃カメラのような内視鏡で検査。レントゲンなどでもクリアにならない所見、前十字靱帯そのものの状態が鮮明にわかるので診断に役立つ最終検査として実施します。触診やレントゲンだけで診断をつけ切れない場合にも役立ちます。
前十字靱帯損傷の手術
前十字靱帯が完全に切れたら、その治療として外科的手術を行うことで足の機能回復を目指します。獣医療も日進月歩ですが、現時点で、欧米で広く推奨されている手術法(TPLO)が、日本でも受けられるようになっていますが、施術者の力量が求められる手術でもあります。
出典:vol.114「なぜかレトに多い 手術必須の!? 「前十字靭帯」損傷を知る」
*1 監修=中條哲也。なかじょうてつや。整形外科および神経外科の二次医療に特化した動物病院 グループ『ONE for Animals』の『ONE どうぶつ整形外科センター東京』院長。 麻布大学在学中から整形外科の獣医師を目指し、その後、複数の研究施設や病院で研さんを積み、2020年から現職。整形外科分野を中心に論文や研究 の発表多数。臨床の整形外科医として、日々、犬や猫達の手術を行っている。「痛みなく歩けるようになるなどの成果が得られることで、患者さんやご家 族が喜んでくれるのがうれしい」。 https://tokyo.one-for-animals.co.jp/


