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2020.03.04

犬に嬉しいプロバイオティクス。プレバイオティクス、シンバイオティクスの違いって?

犬のお腹の健康を意識したドッグフードやサプリメントなどのほか、デンタルケア用品やデンタルガム、免疫系のお話の中でも登場することが多い「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」という言葉。
なんとなく、「腸内細菌に関係がある」ということは分かっていても、それぞれの言葉の違いや働きの差については聞き流してしまいがちです。

今回は、犬たちと犬の腸内細菌の健康に役立つ「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」の違いについてご紹介します。

犬に嬉しいプロバイオティクスとは?

プロバイオティクスは、もともとは「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物という意味だったそうです。つまり、犬の腸内細菌のバランスを整え、健康に役立つ、生きた微生物です。

食品やドッグフードなどに使用される「プロバイオティクス」は、さらに安全であること、腸内フローラを構成する細菌であること、胃酸などの消化液にも耐えて腸に生きたまま届くこと、腸内で増殖すること、ドッグフードの中などで有効な菌の数を維持できることの条件があります。いかに生きた状態のまま、有用菌を腸内に届けられるかがポイントになっているんですね。
たとえば、犬の病気の治療などのために抗生物質を必要としていて、定期的に抗生物質を与えることで腸内細菌が減ってしまっていたり、下痢などが続いて腸内環境が大きく崩れている場合に、プロバイオティクスで腸内細菌を補うのがいいと思います。

食品としては、納豆菌を含む納豆や生きた菌が含まれるヨーグルトなどの発酵食品がこれに該当します。

便秘や下痢などのお腹のトラブルはもちろん、腸内環境を整えることで免疫機能を活性化したり、アレルギーの対策として役に立ちます。犬のフードではビフィズス菌やラクトバチルス・アシドフィルス発酵生成物(乾燥)などが使用されることが多いです。

プレバイオティクスとは?

プロバイオティクスとよく似た名前をしているプレバイオティクス。こちらは、「大腸の特定の細菌を活性化したり、増殖させることで宿主に有益に働く食品成分と定義されています。
プレバイオティクスの場合は、もともと存在している犬の腸内細菌たちがより元気になったり、増殖させるために必要な、いわゆる「腸内細菌のエサ」というわけですね。下痢や便秘のときよりも、毎日の「予防」や「腸の健康維持」という目的で持続的に摂取するのがオススメです。

ドッグフードに使用されているものとしては、ドッグフードや犬のオヤツでおなじみのオリゴ糖の仲間や水溶性食物繊維などが良くプレバイオティクスとして使用されています。

シンバイオティクスとは?

人間用の健康食品や乳製品などでもよく聞くシンバイオティクス。こちらは、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせることで体調を整えるものです。最近では、シンバイオティクスを謳ったヨーグルトなどが手軽に手に入りますね。
具体的には、生きて活性を失っていないビフィズス菌や乳酸菌と、オリゴ糖や食物繊維を同時に摂取することで、犬の体内で有用菌がより活性化するというものです。
この働きはもちろん犬たちにとっても嬉しい働きですので、ちょっとしたオヤツなどとしてシンバイオティクスが使われたヨーグルトなどを与えてみるのも良いかもしれませんね。

■ 注目が集まっている腸内細菌のホットワードについて

腸内細菌に関する研究の中で、ドッグフードにも応用されていきそうなもののひとつが、腸内細菌の生産物のひとつ、短鎖脂肪酸に関する研究です。短鎖脂肪酸は、犬や人間の腸の中で特定の腸内細菌が食物繊維などを発酵させる過程で作られる物質です。

これまでにも「腸上皮の栄養源」「肝臓などの代謝」「結腸の運動性」「腸内pHを下げ、病気の元になる菌を抑制する」などの働きが報告されていましたが、今注目されているのは「腸の中の炎症を抑える」可能性についてです。

さらに、今後注目を集めていきそうな話題として、バイオジェニックス=ポストバイオティクスという考え方があります。これは、乳酸菌が作り出した成分など、腸内フローラを介さず身体に直接働きかけたり、腸内フローラのバランスが正常になるように働きかける成分のことです。今までは腸内細菌をサポートしたり、エサとなったりすることで腸内環境を整えるものが主流でしたが、バイオジェニックスは腸内細菌の有無にかかわらないことがポイントです。一部の死菌もバイオジェニックスに含まれて活用されていくことになりそうです。
ウンチの状態が安定しない犬たちのためのドッグフードが、プロバイオティクス・プレバイオティクス・シンバイオティクス、そしてバイオジェニックスによってさらに進歩していくのかもしれませんね。

プロバイオティクスなどが有効活用されているアイテム

参考文献

*1 五十嵐 寛高「犬や猫における腸内細菌叢と消化器疾患」『ペット栄養学会誌』2018 年 21 巻 2 号