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2022.02.24

【#大きな犬と】ペットロスカウンセラーに聞く ~別れのあとの心の向き合い方~

【#大きな犬と】ペットロスカウンセラーに聞く ~別れのあとの心の向き合い方~

同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や遊びや食事といった暮らしの情報を集めていきます。(POCHI編集チーム・大きい犬班)



今回のお役立ち情報大きな犬との別れ

「ペットロスに関する知識があると、大きな犬を失って苦しむ状態を軽する手助けになります」と語る、カウンセラーで獣医師でもある宮下ひろこ先生に話をうかがいます。
自分自身や身近な人が大きな犬を失ったときの望ましい対応について、心得ておきたいものです。

悲しみ方は人それぞれ

もとは動物病院で獣医師として飼い主さんや大きな犬とかかわり、現在はカウンセラーとして活動している、宮下ひろこさん。ご自身も、チンチラ猫の14歳のティキちゃんを失ったあとに、一般的に“ペットロス”と呼ばれる状態に陥りました。

「ティキの最期の瞬間を思い出すと、胸が苦しくなる数年間でした。当時、ちょうどペットロスに関する勉強をしていたのですが、つらいときは我慢せずに涙を流すのが重要だという知識を持っていても、誰にも話さず黙々と仕事や勉強を続けていましたね。悲しみ方は人それぞれなのだと、自分の経験から知りました」

ティキちゃんが旅立った翌日、宮下さんの父親はフードボウルやキャットベッドなどすべてを片づけ、まるでティキちゃんが存在していなかったかのように過ごすようになったとも。

「父は、現実逃避をしたのかもしれません。苦しみから立ち直れない恐れがあるから、ティキのことを思い出さないようにしようと。家族の前で毅然と振舞いたいというプライドによる行動だった可能性もあります。
実際には、いとおしい存在とのお別れのあと、涙を流せる人はとことん泣くほうが、気持ちに整理がついて前に進みやすくなると言われます。心のバランスを崩したくないと頑張ったり無理をしたりせず、悲しいときはちゃんと悲しんでくださいね」

もし同居犬がいた場合、悲しみを共有してもよいでしょう。しばらくは、残った者同士で悲しみの共振が起きることもあると、宮下さんはカウンセリングをとおして知ったと言います。

悲しみを癒す花々を前に

悲しみを癒す花々を前に

セレモニーはしたほうがいい

宮下さんは、大きな犬が旅立ったあとにはセレモニーをしたほうがよいと語ります。
「人のお葬式が世界中にあるのも同じ理由で、ちゃんとお別れの儀式をしたほうが、残された者の心の整理がつきやすいものです。
旅立った大きな犬の身体を、まずはブラッシングするなどしてきれいにしてあげたり、花を買ってきて飾ったりしたあとに、可能であればペットセレモニーホールで葬儀をするのをおすすめします」

宮下さんは、ティキちゃんの被毛をハサミでカットして宝石箱に入れてあるそうです。「遺骨の入った骨壺は、まだ実家にあります。ペット霊園に埋葬する方もいるでしょうし、急がずゆっくり、納得のいく選択をされればよいと思います」

大型犬はサイズが大きいぶん視覚的な存在感も大きく、病気や老齢になれば介護も大変です。なので、飼い主さんが大きな犬を見送ったあとは、ぽかんと大きな穴が空いたような感覚に陥りやすいのではないでしょうか。
「そのような方もぜひ、大きな犬と過ごした部屋の一角に“思い出コーナー”を作り、写真や花を飾ってみてください。毎日そこで大きな犬のことを“想う時間”を過ごすのも、悲しみを癒す一助になるはずです」

部屋の一角に設けた場所で、うちの子を想う

部屋の一角に設けた場所で、うちの子を想う

SNSから距離を置くのも対処法

大型犬は小型犬に比べて多産。また、大型犬の場合はブリーダーから直接迎え入れる飼い主さんも多く、きょうだい犬などとSNSでつながっているケースもあるでしょう。
「SNSで元気な同胎犬の近況を見ると、『自分の育て方が悪かったのかも』『病気もせず過ごしていて、うらやましい』と感じて気持ちが沈んでしまったり、自分の選択を責める方も少なくありません。もし、きょうだい犬や犬仲間の様子を知ってつらくなってしまうなら、SNSなどと距離を取ってください。

そっとしておいてもらいたい、ひとりになりたいと感じているのであれば、しばらく、愛する犬が亡くなった事実を誰にも知らせずにいてもよいでしょう。自分の気持ちに正直になって外界の情報をシャットダウンすることも、ときには必要です」

SNSから距離を置いて、ろうそくやお線香を灯して過ごすのもよい

SNSから距離を置いて、ろうそくやお線香を灯して過ごすのもよい

手紙やアルバムで思い出を振り返る

愛する存在を失った事実から目を背け続けると、悲しみが心に堆積してしまい、不眠や食欲不振やうつ的な状態などが続く”ペットロス症候群”と呼ばれる状態が長引くことが知られています。
「そうならないために、旅立った大きな犬に手紙を書いたり、写真を見られる余裕があるならアルバムづくりなどをするのをおすすめしています。ご家族と一緒に、写真を見ながら思い出を語り合うのもよいですね」

実際に宮下さんも飼い主さんから、セレモニーホールでの待ち時間に手紙を書くことで、大きな犬に対する感謝の気持ちが湧いてきたり、あたたかい気持ちになったと聞くことも多いそうです。

また、宮下さんが飼い主さんとのカウンセリングで感じたのは、長期間引きこもってしまうと、食欲不振や元気のない状態が長引き、さらにはうつ的な状態に陥りやすくもなること。
「毎日考えるのが愛する犬のことだけになるからだと思います。数日間は外出せず悲しみ尽くすのは問題ありません。けれども、しばらく経ったら、朝は顔を洗って着替えて朝日を浴び、仕事や地域活動などに出かけていくのが理想的です。社会とのつながりを維持するのは、ペットロスへの対処法としてとても重要だと感じます」

アルバムづくりなど没頭できる作業も心の回復に有効

アルバムづくりなど没頭できる作業も心の回復に有効

まわりの人はどう接すればよい?

きょうだい犬や“犬友”の飼い主さんが、大きな犬を失って悲しみに暮れているとき、どう対応するのが好ましいのでしょうか。力になれるような、かける言葉はあるのでしょうか。
「かつての自分もそうだった気がしますが、つい、自分が愛する存在を失ったときの体験を話してしまいがちですよね。また、人によっては、相手を少しでも元気づけられる言葉を探そうとするかもしれません。
けれども、こうしたシーンで大切なのは、なにを話すかではなく、なにをどう聞くか。

相手と一緒に悲しむという視点で、ただただ“聴く”のです。その際に『突然すぎて受け止められない』とか『自宅で看取ってあげたかったのに』といった気持ちが語られた場合は、『そうだよね、受け止められないよね』と、相手の言葉を受け止めて繰り返します。これをカウンセリング用語では“傾聴”と呼ぶのですが、相手の言葉に耳だけでなく心も傾けながら、受容と共感を持って聴くようにするのが最良です」

相手の飼い主さんが思い出を語る場合は、「〇〇ちゃんは、こんな子だったよね」「〇〇くんと、あれは楽しかったな」と、一緒にその子とのエピソードを話すのもよいと言われます。

また、親しい間柄であれば「どうしてる?」と相手の状況を気にかけながらメッセージを送っていれば、気持ちを共有できる相手がいる安心感を得てもらえるでしょう。

遺骨をカプセルに入れられるキーホルダーなどを携えての外出も

遺骨をカプセルに入れられるキーホルダーなどを携えての外出も

カウンセラーや“語り合う会”も利用して

宮下さんは2017年に“ペットロスセルフケア サポートの会”を立ち上げました。これは、愛する犬や猫との別れを経験した人が集まって語り合う会です(新型コロナ禍では、オンライン開催)。
「安心して話せる人が身近にいない場合、カウンセラーを頼ったり、このような“お話会”に参加したりといった選択肢もあります。
“お話会”の参加者のひとりは『私は引きずっている期間が長すぎでは?』と心配されていましたが、ご自分と同じように悩んでいる参加者の話を聞いて共感されるとともに安堵されていました。
なお、“お話会”に参加する際は、悲しみ方や死生観は参加者同士で違いがあって当然で、自分が共有できそうにない経験や価値観は聞き流す耳を持つのも大切です」

カウンセリングは、全てがカウンセラーと自分だけの時間になり、ほかの方の体験談に心が騒ぐことはありません。
自分に合うと思うほうを、必要に応じて利用するのも、悲しみから立ち直る一助になるでしょう。

大きな犬との別れに関する知識をあらかじめ持っておくだけでも、その日を迎えてからの助けになるはずです。

ライター:臼井 京音

■ 宮下ひろこさん

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動物病院専任カウンセラー/獣医師
「ペットロスセルフケア☆サポートの会」主催。 人と動物の心のつながりを大切にしたいという思いから、ペットロスカウンセリングを始める。 現在はオンラインを中心に、犬や猫を愛する人の心のサポートを行っている。

※ペットロスカウンセリングに関しては:アシストヒューマンリレーションズ



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