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2025.05.29

レア犬種や推し犬種を見にドッグショーへ!

レア犬種や推し犬種を見にドッグショーへ!

2025年3月に東京ビッグサイトで開催された「JKCサクラ・アニュアル・ショー2025」では、アジア最大規模のドッグショーとして約2000頭の犬が出陳しました。単なる見た目だけではなく、犬種本来の魅力を最大限に生かすために整えられた犬たちの様子、さらに、なかなか見られないレア犬種まで見学できる、魅力的なドッグショーの様子をご紹介します。(POCHI 編集チーム)

今回のお役立ち情報ドッグショー

2025年3月29・30日に開催された、JKCサクラ・アニュアル・ショー2025 に潜入取材。インスタなどのSNSや犬図鑑でしか見たことのないレア犬種や憧れの犬種に会えるショー会場は、心ときめく異空間です。犬種の豆知識も解説しつつ、ドッグショーの華麗なるステージをご案内します。

美しく整えられた犬種が勢ぞろい

ドッグショーは、単なるビューティーコンテストではありません。
それぞれの犬種の姿形や性質や能力を後世に受け継ぐために、各犬種の理想像に近い犬を評価をする品評会です。審査は、犬種ごとに理想像を定めた文書である“犬種標準(スタンダード)”に基づいて行われます。

ハンドラーと息もぴったりな姿も見どころのひとつ

ハンドラーと息もぴったりな姿も見どころのひとつ

3月29・30日、国際畜犬連盟(FCI)からアジア地域最大規模のドッグショーとして承認されている“JKCサクラ・アニュアル・ショー2025”が東京ビッグサイトで開催され、約2000頭の犬が出陳しました。
犬種本来の魅力を最大限に生かせるように整えられた犬たちを見られるだけで、ドッグショーは非日常の空間と言えるでしょう。
ドッグショーのルールや豆知識に関しては、過去の記事をご参照ください。

ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダール。こうした複数での歩様審査を見るのも楽しい

ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダール。こうした複数での歩様審査を見るのも楽しい

レア犬種から目が離せない

大規模なドッグショーでは、街中ではお目にかかれない珍しい犬種を見られるのが醍醐味のひとつ。

「審査進行表」を手に、9つあるリング(審査が行われるスペース)を筆者はめぐりました。

最初にご紹介するのは、1頭だけの出陳だったチェコスロバキアン・ウルフドッグ。
名前が示すとおり、1955年に旧チェコスロバキアで行われた、ジャーマン・シェパード・ドッグと狼とを交配させた実験をもとに誕生した犬種です。野性味あふれる外貌と機敏な動きから、目が離せませんでした。

チェコスロバキアン・ウルフドッグ。審査が終わると、充足した表情でピョンと飛び跳ねていて印象的

チェコスロバキアン・ウルフドッグ。審査が終わると、充足した表情でピョンと飛び跳ねていて印象的

リングサイドで血縁犬の応援に来ていたのは、ポリッシュ・ローランド・シープドッグ。
イギリスでポピュラーなビアデッド・コリーの祖先犬の一種でもある、ポーランド原産の古い犬種です。

体高は42~50cmと、ビアデッド・コリーよりも少し小型の、ポリッシュ・ローランド・シープドッグ

体高は42~50cmと、ビアデッド・コリーよりも少し小型の、ポリッシュ・ローランド・シープドッグ

筆者がぱっと見てセント・バーナードかと思いきや、審査進行表でピレニアン・マスティフだと知った超大型犬も、注目を集めていました。
狼や熊と対峙する役割を担う犬種だけあり、とても大きくがっしりとしています。絶滅寸前から守られた、現在も希少な犬種です。

ピレニアン・マスティフは体高が大きいほど高評価を得られます

ピレニアン・マスティフは体高が大きいほど高評価を得られます

レア犬種として最後に紹介するのは、2024年に初めてJKCに1頭が登録されたフィニッシュ・ラポニアン・ドッグ。
原産国のフィンランドでは近年、家庭犬としても人気が出始めているそうですが、もとはトナカイの飼育に使われていた牧畜犬です。すべての毛色が許容されているという被毛は、寒い地域の犬種だけありモフモフで、その風貌から家庭犬として愛される理由もうなずけます。

フィニッシュ・ラポニアン・ドッグ。出陳前も愛らしい外観から人目をひいていました

フィニッシュ・ラポニアン・ドッグ。出陳前も愛らしい外観から人目をひいていました

憧れの大きな犬種を間近で見学

ドッグショーの楽しみといえば、自分では家族に迎えるのが困難だけれど憧れている、大きな犬たちに会えることでしょう。

世界最大級の犬種、グレート・デーンも、間近で見ると迫力満点。
この犬種は、毛色により3つの異なったバラエティーで繁殖されいるため、審査も分けられています。今回、フォーン、ブリンドルで13頭、ブラック、ハールクインで1頭の出陳があり、ブルーは1頭もいませんでした。

グレート・デーンは友好的でやさしい性格が重視されます。写真右の毛色はホワイトにブラックの斑があるハールクイン

グレート・デーンは友好的でやさしい性格が重視されます。写真右の毛色はホワイトにブラックの斑があるハールクイン

グレート・デーン同様に筋肉質で犬本来の姿形の美しさをはっきり感じられたのは、ファラオ・ハウンド。
古代エジプトではガゼルの狩猟用に、フェニキア商人に連れられて渡ったマルタ島ではウサギ狩りに使われていた犬種で、力強さと高貴さを感じさせます。

気品漂うファラオ・ハウンドの歩様審査の様子。触審では、歯並びや骨格構成や被毛の質などをチェック

気品漂うファラオ・ハウンドの歩様審査の様子。触審では、歯並びや骨格構成や被毛の質などをチェック

かつてアニメの主人公として人気を博したグレート・ピレニーズも、観客の視線を釘付けに。
中世には城の番犬としても活躍し、ルイ14世も愛育したというだけあり、優雅な雰囲気をたたえていました。

大きなグレート・ピレニーズの後方には、ミニチュア・ダックスフンドの姿が。その対照的な光景もドッグショーならでは

大きなグレート・ピレニーズの後方には、ミニチュア・ダックスフンドの姿が。その対照的な光景もドッグショーならでは

グレート・ピレニーズと同程度のサイズで、平均体重はオス約68㎏、メス約54㎏のニューファンドランドも、豊かな被毛をなびかせながらリングを堂々と歩いていました。
水難救助犬や重荷を引く仕事をまかさせていただけあり、穏やかでやさしさに満ちた表情も大きな魅力です。

ニューファンドランドの毛色は、ブラック、ブラウン、ホワイト&ブラックの3種類

ニューファンドランドの毛色は、ブラック、ブラウン、ホワイト&ブラックの3種類

見慣れた小型犬種の大型版も見られる

身近な人気犬種の大型バージョンといえる、スタンダード・プードルとジャイアント・シュナウザーも、犬種特性を引き出すべくショー用に美しく整えられて人々の視線を集めていました。

ミディアム・プードルを小型に改良したのが、おなじみトイ・プードルで、大型化したのがスタンダード・プードルです。
スタンダード・シュナウザーを小型化したのがミニチュア・シュナウザー、大型化したのがジャイアント・シュナウザーです。

スタンダード・プードルは、近年新しく認められたスカンジナビアン・クリップをした犬が、以前より増えた印象でした。そもそもドッグショーで以前からよく見られるコンチネンタル・クリップは、水猟犬として作業していたスタンダード・プードルの内臓の保温と泳ぎやすさを追求して生まれたスタイル。どちらのスタイルも、犬種本来の機能美を際立たせているのは間違いありません。

左がスカンジナビアン・クリップで、右がコンチネンタル・クリップ

左がスカンジナビアン・クリップで、右がコンチネンタル・クリップ

ジャイアント・シュナウザーの体重は、35~47㎏ほど。ドイツ南部地方で家畜を追い立てる仕事をしていましたが、護衛犬などとしても活躍しました。現在は警察犬、牧畜犬としてもその頭脳と運動神経の良さを発揮しています。
ショードッグで出陳される場合、ブラックの毛色が多いようです。

シュナウザーとは、ドイツ語で口ひげの意味。その名のとおり、立派なひげや眉毛が特徴

シュナウザーとは、ドイツ語で口ひげの意味。その名のとおり、立派なひげや眉毛が特徴

リングの外の犬たちの姿もほほえましい

観覧席やドッグショーの控えスペースであるパドックをちらりと見るのも、楽しいものです。
出陳前はブリーダーさんやハンドラーさんも忙しいため、パドックの近くの通路から静かに、ヘアセットなどをしてもらっている犬たちを眺めるのがおすすめです。どの犬も自身の晴れ舞台を前に誇らしげな表情に見えるのは、気のせいではないでしょう。

ご満悦顔のホワイト・スイス・シェパード・ドッグとチャウ・チャウ(右)

ご満悦顔のホワイト・スイス・シェパード・ドッグとチャウ・チャウ(右)

ドッグショーから引退したという犬や、同じ犬舎出身だという犬も、お手入れグッズ、フードやおやつ、リードといった犬グッズの販売ブースでのショッピングを楽しんでいたりします。もうショーには出ないため、どの犬もリラックスした表情。

ドッグショーを引退したというレオンベルガー(左)。アフガン・ハウンド(右)は、普段の装いで

ドッグショーを引退したというレオンベルガー(左)。アフガン・ハウンド(右)は、普段の装いで

今回、延べ135犬種、約3500頭の犬が出場したJKCサクラ・アニュアル・ドッグショー2025。来年はまた別の珍しい犬種なども紹介したいと思いますので、お楽しみに!

ジャパンケネルクラブ(JKC)には、国際畜犬連盟(FCI)により公認された359犬種のうち2024年12月現在、209犬種が登録されています。
単犬種(1犬種のみ)から全犬種まで、ドッグショー(展覧会)の規模はさまざま。JKCのホームページで、お目当ての犬種や規模のドッグショーを探して、ぜひ訪れてみてください。

出番待ちのサモエド(左)は「応援してくれている仲間もいるし、ハンドラーと一緒にドッグショー楽しむぞ」とでも言っているかのよう

出番待ちのサモエド(左)は「応援してくれている仲間もいるし、ハンドラーと一緒にドッグショー楽しむぞ」とでも言っているかのよう

オーストラリアン・シェパード

オーストラリアン・シェパード

セント・バーナード(ショートヘアード)(左)、キースホンド(右)

セント・バーナード(ショートヘアード)(左)、キースホンド(右)

オールド・イングリッシュ・シープドッグ(上)、グレート・デン(下)

オールド・イングリッシュ・シープドッグ(上)、グレート・デン(下)

参考文献:

*1 ジャパンケネルクラブ『全犬種標準書』(JKC)