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2025.09.10

【#大きな犬と】老犬の介護は少しの工夫で簡単&負担軽減

【#大きな犬と】老犬の介護は少しの工夫で簡単&負担軽減

同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)



今回のお役立ち情報犬の介護

老犬介護のスペシャリスト、ペットケアマネージャーとして活躍する平端弘美さんに、正しいシニアケアの方法や工夫ポイントを教えていただきました。
うちの子の介護生活にぜひお役立ててください!

備えて安心!大きな犬の介護

大きな犬は体が重いので、老犬介護はなかなか大変です。飼い主さんも大きな犬も、お互いラクになるテクニックを身につけたいものです。
そこで今回は、犬の介護のスペシャリストである平端弘美さんに、シニアケアの工夫ポイントやコツを教えていただきました。

「少しでも健康寿命を延ばしてあげられるように、シニア期以降も、体に負担がかからない程度の運動<過去記事【#プロフェッショナル】自宅プチ筋トレとエクササイズで健やかシニア犬生活を実現!>を続けてあげてくださいね。
刺激が少ないと認知症リスクもアップするので、脳トレにも取り組ませてあげましょう。
介護生活になっても、飼い主さんのゆとりある表情や笑顔で犬たちがとても安心できることも、ぜひ知っておいてほしいと思います」と、平端さんは語ります。

11歳のフラットコーテッド・レトリーバーのシュガーちゃんママは、平端さんに教わったことをさっそく練習。本格的な介護生活が始まる前に準備しておくことも大切です

11歳のフラットコーテッド・レトリーバーのシュガーちゃんママは、平端さんに教わったことをさっそく練習。本格的な介護生活が始まる前に準備しておくことも大切です

仰向けNG!寝返りテクニック

大きな犬の介護で平端さんがぜひ飼い主さんに覚えてほしいことが、正しく寝返りをさせる方法。
「NGなのは、犬の前足と後ろ足を飼い主さんが握るなどして、そのまま仰向けにゴロンとひっくり返すような感じで寝返りをさせること。お腹を上にすると内臓が動きやすくなりますし、シニア犬は内臓を支える筋肉が弱っていて、胃捻転などになる恐れがあるからです。心臓病やヘルニアの子、内臓腫瘍がある子なども仰向け姿勢は要注意です。
寝返りは、伏せやお座りの姿勢からさせてくださいね」

■伏せバージョン

まずは犬の後肢をお腹の下にたたむようにします。
それから、前肢の下から飼い主さんの手を入れ、上部からも手を添えて、前肢を抱えて伏せの姿勢を作ります。
その後、前肢と後肢の位置を、飼い主さんの手で反対側に変えて、寝返りをさせます。



■おすわりバージョン

大きな犬の身体を起こしておすわりをさせます。
次に、飼い主さんが犬に覆いかぶさるようにしながら、片手で後肢を持ちます。その手を放さず、もう片方の手で前肢も持ち、後肢と両方同時に自分の手元の方へ引いて寝返りをさせます。

目、耳、顔周り、お尻のお手入れ術

介護生活になると、トリミングサロンに行くことや自宅でのシャンプーは犬にとって負担になります。とはいえ、日常的に清潔に保ってあげたいものです。そんなときは、便利グッズを使ってササっと部分洗いをしてあげるのがおすすめ。

■目と口の洗い方

便利グッズは、100均などでも手に入るノズルがカーブしたドレッシングボトル。ボトルに水を入れたら、大きな犬の背後から包み込むようにして飼い主さんの体を添え、目と口を洗ってください。犬の前から目に何かが迫ってくると犬が怖がってしまうので、ドレッシングボトルが見えないよう後ろに回り込むのがポイントです。
水が垂れて床が濡れないように、トイレシーツや受け皿をセットすると良いでしょう。



■耳、顔周りの洗い方

100均でパック販売している三角形のメイク用スポンジも、老犬介護のお役立ちアイテムのひとつ。
スポンジを水かイヤーローションで濡らし、耳の汚れをぬぐい取ってあげます。このとき、耳垢を奥に押し込む恐れや、皮膚を傷つける恐れがある綿棒は使わないようにしてください。

メイクスポンジは柔らかい素材でできているので、鼻や口の周り、目のまわりのお手入れにも安心して使えます。
使用後は雑菌が繁殖しやすいので、必ず毎回使い捨ててください。



■お尻の洗い方

汚れがちなお尻は、水で洗い流すだけでも衛生的に保てます。ここでは、3つの穴があるドレッシングボトルが役立ちます。
お尻の下にペットシーツを敷き、水でお尻を流しながらキレイにしてあげてください。うんちが付いてしまった場合などは、洗浄用スポンジを使うのも良いでしょう。
しっぽが長毛な犬は、伸縮包帯でしっぽを巻いておけば、汚れや水の付着をガードできます。

褥瘡ができたら手作りパットで保護

寝返りをこまめに打たせたり、老犬の身体にやさしいとされる高反発マット使っていても、大きな犬は床ずれ=褥瘡(じょくそう)ができやすい傾向にあります。
褥瘡ができたら、出てくる体液をパットでキャッチしましょう。

■褥瘡パットの作り方

■ 材料:

ペットシーツ、サージカルテープ(不織布テープ)、キッチン三角コーナー用穴あきビニール袋

まず、ペットシーツと穴あきビニール袋を長方形に切ります。ペットシーツの吸収面の上にビニールを重ね、二つ折りにして正方形にします。サージカルテープでヒラヒラと開いている3面を止めて、できあがり。
パットをあてる前に、犬の褥瘡まわりの被毛をカットしておいたほうが衛生的です。手作り褥瘡パットは、褥瘡の上からサージカルテープでくっつけてください。

褥瘡パットは毎日取り換えてあげましょう

褥瘡パットは毎日取り換えてあげましょう

介護は、うちの子とのスキンシップの時間でもあります。
大変ななかでも、お互いに心をかよわせながらシニアケアをすることで、かけがえのない時間が過ごせるに違いありません。



■ 平端弘美 さん

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Hello doggie代表。JAPANペットケアマネージャー協会公認ペットケアマネージャー、ドッグリハビリトレーナー。シニア犬や老犬のケアを訪問や動物病院などで行うほか、介護予防のためのセミナーの講師としても活躍。

HP:Hello doggie




■ 文・取材:臼井京音

profile_202506.jpgドッグライター・ジャーナリストとして、20年以上にわたり世界の犬事情を取材。現在は犬専門誌『Wan』をはじめ週刊誌、Web媒体、会報誌等で情報発信を行う。以前は『愛犬の友』誌、毎日新聞の連載コラム(2009年終了)などでも執筆。著書に『うみいぬ』『室内犬の気持ちがわかる本-上手な育て方としつけ方をアドバイス!』がある。
現在は元野犬の中型犬と暮らす。歴代愛犬のノーリッチ・テリア2頭と同様にボールを追いかけることが喜びで、趣味はテニスとバレーボールと写真撮影。パリやNYで撮影し自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、ペットショップP2などのインテリアにも使用されている。

撮影協力:

*1 癒しの杜~こうご動物病院付属TAMA統合医療センター~ https://medicure.co.jp/