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2022.02.24

肥満体形の犬の飼い主が知っておきたい「ダイエットと食事」の基礎【#ペット栄養管理士】

肥満体形の犬の飼い主が知っておきたい「ダイエットと食事」の基礎【#ペット栄養管理士】

動物病院の定期検診などで獣医さんから「ちょっと体重が気になるね」「ダイエット始めましょうか」などとアドバイスされたことをきっかけに、犬の体重管理を意識し始めたという方も多いのではないでしょうか。

犬のダイエットを始めよう、と思った時に知っておきたいポイントについてペット栄養管理士がご紹介します。
また、これまでたくさんの犬の食事についてのお悩みを聞いてきたポチだからこその、ダイエットフードの選び方についてご紹介しますので、犬のダイエットを始めようと思った時に、ぜひ参考にしてみてくださいね。

犬のダイエットを始める前に。目的・理由を明確にしよう!

■犬のダイエットを始める理由を明らかにしよう

コロコロと太っている犬は可愛らしいもの。ごはんを美味しそうに食べて幸せそうにしている姿をみていると、こちらまで嬉しくなってしまいます。

でも、犬の肥満はさまざまな病気の原因になることは皆さまもご存知だと思います。
犬の肥満と関連性が高いといわれているトラブルには以下のようなものがあります。


・股関節、膝関節などのトラブル
・心臓などの循環器系のトラブル
・糖尿病のリスクが高まる
・ストルバイト、シュウ酸カルシウムなどの尿路結石


関節トラブルのようなQOL(Quality Of Life=生活の質)に影響するものから、心臓病などの命に係わる病気、継続したケアが必要になる糖尿病、ぶり返すことが多い尿路結石などさまざまです。
今は健康で元気な犬であっても肥満状態というだけで、リスクを抱えることになります。

「犬の健康を維持するため」「病気の治療のため」など、しっかりとダイエットを始める理由を整理しておくと気持ちが揺らいでしまいそうなときの支えになります。

 

■目標をしっかりと定めよう

犬のダイエットを始める時には、動物病院の獣医師さんとしっかり話し合って目標を決めておきましょう。
たとえば、病気の治療の一環として関節トラブルなどでは、体重を減らすことで関節にかかる負担を減らし、痛みなどを軽減することに繋がります。「これ以上太らせない」のか「体重を〇kgまで落とす」のか、犬の体調を確認しながら無理のない目標を設定しておくのがオススメです。

また、犬のダイエットは人間のダイエットと同じくすぐに効果が出るようなものではありません。なかなか体重が減らず、焦ってしまうこともあります。短くても半年~1年以上かけて体重の変化を観察していくような根気が必要です。
また、犬の健康のためにダイエットが必要な犬には時に厳しく「ノー!」を伝える必要がある場面があります。犬のかわいいおねだりや、ワガママ、要求吠えなどに負けてしまわないためにも、目標をしっかりと定めておくようにしましょう。

ペット栄養管理士のポイント 犬の肥満の原因

犬が肥満になってしまう原因には、飼い主に関係していることが想像以上に多いです。飼い主が犬の食事の量や内容をコントロールできていないことが多い…といってしまうと身も蓋もないのですが、「ちょっとだけなら…」とついつい甘くなっていないでしょうか。オヤツやごはんを物欲しそうにみている犬の様子を見て、かわいそうに思い、つい一口……が肥満の元になっているかもしれません。
飼い主さんにとっては辛い事実かもしれませんが、裏を返せば犬の肥満の理由を知ることで、強い決意となり体重管理をスムーズに進めることができるということでもあります。

犬は基本的に食べることが大好きですし、「最近太ってきたから痩せなくちゃ」なんて考えることはない、ということを前提として以下のポイントを改めてチェックしてみることから始めてみてください。

 

■フードの量は適切ですか?

意外と多いのが、フードの量が多すぎるというパターンです。多くのドッグフードのパッケージには給与量の目安が載っていますが、それが必ずしも「うちの子」にぴったりとは限らないのです。

まず、体重ごとに給与量の目安が記載されているドッグフードであれば、ぽっちゃり体形の現在の体重を基準にしてフードの量を決めるのではなく、理想体重に合わせた量のフードを与えるようにしてください。
そして、もう一つのポイントは、ぽっちゃり体形の犬は運動不足になっていることが多く、健康的な犬と比較しても基礎代謝、消費エネルギーが小さくなっているケースが多いです。
運動不足のため、健康的な犬よりも消費エネルギーが少なくなっていると考えると、給与量の目安よりもドッグフードの量を少なめに見積もる必要があります。
犬の代謝エネルギー計算をする時にも、健康的な体系な犬と肥満体形の犬では、基礎代謝に差があるものと考えて計算を行います。

ドッグフードの給与量の目安は、「理想体重を基準に」というポイントを押さえて調整を行ってみてくださいね。

 

■ダイエット用フードに切り替えればOKではありません。

犬のダイエットを考える時、多くの方はダイエットフードへの切り替えを検討されると思います。
このフードは適切な使い方をすれば、体重管理にとても役立つフードです。ダイエット用ドッグフードは、カロリーや脂質が低く抑えられている傾向があります。
→低カロリー、だけじゃない!低脂肪にも注目した体重管理用ドッグフード
→シニア犬の健康もサポート。低カロリー低脂肪のドッグフード

ダイエット用ドッグフードとそうではないフードを同じ量与えるなら、ダイエット用ドッグフードの方が当然摂取カロリーは減ります。犬にとっては、食べている量は変わらないけれど、摂取カロリーだけが減っているという状態になるわけです。

ただし、ダイエットフードに切り替えたからと言って、オヤツを与えてしまっては結局カロリーが上乗せされてしまいますので、ダイエットフードに切り替える場合は、1日あたりの摂取カロリー全体を減らすことでより効果的になります。

 

■オヤツの量は多すぎませんか?

次に注意したいのが、オヤツの量です。犬の可愛いおねだり攻撃や、おりこうにできた時のご褒美としてついつい与えすぎてしまっている方は多いです。

一般的に犬のオヤツは主食の給与量の10~20%を目安に与えるように、と書いてあることが多いと思います。
この書き方には注意が必要で、例えば主食となるドッグフードを100g食べている犬の場合、10%~20%となると、オヤツを大体10g~20g与えても良いと考えてしまっていないでしょうか。
脂質や炭水化物を多く含むカロリー密度が高いオヤツ、具体的には犬用ビスケットやジャーキーなど、少量でも高カロリーになってしまうものもあります。
ですから、gだけを基準として与えるのではなく、どれくらいのカロリーをなのかで選び、与える量を調整する必要があります。栄養バランスからいうと、フードのカロリーの10%~20%の範囲内に収めることができれば理想的ですが、ダイエットを行って行くうえでは1日あたりの消費カロリーに対して摂取カロリーが超えないようにすることが一番大切。でも、オヤツを与えるたびに計算していくのは現実的ではありませんよね。

しっかりと体重管理を行うのであれば、やはりオヤツはなくした方が良いケースも多いのですが、要求鳴きが止まらないケースや、イタズラに走ってしまい困っているという場合に、なるべくカロリーを抑えたものをオヤツとして与えるのも、ストレスのコントロールの観点からは必要なこともあります。

体重管理が必要な犬に与えるオヤツとしては、ダイエット用フードを数粒与える(1日ぶんの食事量からオヤツを与えた分だけ減らす)ほか、スープタイプのオヤツなら水分の比率が非常に高く、カロリーも控えめになっています。

■運動量は確保できていますか?

肥満体形の犬は運動不足になっていることが多く、肥満になると息が上がってしまったり、関節の痛みなどからさらに運動を嫌がる傾向にあるので、運動不足がどんどん積み重なって体重を増やす一因になっています。

運動不足の基準というのは難しいのですが、少なくとも犬が肥満体形になっているのであれば運動量が不足しているので、少しでも運動量を増やす工夫を行っていきましょう。
散歩を少し遠回りなルートにしたり、室内での遊びの時間を増やすなどするのも効果的です。

ダイエットのために運動量を急に増やしてしまうと犬の体の負担になりますので、少しずつ運動量を増やすようにしていきましょう。
犬が散歩や遊びを楽しいと感じてくれれば、無理なく運動量を増やすことに繋がっていきますので、犬がワクワクするようなひと工夫を取り入れてみてください。たとえば、犬がお気に入りのオモチャを散歩バッグに入れていき、公園で犬がお気に入りの遊びをしてみるのもいいですね。

おわりに

美味しいものが大好きな犬のダイエットは、人間のダイエット以上に難しく感じますが、犬のダイエットが必要な理由を明らかにして、今までのライフスタイルを見返し、対策できそうなところから少しずつ工夫を取り入れてみてください。
今回ご紹介したポイントは、それぞれを組み合わせることでより効果的になります。ぜひ、ダイエット用ドッグフードに切り替えるだけではなく、オヤツの量を減らしたり、運動量を増やすなどして、効率的にダイエットを勧めていきましょう。