• コラム
  • スタッフコラム

2023.11.01

三大栄養素は「ドッグフード選び」でも要チェック。タンパク質、脂質、炭水化物について

三大栄養素は「ドッグフード選び」でも要チェック。タンパク質、脂質、炭水化物について

飼い主にとって、犬の幸せと健康は何よりも考えたいこと。犬にとって喜びを感じ、なおかつ健康の基本になるものこそ「食事」ですよね。現代では多くの飼い主が犬の主食としてドッグフードを選択し、与えています。
様々な個性や特長を持つドッグフードが次々と登場し、「どれを選んだらよいのか分からない」と困ってしまった経験を持つ方は少なくありません。納得のいくドッグフード選びのために、犬の食の知識を付けると、悩むこともきっと少なくなります。

まずは、犬の栄養学の基礎としてドッグフードだけではなく、手作り食、オヤツなど、すべての犬の食事に共通する要素、人では「三大栄養素」と呼ばれる、タンパク質、脂質、炭水化物について、ペット栄養管理士がご紹介いたします。

三大栄養素とは?

人間の栄養学でよく知られる三大栄養素は、タンパク質、炭水化物、脂質の三つがそれに該当します(ミネラル、ビタミンを加えると五大栄養素になります)。
もちろん、犬の食事であるドッグフードの設計にも、これらのバランスを犬たちにとって最適なものとなるように、ドッグフードメーカーは計算をしたり、含まれる成分を調整し、その上で独自のものになるようそれぞれ研究を重ねています。

とはいえ、犬それぞれに性格や見た目の個性があるように、適した栄養バランスも微妙に異なります。同じ両親から生まれた兄弟犬であっても、一方にとって最高のドッグフードが、もう一頭にとっては合わずに体調を崩してしまう原因になる…なんてこともあるのです。

三大栄養素それぞれが果たす役割は共通していますので、まずは基本的な役割をチェックしていきましょう。

■タンパク質

犬にとってタンパク質は非常に重要な栄養素で、AAFCO基準でも必須栄養素となっています。

体を構成するさまざまな細胞の原材料となる、重要な栄養素で、筋肉や臓器、被毛などをつくります。犬や人間の体は常に古い細胞が新しいものと入れ替わり、一定の状態を保っています(新陳代謝)。そのため、常に細胞を作り続ける必要があり、スムーズな細胞の入れ替わりができるよう、タンパク質の摂取は健康維持のために大切です。

また、タンパク質を消化・吸収する過程で分解した「アミノ酸」は、エネルギー源や神経伝達物質として使用されるほか、体内で起こる化学反応に必須の「酵素」としても使用されています。

ドッグフードではもっとも重要な栄養素の一つで、犬の1日あたり必須量が最も多い栄養素となっています。

 

■脂質

最も高エネルギーの栄養素であり、体温の維持や細胞の保護(細胞膜は脂質でできています)などに必要です。AAFCOでも必須栄養素に挙げられています。また、体内にエネルギーを蓄える役割もあります。そのほかにも、一部の脂質に含まれる脂肪酸の中には体内で非常に重要な役割を果たし、食事から一定量を取り入れる必要がある「必須脂肪酸」があります。
脂質が著しく欠乏すると、筋肉などを破壊してタンパク質からエネルギーを作り出してしまいます。また、脂溶性ビタミンの消化吸収、ホルモンの原材料としても重要な役割を持っています。

 

■炭水化物

AAFCOの必須栄養素には含まれませんが、肉食から雑食性を深化させた犬にとって効率が良く、そして素早くエネルギー変換される栄養素が炭水化物です。

代謝により、エネルギー還元効率が良い糖質に変換して、使用されます。
さらに主に脳を働かせるために使用されている栄養が糖質です。
「糖」と聞くとあまり良いイメージを持たないかもしれませんが、犬にとっては役立つ栄養素のひとつです。

また、炭水化物の内、エネルギーに還元できないものが「食物繊維」と呼ばれています。食物繊維の中でも、水に溶ける性質を持っているものを「水溶性食物繊維」、水に溶けないものを「不溶性食物繊維」としてさらに分類することができます。

腸内環境の改善や体重管理に役立てられている食物繊維が炭水化物に含まれることには要注目です。

 

犬の健康の中心となる三大栄養素。その源となるのは、ドッグフードに使用されるそれぞれの食材です。
どのような食材からどのような栄養が供給されているのかを知ることは、ドッグフード選びの大きなポイントです。

 

タンパク源となるのは肉、魚など

ドッグフードの主なタンパク源となっているのは、やはり肉や魚。どのような食材が使用されて作られているかを表す原材料表記では、使用されている量が多いものから順番に記載することが基本のルールとなっています。
プレミアムドッグフードに分類されるフードでは、原材料表記で一番最初に書いてある、いわゆる第一原材料が肉や魚であることが多いと思います。このことからは犬の体作りで最も重要な栄養素であるタンパク質は、良質な「肉」から摂取させようという意図が分かります。

しかし、安価なドッグフードでは原材料表記の一番最初に書いてあるものが、穀類などのパウダー(粉末)である場合も少なくありません。

 

生のお肉・魚を使ったフードの方がよく食べる、これって本当です。

少し前までは、犬が感じることができる味覚の中で「塩味」がもっとも強く感じられ、塩味の強さが嗜好性に影響するという意見がありました。

しかし、研究が進み、犬が美味しいと感じる要素として重要なものの一つはアミノ酸だと考えられるようになってきています。

犬の味覚を細かく調べるために、アミノ酸を水に溶かし、同じアミノ酸を溶かした水でも濃度の違う2種類の水をつかって「犬はアミノ酸の量が多い水と少ない水のどちらを選ぶのか」を調べる実験が行われました。
この実験の結果としてすべてのアミノ酸で犬たちはよりアミノ酸の量が多く「甘味やうま味」が感じられるものを選ぶことが分かったそうです。
この実験から、犬はアミノ酸の量の変化からも味わいを感じられるということが分かったのです。

アミノ酸の中には、エビやほたてのうま味の元であるグリシン、チキンや魚、一部の豆に含まれているスレオニン、シジミなどの貝類などに含まれているアラニン、豚肉のプロリン、かつお節や牛乳に含まれるセリン、微生物によって作られるグルタミン酸などがあります。
第一原材料はアミノ酸がバランスよく含まれ、うま味につながる成分も含んだ動物性タンパク質の肉や魚と表記されているものを選ぶのが、おいしいフード探しではポイントのひとつになります。

 

脂質は肉類などのほか、オイル類からも供給される

ドッグフードに含まれる脂質は、タンパク源となる肉類や魚にも含まれているほか、必須栄養素に含まれるオメガ6脂肪酸や機能性を持ったオメガ3脂肪酸などを取り入れるためにオイルを使用するケースも少なくありません。
また、ドッグフードに使用されている油(オイル)は、ドッグフードの嗜好性を高めるために使用されていることがあります。犬が好きな匂いを使用することで、犬が興味を持ち嗜好性が上がります。

嗜好性を高める以外にもドッグフードの油(オイル)には大切な役割があります。それは、必須脂肪酸の供給と油溶性ビタミンの供給 栄養バランスの調整です。
犬の健康管理において、油分を含む脂質は必須栄養素の一つです。脂質はエネルギー源として活用されるほか、細胞を保護する膜を作ったり、皮膚や被毛の保護にも必要な栄養素です。
また、ドッグフードに使用される油(オイル)には機能性成分を含むものもあります。代表的なものとしては、EPAやDHAに代表されるオメガ3脂肪酸のほか、植物由来の油(オイル)には抗酸化力を持つポリフェノールやビタミンEを含むものもあります。

ドッグフードの炭水化物量を要チェック

■犬は穀物の炭水化物を消化できない、は嘘

犬は穀類(★)などを消化することが苦手で炭水化物をエネルギーに変えることが苦手なので、穀類を使用しているドッグフードで下痢などを起こし体調を崩してしまう、ということがよく言われています。でも、実際に犬と暮らしているとパンやクッキーが好きな犬もいますし、白米を喜んで食べる犬もいます。そういった犬がみんなお腹を壊している訳ではありません。

炭水化物・デンプンの消化に働くアミラーゼは、犬の膵臓から分泌されています。消化管のなかで働くほかの酵素と同様に、体の中で作られています。そのため、消化ができないというわけではなく「他の雑食性の動物たちと比べると苦手」というのが正しい解釈なのかもしれません。加熱調理されていれば、消化吸収が可能です。
ちなみに、犬たちの仲間であるオオカミの遺伝子と比較すると、犬たちはオオカミより28倍ものアミラーゼを持っているという研究もあるそうです。犬たちが私たち人間と暮らすようになってから身に付けた能力だということですね。


生の状態の穀物をそのまま食べれば消化不良を起こし、下痢になります。しかし、米などの場合は、水を加えて一度加熱し、ごはんを炊くように処理を行うことで、人間の唾液のなかでアミラーゼが働いたのと同じように、分子の結合を崩し、分解されやすい状態にすることができます。この加熱調理を行ったあとのデンプンを「アルファ化」などと呼びます。また、一度加工したデンプンであれば、加工後急速に乾燥することで、分解されやすい状態を維持することが可能になります。

★ポテト、スイートポテト、穀類(ライス、小麦、オートミールなど)、豆類など
※ただし、米などを含む穀類やポテト、豆類は、炭水化物と植物性タンパク質源の両方を担います。

まとめ:ペット栄養管理士のドッグフードを選ぶ時のポイント

ドッグフードを選ぶときの基準として、タンパク質量やグレインフリーであることを気にされる方も多いですが、タンパク質と同じように脂質と炭水化物も犬にとって大切な栄養源です。
三大栄養素のすべてが含まれていて、ウンチの状態が良いようなら、それがいわゆる「合うフード」といえるのかもしれません。ただ、どんな犬にも同じように合うフードという選択は難しく、体質や運動量などによって100頭の犬がいれば100通りの「合うフード」があると言えます。
実は試してみると「意外と白米入りのフードが合っていた」「食べさせたことがなかったけれど、カンガルー肉のフードだと体調が良い」なんてこともあり得ます。
ついついネット上の情報などを参考にしてフード選びをしてしまいがちですが、まずは一般食なら第一原材料が〇〇ミールではなく、生の肉や魚であること、健康に役立つオイルが含まれていることの2つをポイントにして選んでみてはいかがでしょうか。

数値では理想的でも、犬の好みではなかったり、アレルゲンが含まれていて泣く泣く断念する、ということもよくあります(残念ながら)。少しずつ原材料のタンパク源を変えたり、粒サイズなどの要素を加えて確かめながら、犬と二人三脚で合うフードを探してみてください。