• コラム

2025.07.31

水遊びを楽しむ秘けつと水慣れトレーニング法

水遊びを楽しむ秘けつと水慣れトレーニング法

写真=蜂巣文香
取材協力=倉岡麻子
文=臼井京音

夏場でも涼しく思う存分遊べる水遊び。水遊びビギナーの飼い主さん・犬向けに、水遊びを安全に楽しむための水慣れトレーニングや、おすすめの水遊びや必須アイテムについてもご紹介します。(POCHI編集チーム) 

今回のお役立ち情報犬との水遊び

川やプールで楽しく安全に水遊びを楽しむ秘けつを、見ているだけで楽しくすがすがしい気分になる写真とともに紹介します。初めて水遊びする犬のために、自宅でできる水慣れトレーニングの方法もドッグトレーナーに聞きました。  

夏はやっぱり水遊び!

暑い夏でも、犬たちは水遊びならば“クール”に思う存分遊べます。
手軽なところでは自宅でのプール遊び、お出かけを兼ねての犬用プール施設利用や、海・川遊びなど選択肢もさまざま。 
今回は、以前紹介した埼玉県飯能市のNAGURIを運営するドッグトレーナーの倉岡麻子さんに、自宅でできる水慣れトレーニングの方法と水遊び成功の秘けつを教えてもらいます。

筆者宅のリリは水が怖いらしく、波の届かない砂浜を砂の感触を楽しみながら散歩

筆者宅のリリは水が怖いらしく、波の届かない砂浜を砂の感触を楽しみながら散歩

ちなみに筆者の犬は、元野犬ながら水が苦手です。5月には海に連れて行ってみましたが、波打ち際にも近づかず、砂浜を歩いたり走ったりしただけでした。
以前一緒に暮らしたノーリッチ・テリア2頭のうち1頭は海でも泳ぎましたが、もう1頭はプールで犬かきをしても前に進まず体が縦向きになり、お尻から水中に沈んでいきました。
犬だからみんな泳げると思ったら、大間違い。金づちの犬もいますし、水を怖がる犬もいます。飼い主が無理やりに海や川に入れてしまうと、恐怖体験からトラウマになって二度と水に入らなくなる可能性もあります。
犬たちの気持ちを尊重しながら必要に応じて事前に水慣れトレーニングを行い、家族みんなが夏の水遊びを楽しめるようにしたいものです。

川の水は冷たくて気持ちいい! スイスイ~、泳ぐの大好きなフレンチ・ブルドッグ

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水慣れトレーニングから

水に慣れさせるトレーニング方法を、学びましょう。
繰り返しますが、無理強いは禁物。犬が自発的に水に入ることを目指しながらステップアップしていくのがポイントです。

1)自宅の庭やマンションのベランダなどで使える、子ども用プールや大きめのたらいなどを逆さまの状態で設置。最初はおやつで誘導しながら近づけて周りを歩かせたり、犬を自ら飛び乗らせ、その上でおやつを食べさせます。何回か行い、まずはプールなどに対する犬の警戒心をなくします。



2)逆さまにしたプールの上でオスワリやフセなど、犬が得意なことをさせます。もちろん、飼い主さんは「すご~い」「楽しいね~」などと笑顔でほめて、ごほうびのおやつもあげて。犬が自発的に乗ってその上で楽しく過ごし、降りてまた乗ってと同じ課程を繰り返します。



3)いよいよ犬に、水を入れていないプール内に入ってもらって遊びましょう。おやつやお気に入りのおもちゃで、犬が自ら中に入るように誘導を。犬が入ったら、飼い主さんも楽しみながらボールなどで一緒に遊んであげてください。



4)プールに水を、犬が驚かないようにチョロチョロと少しずつ入れます。その水に興味を示して、前足でチョンチョンと触ったり犬が自ら遊び始めればベストですが、うまくいかず犬が出てきてしまっても焦らずに。あくまでも犬の自主性を尊重しながら、水を入れるのを一旦やめて様子を見つつレッスンを続けましょう。



5)水を少し張った状態のプール内で、犬に短時間過ごしてもらいます。プールの中でオスワリをさせて、ごほうびのおやつをあげるのもおすすめ。



6)水に慣れてきたら、一旦犬にプールから出てきてもらい、おもちゃを水に投げ入れるなどして自発的に犬が入るのを待ってください。入ったら、「すごい」「いい子~」とほめてあげましょう。なお、足が滑りやすい素材のプールの場合、底面に滑り止め防止マットなどを敷いておくことをおすすめします。

必携アイテムを携え、いざ川へ!

犬が水に慣れたら、犬用プールや川に行ってみましょう。
海は波を怖がる犬が少なくないのと、夏はビーチに張ったテント内も高温になり熱中症の危険があること、また犬の体が砂だらけになるとお手入れが大変なこともあり、水遊びビギナーには、犬用プール施設、犬と泊まれる宿にある犬用プール、流れが穏やかな浅瀬の川が向いています。

初めての水遊びでは、犬用ライフジャケットを装着させると安心です。
川遊びの場合、ライフジャケットには軽量のロングリードをつければなお安心材料が増えます。

ライフジャケットは安全に水遊びをするためのアイテムのひとつ

ライフジャケットは安全に水遊びをするためのアイテムのひとつ

一般的には、レトリーバーやもともと水猟犬だったプードルなどの犬種は、水に入ることに抵抗感を抱きにくく水遊びを好むと考えられます。一方、日本犬系はあまり水に入りたがらない傾向が見られます。
とはいえ、実際には個体差があるため、水遊びが大好きな柴犬もいれば、水に興味を示さないスタンダード・プードルもいます。
倉岡さんと暮らすゴールデン・レトリーバーの彩ちゃんも、泳ぎは苦手なのだとか。
「水と見れば公園の噴水でも池でも飛び込まずにはいられない子が多いレトリーバーなのに、ですよ(笑)。なので、うちの子にはライフジャケットが欠かせません。川遊びは好きですが、基本的には浅瀬でパチャパチャ。気が乗ると、ライフジャケットの浮力をうまく利用して泳ぐこともありますが……」とのこと。
先入観で判断せず、うちの子の個性を見極めたうえでどんな水遊びをするか選んであげたいものです。

水遊びが大好きで泳ぎ上手な、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルとトイ・プードルのミックス

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川での注意点と水慣れアドバイス

清流を目の前に、犬が水に入らないこともあるでしょう。
その場合、まずは飼い主さんがおやつを持って水に入ります。そこでニコニコと楽しそうにしながら「おいで~」と、犬を呼んでみてください。犬が水に足を入れて近くまで来たら、ほめておやつをあげて。
次は、流れが弱く浅い場所を選び、岸辺からおもちゃを投げ入れます。犬が自ら取りに入ったら、大成功!きっともう、抵抗感なく水遊びができるはず。
なお、当然のことながら川は流れているので、おもちゃは上流方向に投げ入れると良いでしょう。

飼い主さんが先に川や海に入ってから呼ぶと、犬も入りやすくなります

飼い主さんが先に川や海に入ってから呼ぶと、犬も入りやすくなります

川遊びができるような清流の近くは自然が豊富で、ブユ(ブヨ)、マダニ、蚊などもたくさんいます。飼い主さんはそうした虫に刺されないよう、可能な限り長袖長ズボン着用のまま、虫よけ対策も忘れずに。
飼い主さんが川に入る際は、マリンシューズを履いていれば動きやすくケガ防止にもなります。

水中で遊びすぎると泳力も体力も落ちるので、ほどほどにして切り上げるように心がけるのも大切なポイント

水中で遊びすぎると泳力も体力も落ちるので、ほどほどにして切り上げるように心がけるのも大切なポイント

最後に、水遊びが大好きになった犬たちを“水中毒”にさせないように注意してください。水中毒(低ナトリウム血症)は、水を飲み過ぎることで発症します。おもちゃを拾う際など、水をたくさん飲んでしまわないように気をつけながら、うちの子と一緒に水遊びを満喫しましょう!



写真 蜂巣文香

■ 取材協力:倉岡麻子さん

bigdog-swim-river-water_prof.jpgアメリカのサンディエゴに3年間滞在し、デイケアセンターCanineToFiveを運営するHiromi Suzuki氏に師事。犬に負担をかけないトレーニング方法を学ぶ。帰国後2012年に独立し、ドッグトレーニングレッスン、NAGURIでの犬の幼稚園の運営などを行う。




■ 文・取材 臼井京音

profile_202506.jpgドッグライター・ジャーナリストとして、20年以上にわたり世界の犬事情を取材。現在は犬専門誌『Wan』をはじめ週刊誌、Web媒体、会報誌等で情報発信を行う。以前は『愛犬の友』誌、毎日新聞の連載コラム(2009年終了)などでも執筆。著書に『うみいぬ』『室内犬の気持ちがわかる本-上手な育て方としつけ方をアドバイス!』がある。
現在は元野犬の中型犬と暮らす。歴代愛犬のノーリッチ・テリア2頭と同様にボールを追いかけることが喜びで、趣味はテニスとバレーボールと写真撮影。パリやNYで撮影し自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、ペットショップP2などのインテリアにも使用されている。

撮影協力:

*1 NAGURI 予約と詳細はこちらへ

*2 ※雨による増水などにより、川遊びができないこともあります。