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2025.07.30

犬の熱中症対策に「塩分」は必要?正しい水分補給と注意したい誤解

犬の熱中症対策に「塩分」は必要?正しい水分補給と注意したい誤解

「夏は塩分補給が大事」とよく言われますが、果たして犬にも塩分は必要なのでしょうか?実は、人間とは異なり、犬は汗をかかないため塩分の考え方が異なります。むやみに塩分を与えてしまうと、かえって健康リスクを高めるおそれもあります。本記事では、犬の熱中症対策として本当に必要なケアと、塩分の正しい知識について解説します。

犬は汗をかかない!水分・体温調整のしくみとは

人と異なり、犬は汗をかかない動物です。まずは水分や体温調整の仕組みを解説します。

汗腺は足の裏にしかない

犬の体には人間のような全身の汗腺がありません。汗をかくのは、足の裏の肉球と鼻に少量にある「エクリン腺」のみとされています。そのため、人間のように大量の汗をかいて塩分を失うことはほとんどないと言えます。この違いから、人と同じ感覚で犬に塩分を与えるのは塩分の過剰摂取になりかねません。犬にとっての汗をかくことと塩分補給は、基本的に無関係といえます。

パンティングで体温調節

犬は、暑いときに「ハァハァ」と口で浅く速い呼吸をする「パンティング」によって、舌や口の中の水分を蒸発させて体温を下げます。
この仕組みには塩分の排出を伴わないため、熱中症対策に塩分補給は基本的に不要とされています。

犬にとって塩分は必要?その役割と適量

犬は過剰に塩分を与える必要はないものの、適量な摂取は求められます。
ここでは、犬にも必要不可欠なナトリウムについて解説します。

ナトリウムは必要不可欠なミネラル

塩分に含まれる「ナトリウム」は、犬の体にとっても大切な栄養素です。水分バランスの調整や神経、筋肉の働きを助ける重要な役割があります。しかし、通常の総合栄養食を食べていれば、必要量の塩分はしっかり含まれており、特別に加える必要はありません。

手作り食では調整が必要なことも

手作りごはんを与える場合は、食材に含まれるナトリウム量を丁寧に計算して調整することが重要です。少なすぎると体調を崩す可能性がありますが、多すぎても負担になります。

塩分の過剰摂取が続くとどうなる?

塩分の摂りすぎは、犬の腎臓や心臓に大きな負担をかけ、将来的に高血圧や心疾患、腎不全などのリスクを高める可能性はあります。特に、シニア犬や心臓病、腎疾患など持病のある犬は、塩分に敏感です。健康な犬であっても、塩分入りのおやつを頻繁に与えるのは控えましょう。

熱中症対策で大切なのは「水分+環境」

犬の熱中症対策は、適度な水分補給を促すことと、涼しい環境を整えることです。暑い夏を乗り越える参考にしてください。

Point1水分補給が基本!常に飲める環境を

犬の熱中症対策の基本は、「塩分」ではなく水分補給です。まずは、いつでも清潔な水が飲めるように、環境を整えてあげることが大切です。冷たすぎる水は胃腸への負担になることもあるため、常温の水をこまめに与えるようにしましょう。特に暑い時期の外出時には、携帯用の水ボトルや折りたたみ式の水皿を持ち歩き、すぐに水分補給ができるよう備えておくと安心です。

Point2室内外での対策ポイント

犬の熱中症対策では、室内外の環境管理も重要です。
散歩は、気温が上がる日中を避けて、できるだけ涼しい時間帯の早朝や夜に行いましょう。特にアスファルトは、太陽の熱を吸収して高温になるため、肉球を火傷する危険があります。また、室内で過ごす時間も油断は禁物です。エアコンや扇風機を使用し、室温が上がりすぎないようにしましょう。暑さ対策には、冷感マットやクールベストなどのグッズを取り入れるのも効果的です。留守番中でも空調を切らずに管理することで、熱中症のリスクを下げられます。

Point3水をあまり飲まない子には

水をあまり飲まない犬には、食事を通して水分を摂らせる工夫が大切です。水そのものをあまり好まない場合でも、ゼリー状の水分補給フードや、野菜の煮汁を利用したスープごはんなどであれば、自然と水分を取り入れられます。ウェットフードを普段の食事に取り入れるのも有効で、食事全体から水分を補え、食のQOL向上につながります。

「犬用の経口補水液」は必要?

夏場になると「犬用の経口補水液」が販売されることがありますが、すべての犬に必要というわけではありません。実際には、特別な状況を除いて、健康な犬がこうした製品を摂取する必要はなく、むしろ与えすぎの健康リスクも考慮しておきたいところです。
ここでは、経口補水液に関する情報を解説します。

特別なケースでは使用の可能性も

下痢や嘔吐が続いているとき、また猛暑でぐったりして水も飲めない状態など、脱水のリスクが高い状況では、電解質(ナトリウムなど)を含む補水液が必要になる場合もあります。ただし、自己判断での使用は避け、必ず獣医師に相談した上で適切な量や製品を選ぶことが大切です。

市販の補水液・サプリはナトリウム濃度に注意

人間用のスポーツドリンクや経口補水液は、犬にとってナトリウム濃度や糖分が高くなっています。犬用として市販されている経口補水液やサプリでも、成分表示を確認しましょう。

まとめ

犬は人間のように汗をかかないため、通常の生活で塩分補給をとくに意識する必要はありません。熱中症対策で大切なのは、「こまめな水分補給」「涼しい環境の維持」「体調に合った食事管理」の3つです。
経口補水液は、特別な状況を除いて基本的に不要です。犬の体調に合わせた無理のないケアを心がけましょう。