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2025.08.18

いつ、どんな状況で、どんな犬がより暑い?犬の暑さ、大解明!《RETRIEVER + POCHI archive029》

いつ、どんな状況で、どんな犬がより暑い?犬の暑さ、大解明!《RETRIEVER + POCHI archive029》

写真=小澤義人
構成・文=RETRIEVER編集部

「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)

犬の暑さの理由

■汗による放熱効率が低い

人は全身で汗をかき、皮膚の表面から汗が蒸発する気化熱によって体を冷やしています。その汗は、皮膚にある汗を皮膚の表面に送り出す「汗腺」でつくられていますが、犬は汗腺のほとんどが肉球にあり、全身で汗をかくことができません。暑さに対する体温調整は、口を大きく開いて行う浅く速い呼吸である「パンティング」に頼るしかないため、人と比べると体温が上がりやすく、圧倒的に暑さに弱いのです。

より暑さを感じるのは、どんな時?

湿度が高いとより暑い!

熱中症予防を目的とした指標として「暑さ指数」(WBGT)があります。これを導き出すのが、①湿度、②日射・幅射などの周辺環境、③気温の三つです。ここで注目したいのは、暑さは気温だけではなく、湿度や周辺環境も大きく影響するということ。また幅射では、太陽光を浴びた地面からの熱が大きく影響します。犬は幅射を全身で受け止めることになるため、人よりいっそう暑さを感じているといえます。

運動中や運動の後は、特に暑い!

運動中、筋肉はたくさんのエネルギーが必要なため、エネルギー代謝が活発になり、そのため熱生産量も増え体温が上がります。通常の犬は体では体温を一定にしようとする働きが起こりますが、夏は対応しきれず、体温の著しい上昇や熱中症を招いてしまうことも。夏は無理をせずに運動強度を下げることも必要です。

全身を覆う毛

全身を覆う犬の毛は、夏の紫外線や直射日光から体を守り、なるべく外気温の影響を受けないようにする役割があります。ただ一方で、保温効果も高く、逃がしたい熱をも保温してしまう側面があります。ダブルコートの犬種の体温は、毛先に比べて皮膚表面のほうが1〜2℃高くなることもあります。寒さに強い反面、暑さには弱いといえるでしょう。

■ column:肥満犬、子犬、疾患のある犬は要注意!

脂肪は熱伝導の効率が悪く、体内の熱を放出しようとする働きの妨げとなってしまいます。そのため、皮下脂肪をためこんだ肥満犬は暑さを感じやすく、そうでない犬に比べて熱中症のリスクが高いです。また、体温調節がまだうまくできない子犬も同様。その他、体調が悪かったり、疾患を抱えている犬も注意が必要です。

「暑い!」犬の仕草と対処法

タイルなど冷たい場所に寝そべる

犬は暑くなると涼しい場所を求めて移動します。玄関やフローリングの上などで脚を投げ出すように体をべったりつけて寝転んでいる時は、暑さを感じていることが多いです。暑さを和らげるために、犬が自ら見つけた場所なので、無理に移動させないようにしましょう。

水をよく飲む

体温調節のためのパンティングをすると、水分を補給するためによく飲むようになります。水分補給は熱中症予防に大切なので、いつでも飲めるよう、新鮮な飲み水を用意しましょう。ただし、犬は人よりも水分吸収能力が低いです。一気に飲んでも吸収できる量はかぎられており、また吸収しきれなかった水分によって便が緩くなることもあります。水分はこまめに飲ませるのが理想です。

舌を出してハァハァと口で呼吸している

ほとんど汗をかくことができない犬は、呼吸によって体温調節を行っています。舌を出し口でハァハァ呼吸をしている時は、パンティングで水分を蒸発させ、その気化熱で体温を下げようとしています。すみやかに、水を飲ませる・体を冷やす・涼しい場所に移動する・冷房の温室設定を下げるといった対処をしましょう。

■ Important!:犬の体温変化は耳の毛のない部分で知る

仕草だけでなく、実際に犬の体温変化を知って安全を確保しましょう。そのための方法は、耳の内側の毛がないつけ根部分の温度を参考にします。普段からここに触れておく習慣をつけておきましょう。いつもより熱いと感じた時は体温が上がっている証拠です。

Summary:犬の場所の温度と湿度を実際に測って管理する

犬の暑さを考え、安全を確保するために小林豊和先生が提唱するのが「実際に犬がいる場所の温度と湿度を測ってみる」ということ。同じ室内・車内であっても、ちょっとの居場所の違いで温度や湿度が変わることはよくあります。家であればサークルや床付近、車内であれば後部座席やクレート内、外であれば地面付近など、犬が実際にいる場所の温湿度を測り、把握することが大切です。その上で、犬に安全かつ快適な環境を提供していくようにしましょう。

出典:『RETRIEVER』vol.112 /「夏を前向きに乗り切るヒント集 そもそもレトリーバーの暑さって?」

*1 監修=小林豊和。こばやしとよかず。『グラース動物 病院』統括院長、元帝京科学大学教授。日本大学大学院獣医学研究科博士課程修了。1993 年に『グラース 動物病院』設立。動物への負担の少 ない腹腔鏡手術など最新の獣医療を 提供する一方、生活のアドバイスや しつけ教室など、人と動物のよりよ い共生をサポートすることにも力を入れる。著書に『犬の看取りガイド』 (エクスナレッジ)他、多数。