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2025.08.25

知っていますか?犬レプトスピラ感染症《RETRIEVER + POCHI archive030》

知っていますか?犬レプトスピラ感染症《RETRIEVER + POCHI archive030》

イラスト=南景太
構成・文=RETRIEVER編集部

「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)



■「犬レプトスピラ感染症」とは

「犬レプトスピラ感染症」とは、主にネズミなどの野生動物の体内に潜む細菌が尿によって排出されて水や土壌などを汚染し、それに犬が感染し発症する病気です。 感染してもまったく症状の出ない犬がいる一方、数は少ないですが治療のかいなく命を落とす犬もいます。川遊びやキャンプなどアウトドアで過ごすことが多くなる時季、この病気の実態や飼い主ができる予防対策を獣医師に聞きました。

どんな病気で何に気をつけるべき?

「犬レプトスピラ感染症」は、人にも動物にもうつる人獣共通感染症(ズーノーシス)として重要な病気です。日本では「秋疫」といって、農家の人などが秋になると体調が悪くなる病気=レプトスピラが、江戸時代からあったといいいます。公衆衛生や医療が向上した現在、人への感染拡大はあまりありませんが、犬に関しては毎年、感染が報告されています。もともと、レプトスヒラは野ネズミなどの野生動物が内臓(主に腎臓) に保菌していて、それが尿により排出され、尿に汚染された水や土を通じて菌に触れることが原因となり、他の動物や人に感染します。だから、野生動物が多く棲息する場所で、犬と散歩したり遊んだりすることは、実は感染リスクにつながるといえるのです。

しかし、野生動物からは離れているはずの都市(東京の市街地など)でも、感染リスクは否定できません。というのも、都心や郊外の住宅地など、人間の生活に近いところに、いわゆるドブネズミや外来種の野生動物かが多く繁殖しており、そこから感染する可能性もあるからです。

予防対策は何をすればいい?

レプトスピラは犬が菌に感染しても、まったく発症しないケースもあります。一方、発症しても、すぐにレプトスピラだと特定できる明らかな症状は少ないのです。ただし、感染した菌の種類や犬の健康状態によっては急激に悪化したり、死に至る場合もあります。やはり早い段階でかかりつけ医の診断を仰ぎ、治療を受けることをオススメします。

この病気を防ぐには、ワクチン接種が第一の方法です。一年に一回のワクチン接種で、症状が軽くなることが期待できます。また、普段の散歩では他の犬の尿に接するのを避け、遊びに行った先では、よどんだ水たまりには入らないことなどが予防策となります。目に見えない病気から犬を守れるのは、飼い主だけだということが大前提です。

獣医師に聞く、ワクチンはどうすればいい?

東日本の多くの市町村の獣医師は、レプトスピラの診察経験はないと思います。 それほどレアな病気ですが、関西では集団感染したケースもありました。流行していない地域に住み、アウトドアレジャーにほぼ行かないなど感染リスクの低い犬の場合では、必須ではないといわれますが、流行地域では予防のためにワクチンを打ったほうがいいでしょう。
ワクチンについては、250以上もあるレプトスピラの血清型のうち、現在四つのワクチンがつくられています。混合ワクチンに入っているもの以外では、「単味」としてそれだけを単独で接種することができます。ただし、ワクチンに含まれる型以外の菌に感染する可能性も否定できないので、ことレプトスピラの予防に関してはワクチンは万能ではないのですが、予防策として考え、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

犬レプトスピラ感染症にかからないための「OK・NG行動」

◎OKOK行動(予防策):レプトスピラの混合ワクチンを予防接種

アレルギーが強い犬を除いて、レプトスピラワクチン入りの混合ワクチンを一年に 1 回、接種することが基本の予防策です。アウトドア(特に水辺や野生動物の多い場所)に遊びに行く場合、行った先の地域で発生したケースがあるかどうか、調べてみるのも対策の一つです。ワクチンは限定的な予防措置ではありますが、その際はよくかかりつけの獣医師に相談しましょう。

◎OKOK行動(予防策):接触した犬にどこまで知らせるか

犬を連れてドッグランやアウトドアの川遊びに行った際、いろいろな犬も来ていて、触れ合ったり遊んだりした後、ウチの犬がレプトスピラに感染したと判明したとします。その場合、他の犬にうつした可能性もあるかもしれません。触れ合いの度合いにもよりますが、知り合いなら飼い主に、ドッグランなら運営元に、感染の事実を知らせたほうがいいでしょう。感染した犬にレプトスピラの症状が出た時、獣医師も早めに対応ができるからです。


×NGNG行動(要注意):汚い水に要注意+都会でも安心ではない

世界的な状況としては、レプトスピラは洪水の後に発生することが多いです。不衛生な水が地域一帯に広がり、そこに細菌がいれば、当然、感染リスクは高くなります。つまり細菌が生きやすい環境=洪水のような汚水、よどんだ用水路、ヘドロのたまっている水たまり、ジメジメした土壌などが危険といえます。自然に近い場所でも都会でもどんな地域でも、そういった水や土に触れることで、犬でも人でも感染の可能性が大きくなります。

×NGNG行動(要注意):外トイレはNG+水より消毒液で流す

レプトスピラにかかっても症状が出ないまま保菌している犬もいます。具合が悪くならないと検査もしないため、どれだけそういう犬がいるかは究明されていません。もし、そういう犬が近所にいて、外でトイレをしているとしたら…その犬のオシッコのにおいを嗅いだり、なめたりすることは避けたいところです。レプトスピラの感染力は強力ではないですが、予防は必須です。外トイレのオシッコは水ではなく、消毒効果のある「次亜塩素酸水」で流すのがオススメです。

出典:『RETRIEVER』vol.111/「犬レプトスヒビラ感染症の探究」

*1 監修=村田亮 むらたりょう。博士(獣医学)。稚内保健所利尻支所勤務。酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業。北海道大学大学院獣医学研究科修了。東京農業大学農学部助教、 酪農学園大学獣医学群講師を経て現職。酪農学園大学では動物のレプトスピラ症を専門として研究を行っていた。