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2019.09.02

犬馬の心 ~犬の故事成語・ことわざ講座~

犬馬の心 ~犬の故事成語・ことわざ講座~

人々と長く過ごしてきた犬たちは、さまざまな形で私たちの文化にも関わって来ました。昔の人々から伝えられてきた言い回しや表現にも、犬たちが登場します。そこには「犬って○○だよね」という昔の人々が犬たちに抱いてきた印象やイメージなどが反映されています。
昔の人々が見てきた犬たちの姿を映す鏡として、犬たちが登場する故事成語やことわざ、慣用句を紹介します。

犬馬の心(けんばのこころ)

犬馬の心

《意味》
犬や馬のように忠義に厚く、恩義を忘れずに主人や仕える相手に対して心や身を尽くして一生懸命に仕事をすること。

《出展》
司馬遷『史記』(中国の歴史書)

どういった場面で使われる?

臣下や部下が、立場が上の者に対して自分の忠義心を表す際に使用します。もともと、『史記』では臣下が皇帝にその子息たちを後継として指名するように促す際に使用されています。つまり、「私は犬や馬のように忠義の心をもって、あなたにこう進言します」という言い回しだったのです。

犬や馬は、自分の利益のために動くということはありません。犬たちと暮らしている方なら「飼い主のために」という気持ちを、犬たちがみんな持っていることはご存知だと思います。そんな犬たち、そして馬たちを引き合いに出すことで「私利私欲ではなく、純粋にあなたへの忠義の心から」という面を強調しているのですね。犬たちのような純粋な心で忠義を尽くす、という姿勢は、やがて日本でも広く尊敬を集める対象となりました。

犬たちと馬は、いずれもそれぞれ狩りで活躍する猟犬や、戦場で軍馬として人々や物資を運ぶ仕事をしてきた動物です。どんな状況でも人々の指示に従い、一生懸命に仕事をする姿に昔の人々も心を打たれたのかもしれませんね。

DOG's TALK

犬と馬、という組み合わせは西洋でも比較的良く見られるモチーフです。実際、近代に至るまで交通手段の一つだった馬車では、馬たちの伴走者として犬たちが活躍していました。人間の意志を理解し、馬たちと一緒に走りながら行路から外れてしまわないように調整を行う役目を担ったり、道案内をするなどの仕事をして来ました。そんな仕事をしてきた犬たちをルーツに持っている子孫は、現代の日本でも残っています。
ヨーロッパでも犬たちと馬たちは忠実に仕事をしていくよきパートナーであり、同じように一生懸命に頑張る存在として人々から一目置かれてきたのでしょうね。