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2019.09.11

門脈シャントかも?と思ったら。犬の症状チェックポイント【獣医師からのアドバイス】

門脈シャントかも?と思ったら。犬の症状チェックポイント【獣医師からのアドバイス】

この記事の監修:Dr.マイについて

*1 庄野 舞 しょうの まい)獣医師 東京大学 農学部獣医学科卒業。 東京大学付属動物医療センターにて、血液腫瘍科、神経内分泌科、消化器内科で従事。 たくさんのペットの生死を見てきて、共に戦った飼い主さんが最終的に願うのは「食べさせてあげたい」という思いであることに気づく。 現在は、病気予防のふだんの食事のこと~漢方、植物療法の世界の探求に励む。はじめの一歩に漢方茶マイスターを取得。 得意分野は、犬猫の血液腫瘍と回虫。

"犬の病気のイントロダクション"は「犬の様子がいつもとちょっと違う、もしかして…」と不安に思った飼い主が、動物病院で獣医師に相談するときに知っておくと「ウチの子」のことをより正確に伝えられる、そんな知識を書きとめたノートです。

今回取り扱うテーマは子犬の内から症状が出やすい門脈シャントについて。小型犬に多い遺伝的な病気です。早めに気が付くことができれば、食事管理などでうまくコントロールすることができるようになっていきますので、しっかりチェックを行いましょう。

犬の門脈シャントの症状をチェック

犬に良く見られる肝臓の病気の一つに、先天的に肝臓に行くべき門脈が肝臓を通らずそのまま心臓へと行ってしまう"門脈シャント"というものがあります。

犬たちの体では、消化管から吸収した栄養分や毒素、体の中で作られた老廃物などを、代謝・分解を行う肝臓へと運ぶ門脈という血管があります。
しかし、犬たちの中には先天的にこの門脈と全身の静脈の間にバイパスのように血管が通っている犬もいて、そのために肝臓で分解されるべき毒素や老廃物がそのまま全身に回ってしまう、というのが門脈シャントの症状です。

初期には、食欲不振、下痢、嘔吐などの消化器系に症状が出ることが多いです。その後、病気が進行すると黄疸やふらつき、徘徊などの症状がみられるようになって行きます。
先天性の門脈シャントであれば、子犬の時期から食が細く、食後にぐったりとしている、疲れやすい、発育が遅いなどのサインから発見に至るケースが多いようです。また、門脈シャントの犬の場合は肝臓が顕著に小さくなるため、健康診断のレンドゲン写真で判明することもあります。
門脈シャントの犬は、高タンパク食を与えるとタンパク質の分解に伴って作られる大量のアンモニアが分解されないまま全身に回ってしまうため体調を崩すことがあり、注意が必要です。健康な犬なら、アンモニアは肝臓で分解・無毒化されてから排出されるのですが、アンモニアが肝臓に届けられないために分解されないのです。この病気は遺伝的な要因が発症に大きく関わるため、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、トイプードル、ヨークシャーテリアなどの一部の犬種では起こりやすい傾向にある病気です。

獣医師さんに"門脈シャントかも"と伝えるためのチェックポイント

「あれ?」と思って動物病院に行っても、獣医師さんに上手く症状を伝えることができず、思ったようなアドバイスがもらえなかったりすることもありますよね。もちろん、動物病院に行くこと自体がストレスにもなる犬もいますし、短期間に何度も病院に行くことは色々な意味で負担がかかってしまいます。
そこで、一度の診断で的確に門脈シャントの可能性を伝え、「気になっていること」を獣医師さんに伝えるためにチェックしておくと良いポイントをいくつかご紹介します。

 

 

1st point体調が悪くなるタイミングをチェックする

門脈シャントのサインのひとつとして、消化に伴って作られる老廃物などが体に回ってしまうことがあります。そのため、門脈シャントによる体調不良が起きる場合は、食べ物の消化が進んだ食後1~2時間以内に見られるのが特徴です。
食後数時間以内に元気がなくなったり、嘔吐、徘徊、旋回、ふらつくなどの顕著な症状が見られる場合には獣医師に伝えてみてください。

 

 

2nd point食べ物の好みを伝えてみる

門脈シャントの犬の場合、高タンパクの肉や魚を与えると症状が悪化することが多いので、犬も自発的にタンパク質量が低いフードや野菜などを好むことがあるようです。
もちろん、全ての犬に当てはまる訳ではありませんが、犬たちに門脈シャントに似た症状が見られたときには、直前に与えたもの(オヤツやトッピングなども含めて)伝えるようにしてください。門脈シャントと診断されたら、食事の面では低タンパク食などを与え、オヤツなどに制限を設けることで上手に病気と付き合うことが可能です。

DOG's TALK

この記事を書いた人 (庄野 舞 しょうの まい)獣医師

この記事を書いた人 (庄野 舞 しょうの まい)獣医師

東京大学 農学部獣医学科卒業。 東京大学付属動物医療センターにて、血液腫瘍科、神経内分泌科、消化器内科で従事。 たくさんのペットの生死を見てきて、共に戦った飼い主さんが最終的に願うのは「食べさせてあげたい」という思いであることに気づく。 現在は、病気予防のふだんの食事のこと~漢方、植物療法の世界の探求に励む。はじめの一歩に漢方茶マイスターを取得。 得意分野は、犬猫の血液腫瘍と回虫。講演なども行っている。

獣医師コラム犬の血液検査で肝臓の数値が高いと言われたら。

獣医師 Dr.マイからのアドバイス

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■ "門脈シャントかも?"を獣医師に伝えるためのポイント

・子犬なのに食が細く、元気がない、疲れやすいなどの症状はないか(成犬の場合はそういった症状が子犬時代になかったか)チェックする
・食後に顕著に体調が悪くなったり、嘔吐する、旋回するなどの異常な行動が見られる場合は伝える
・高タンパク食を食べた後に体調を崩していないかチェックする

門脈シャントの犬にオススメ 低タンパクドッグフード

門脈シャントなどの肝臓トラブルに悩む犬は、タンパク質の量をコントロールすることで健康的に過ごすことができます。タンパク質の量を抑えたドッグフードは、腎臓ケアドッグフードに多いので、腎臓ケア用フードも視野に入れるとフード選びの幅が広がります。栄養バランスの崩れが気になる時にはサプリメントなどを取り入れるなどしながら、うまくコントロールができるようになるかもしれません。