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2020.01.29

カルシウムとのバランスが大切!犬にとってのリンはどんな栄養?

カルシウムとのバランスが大切!犬にとってのリンはどんな栄養?

犬たちの体調管理をしていく上で、知っておきたい栄養に関する知識のひとつが、リンとカルシウムの関係についてです。「リンの制限が必要」や「リンは与えすぎてはいけない」という意見を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも、犬たちにとってリンは必須栄養素のひとつで、とても大切な栄養です。なぜ「リンは制限が必要」といわれることがあるのでしょうか?

リンってどんな栄養?どのように使われるの?

リンは、エネルギーの代謝に重要な役割を持っています。主に脂肪酸やアミノ酸をエネルギーとして使用する際、一度犬の体内ではアデノシン三リン酸(ATP)という物質が作られ、この物質を分解することによってエネルギーが作られています。リンはこのATPを体内で合成するために使用されています。
また、細胞膜の構成成分であるリン脂質にもリンが含まれています。細胞が正しく作られるためにも、リンは必要な栄養なのです。
そのほかでは、カルシウムと結合し、骨や歯を強化する役割を持っています。

そして、犬たちに与える食材では高タンパクの肉や卵、小魚のほか、乳製品などにもリンが多く含まれています。ちょっと意外なところでは、納豆や大豆などの植物性タンパク質の豆類もリンが豊富です。

リンに気を付けたほうが良い理由は?

■リンが過剰になると犬の体はどうなるの?

リンは本来、過剰になった時には、腎臓の調節機能によって余分な量を尿から排出されています。しかし、加齢や慢性腎不全などの病気によって腎臓の機能が低下することで、リンが血液中に蓄積されていってしまうことになります。
血中のリンの量が過剰になった状態が続くと、リンとカルシウムの調節をつかさどるパラソルモンという名前のホルモンが作用するようになります。

■パラソルモンの働きと慢性腎不全



パラソルモンは、腎臓の機能に働きかけてリンの血中濃度を下げようとする信号を出すほか、骨を溶かしてCaを放出させ、腎臓でのCaの再吸収を促進するという作用を持っています。パラソルモンは、どちらか一方だけに働きかけるのではなく、リンとカルシウムの両方の調整を同時に行うホルモンなのです。

さて、腎臓の機能が低下している犬たちの場合、パラソルモンの指示通りに排出することは難しいので、どんどん骨から過剰にカルシウムを取り出し続けてしまうことになります。それにより、骨が弱くなってしまったり、腎臓にカルシウムの結晶ができたり、組織にダメージを与え慢性腎不全に繋がってしまいます。
このことから、シニア期の犬たちや腎臓に不安がある犬たちには、リンの制限が必要だといわれています。
また、慢性腎不全などの診断を受けている犬のための腎臓ケアの療法食などでは、リンを多く含むタンパク質が抑えられているドッグフードであることが多いのです。

DOG's TALK

慢性腎臓病と診断された犬たちの場合、腎臓へかかる負担を軽減するために、リンの制限を行うことで症状の進行を遅らせることが出来るといわれています。慢性腎臓病はシニア犬に非常に多い病気で、「治らない病気」と思われる方も多いかもしれませんが、進行をゆっくり遅らせることはできる病気です。

リンとカルシウムの比率について

先ほどのパラソルモンのお話でも触れましたが、基本的にはリンとカルシウムの調整は同時に行われるため、食事のリンとカルシウムのバランスが重要だといわれることが多いです。一般的に、犬の食事のリンとカルシウムの比率は、1:1~1:2が適切だといわれることが多いです。総合栄養食の基準を満たしているドッグフードであれば、基本的にはこの基準を満たしています。

手作り食の場合、一食でリンとカルシウムのバランスを調整することは難しいのですが、高タンパク質の食材を使用した後に、少しタンパク質を抑えた食事を取り入れるなどメニューに工夫が必要で、少し長いスパンで調整を行っているという方が多いようです。

リンが少ない食事ってどんなもの?

カルシウムとのバランスがとても大切なリン。中~長期でリンとカルシウムのバランスを調整する際に知っておきたいのは、どんな食品にリンが少ないのかということですよね。
それはズバリ、タンパク質が低い食事です。

タンパク質が高い食品はどうしてもリンの数値も高くなる傾向にあります。犬にとって良質のタンパク質は健康維持のためにとても大切な存在ですが、腎臓ケアが必要な犬にとってはその量の調整も大切になってきます。
腎臓ケア向けの療法食などをチェックしてみても、タンパク質は15%前後のものも多く、今はやりのグレインフリードッグフードなどと比較すると低くなっています。グレインフリードッグフードは肉の使用量が多くなるので、そのぶんリンの数値も高くなりがちです。その時その時の犬の体調に合わせてドッグフードを選んでいくことが大切です。

まとめ

腎臓が心配な犬たちや、シニア犬であればリンの制限は必要なことですが、すべての犬たちがリンを抑えた食事を摂らなければいけないということではありません。また、リンそのものは犬たちの健康的な暮らしに必須の栄養です。
また、犬たちの健康を維持するためには、カルシウムと適切なバランスで摂取することで、影響を抑えることが可能です。シニア犬やもうすぐシニア犬の仲間入りをする犬たちの健康的な食事を意識するときには、覚えておきたいポイントです。