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2021.11.22

犬の下痢、食事はどうする?原因とドッグフード選びのポイント【獣医師監修】

犬の下痢、食事はどうする?原因とドッグフード選びのポイント【獣医師監修】

犬の食事選びに関するお悩みを聞いていると、犬の下痢や軟便が続いているというものを聞くことがあります。多くの飼い主は下痢・軟便に悩む犬のフード選びで迷ってしまうことが多いようです。

そこで、今回は下痢や軟便が続く理由と消化器系の健康維持を意識したドッグフード選び、そして対策についてご紹介します。

軟便は消化器系のトラブルのひとつですが、そういった犬のドッグフードを選ぶ際にはどのようなポイントがあるのかを正しく知り、暮らしに役立てていただければと思います。

犬の下痢・軟便の種類は?

犬の下痢・軟便は、大きく分けて2つに分けられると思います。
まず、1つめはウンチの水分量が非常に多く、血液や透明~半透明の粘膜などが混ざっている場合。このタイプの下痢がみられるとき、多くの場合は犬も元気がなくぐったりしていたり、食欲がないことが多いようです。急激に症状が悪化することも多いです。
これらの下痢はウイルスや寄生虫、病気が関係している可能性が高いので、速やかに動物病院での獣医師による処置が必要になります。

2つめは、犬自身が元気や食欲がありながら、ウンチの水分量がやや多く、手でつかむことができないくらいの柔らかさの状態の場合。
この時、直前に食べなれないものを食べていたり、フードやオヤツを食べ過ぎていないかを確認しましょう。普段食べ慣れていないものを食べたり、大量に食べたことで下痢気味になったり、軟便になりやすい犬は多いです。
しかし、フードを変えたり、食べ慣れていないものを食べさせたことがないのに、突発的に軟便になってしまうというケースもあるようです。
犬自身は元気があるので、普段通りの暮らしを送ることはできても、ウンチが安定しないと何かと困ってしまいますよね。

緊急性が高い1つめのタイプの軟便は獣医師による適切な処置が必要ですが、2つめのようなパターンの場合、食事などの工夫で犬のお腹の健康維持を意識してみましょう。

■ 犬のウンチの理想的な状態は?

犬の理想的なウンチはどんなウンチだと思いますか?
バナナ状でするっとスムーズに出るウンチが理想的だといわれています。また、それよりもやや水分量が多い半練り状のウンチも良い状態だといわれています。いずれも犬が踏ん張ることなくスムーズに出てくることがポイント。
そうしてスムーズに出てくるウンチはニオイも控えめだといわれています。

犬が頑張らないと出てこないウンチはやや固め~固めのウンチです。
ウンチの状態をチェックするときには、ウンチそのものだけではなくウンチをするときの犬の様子も確認していくようにしましょう。

犬の下痢・軟便が続く原因

■腸内環境が乱れやすい

犬の下痢や軟便が続いてしまう理由の代表的なものには、腸内環境の乱れがあります。
犬だけではなく、ほ乳類の腸の中にはたくさんの細菌が暮らしていて、健康維持に役立つ成分を作ったりするもの(有用菌)や増えすぎると厄介な働きをするもの(悪玉菌)、どちらでもないもの(日和見菌)などがあり、それぞれが絶妙なバランスで共存している状態が理想的だといわれています。

腸内細菌の中には、人間が本来消化できない食物繊維を分解して別の栄養に作り替えるものや、腸の働きをサポートする成分を作るものなどがあります。
これらの有用菌は消化そのものに関係しますので、消化を適切に行うためには非常に重要な存在になります。
また、腸の中で悪玉菌が作る有害物質の中には腸の働きを妨げるものもありますが、そういった厄介者の菌が増えすぎてしまうことを防ぐことも重要です。

何度もお伝えしている通り、腸内細菌はとにかくバランスが大切ですが、日々バランスが変化し続けています。とくに軟便や下痢になり、ウンチの回数が増えると腸内細菌が排出されることも多くなり、菌のバランスが乱れやすくなるといわれています。
断続的に下痢や軟便を繰り返している犬は、腸内細菌のバランスが乱れやすくなっている可能性が高いです。

 

■腸の動きが悪くなってしまっている

腸内環境のバランスが乱れてしまっている犬は、腸の動きそのものが悪くなってしまいます。

腸内細菌のバランスが崩れたり、栄養バランスが偏った食事を続ける、ストレスがかかる環境が続くなどの原因で、腸の運動が過剰になると、腸の内容物が急速に通過するため水分や栄養の吸収が十分に行われず、水分量の多い便、つまり軟便になります。
また、腸からの水分分泌が増えると、腸の中の水分が異常に多くなり下痢や軟便を起こしやすくなります。

断続的に続く犬の軟便は、腸内細菌のバランスの乱れ、そして腸の動きの以上が相互に関係しあっていることが多いようです。
何度も繰り返してしまう犬の軟便の対策を行うためには、腸内細菌へのアプローチと腸の適切な働きなどの両面からアプローチをしていくことがカギになります。

繰り返す下痢や軟便に悩んでいる時のドッグフード選び

犬が下痢・軟便に悩んでいるときに、「ドッグフードが原因なのでは?」と考える飼い主も多いですよね。
それだけが理由になることは少ないと思いますが、まずは下痢・軟便を繰り返してしまう犬のドッグフード選びをするときに意識したいポイントをまとめます。

 

■腸内環境を整える成分を含むドッグフードを選ぶ

多くのプレミアムドッグフードでは腸内細菌のバランスを整えるのに役立つ成分を配合しています。
腸内環境を健康的な状態に維持する成分として代表的なものとして、乳酸菌やオリゴ糖などのほか、腸内細菌のえさとなる繊維質をより多く含むフードを選んでみてください。
原材料としてお腹の健康維持を意識して使用されることがあるものには、スイートポテト、ビートパルプ、トマトポマスなどがあります。

犬の下痢や軟便が続いている時、お腹の調子が落ち着くまではしばらく消化器系の健康維持を優先して、消化器系療法食を与えるという方法も一つの方法になります。

消化器系療法食でもこれらの成分が含まれているものが多いですが、最近ではこれらの成分にプラスして注目されつつあるキーワードにプロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスなどがあります。これらのキーワードはいずれも腸内環境を整え、さらには免疫系に嬉しい働きをすることを期待されていることが多いようです。

 

■いつもの食事にプラスしてみる サプリメント

犬の下痢や軟便が続き、お腹の調子が安定しない犬がドッグフードを切り替えるというのはリスクが伴います。食べなれないものを食べて再度下痢や軟便を引き起こしてしまうことが怖い、という場合は食べなれているフードにサプリメントをプラスして腸内細菌に働きかけてみる方法もとることができます。

今回ご紹介するサプリメントは、いずれも自然由来の成分を中心にしたものばかり。下痢を止めるような働きのものではなく、継続して使用することで腸内細菌の乱れが起こりにくくなるような腸内環境を維持してくれます。
何度も繰り返してしまう軟便などに悩んでいる時は、再び腸内細菌のバランスが崩れてしまう時に備えて毎日のお腹の健康維持として使っていくことがオススメです。

おわりに

本日は何度も繰り返してしまう犬の軟便に悩んでいる時に意識したいポイントをご紹介しました。犬が軟便に繰り返しなってしまう時には、動物病院で処方される下痢止めなどの対症療法的な対処と合わせて、家庭でのケアの方法も知っておくと安心ですね。
下痢を止める薬だけでは繰り返す軟便の根本的な対策にはなりません。
何度も軟便を繰り返してしまう犬の場合は、アレルギー、フードの原材料が合わないということも考えられますので、フード変更を検討してみてください。

DOG's TALK

この記事の監修 菱沼 篤子

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はPOCHIのアドバイザー、商品開発などに携わる。シニアの大型犬、小型犬と一緒に暮らしています。