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2023.04.10

Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.25 雨のフライボール決戦

Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.25 雨のフライボール決戦

写真・文 内村コースケ

犬は太古より人類と一緒に歩んできました。令和の世でも、私たちの暮らしにさまざまな形で犬たちが溶け込んでいます。このフォトエッセイでは、犬がいる情景を通じて犬と暮らす我々の「今」を緩やかに見つめていきます。

今回は、前回の犬ぞりレースVol.24<「犬ぞり」に見る犬と人の「最高の笑顔」>に続いて、ドッグスポーツの写真をお届けします。今回撮影したのは、3月26日に群馬県邑楽町で行われたフライボール大会「Spring storm Race 2023 」(フライボールレーシングパーティ FRP主催)。フライボールという競技を見るのは初めてで、おまけに一日中雨の予報。写真の狙いどころ、カメラ機材の選択や撮影位置についても未知数の部分ばかりだったが、ともかくどんな状況にも対応できるように、ありったけの機材と雨用の機材カバー、雨具、タオルなどを車に積んで現地に向かった。

果たして、会場の芝生広場に着くと本降りの雨。既に出場者の皆さんが雨除けのテントの下に集まっていた。今年は早く咲いた桜が満開だったが、さしずめ桜流しといったところだ。犬ぞりにも出場し、前回の記事でインタビューに応じてくれた中村孝子さんと、キャンディ(ボーダーコリーとスタッフォードシャー・ブルテリアにミックス)とカリ(ボーダコリー)の姿もあった。

慣れない雨中の試合とはいえ、ドッグスポーツを知り尽くしたスタッフが犬たちの安全に十分に配慮したうえでの開催だったが、機材トラブルの発生でスタートが遅れるハプニングも。僕の方も、最初は三脚に据えた超望遠レンズつきのカメラと手持ちの2台体制で撮影すべく一旦セットしたものの、テントの中にも水しぶきが舞う状況で2台を使い分ける余裕はないと判断し、割り切ってレインカバーにくるんだ手持ちのカメラ1台で撮影することにした。

一方、犬たちは、雨を全く気にする様子もなく、皆早く競技に参加したくてうずうずしている様子。厳しい自然環境とともにあったオオカミから受け継ぐ本能に訴えるドッグスポーツに、天候はあまり関係ないのかもしれない。





フライボールとは、4つのハードルを超えて15mの直線の先にある「フライボールボックス」にセットされたテニスボールをキャッチして、再びハードルを跳びながらスタートラインに戻る競技。1970年代後半のアメリカで考案された。

1対1や2対2のレースもあるが、花形は4頭のチームによるリレー(4on4)だ。フライボールに向いているとされるのは、「ラーチャー」と呼ばれる足の速いグレイハウンドなどの血を引いた中・大型のサイトハウンドだが、ハードルの高さをチーム内の最も体高の低い犬に合わせるため、「ハイトドッグ」と呼ばれる小型犬を1頭入れるのが定石。そうしたチーム競技ならでは駆け引きも魅力の一つだ。もちろん、参加できる犬種に制限はなく、比較的シンプルな競技なため、本場アメリカでは幅広い層に人気がある。

フライボールボックスは、犬がステップに足をかけるとボールが飛び出す仕組み。この大会のものとは仕組みが異なるボックスを使い、より滞空時間の長いボールをキャッチする競技スタイルを採用している団体もある。今回のタイプのボックスは欧米で一般的なもので、ボールが飛び出した瞬間にパッと咥えてUターンするシーンが最も迫力のあるシーンの一つだ。







(上4枚)フライボールボックスからボールをキャッチする様子。全速力でボックスに飛びつくと、壁に足をついた勢いでボールが飛び出す。その瞬間にボールをキャッチし、水泳のターンのように壁を蹴って方向転換する。

(上4枚)フライボールボックスからボールをキャッチする様子。全速力でボックスに飛びつくと、壁に足をついた勢いでボールが飛び出す。その瞬間にボールをキャッチし、水泳のターンのように壁を蹴って方向転換する。









ドッグスポーツでは、リレー形式の競技はほかにほとんどない。目にも止まらないスピードで展開するレース自体の「熱さ」はさることながら、チーム内での人と犬の絆や対戦相手とのチーム同士の交流といった温かい部分もこの競技の魅力だ。ファインダー越しからも、参加者の皆さんの「心」が感じられ、それが冷たい雨でずぶ濡れになりながら人も犬も皆が笑顔でいられる秘密だと思った。

それでは、百聞は一見にしかず。雨の中躍動した犬たちの名シーンをたっぷりとどうぞ!











































■ 内村コースケ(写真家)

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒。中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験後、カメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「撮れて書ける」フォトジャーナリストとして、ペット・動物愛護問題、地方移住、海外ニュース、帰国子女教育などをテーマに撮影・執筆活動をしている。特にアイメイト(盲導犬)関係の撮影・取材に力を入れている。ライフワークはモノクロのストリート・スナップ。日本写真家協会(JPS)正会員。