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2023.09.06

ハンティングに不可欠な存在!現在も活躍するNZの猟犬とは?~南半球のDog's letter~

ハンティングに不可欠な存在!現在も活躍するNZの猟犬とは?~南半球のDog's letter~

世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?共通してる?目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。

たくさんの犬たちが得意なことを活かして人々の仕事を手伝っている、ニュージーランド。日本では仕事をするよりも、家庭でのんびりする子が多くなってきている「猟犬」たちも、この国では現役バリバリで働いています。

改めて考えると、猟犬にルーツを持つ犬種は多くいるものの、猟犬のお仕事ってどんなものなのか、あまりよく知られてはいません。
そこで今回は、現在も働く「猟犬」たちの仕事について、紹介していただきました。

DOG's TALK

この記事を書いた人:グルービー美子

この記事を書いた人:グルービー美子

ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。

NZでは環境保護、伝統競技としてのハンティングが行われています

犬たちが猟犬として活躍し続ける国、ニュージーランド。その背景にはこの国ならではの事情があります

犬たちが猟犬として活躍し続ける国、ニュージーランド。その背景にはこの国ならではの事情があります

政府機関である環境保護省(DOC)や土地の所有者の許可を取れば、一般人でもハンティングが可能なニュージーランド。

食糧確保、農業の保護、野生動物の調査や個体数調整などのほか、スポーツ、伝統的な競技としても広く認知されており、子供向けの狩猟大会も開催されているほど。
海外からハンティングのためにこの国を訪れる人も多く、ハンティング専門ガイドも多数活動しています。
今回はそんなハンティングに欠かせない、ニュージーランドで活躍する猟犬についてご紹介します。

■ ニュージーランドで猟犬がメジャーな理由

ハンティングというとあまり良いイメージを持たない方も多いかもしれませんが、ニュージーランドではもともとの自然を守るために行われている側面が大きいです。
というのも、ニュージーランドには歴史的に多くの動物たちが持ち込まれ、繁殖してきたという経緯があります。これらの動物はもともと生息してきた動物や植物の生息域を侵略し、生態系のバランスを大きく崩し、絶滅に追いやってしまったこともありました。ドッグフードの原材料として人気の鹿だって、ニュージーランド本来の生態系には存在しない外来種なのです。

外来種から独自の生態系を保護するためには『どんな外来種がどれくらいの数、どの地域に生息しているのか』を調べ、適切な方法で数を制限する必要があります。その役割を担っているのが、ニュージーランドのハンターであり、猟犬たちです。
ニュージーランド在来種や生態系への影響をなるべく少なくするため、狩りを行うことができる動物の種類や数、エリア、ハンティングの方法は厳密にルールが定められています。(※在来種の動物たちを攻撃することは違法です)

豊かな自然を守るため、あえて伝統的な方法を取る必要があることも、ニュージーランドで猟犬が活躍する理由の一つになっています。

独自の生態系を壊してしまったという苦い経験が、環境保護の精神につながっています

独自の生態系を壊してしまったという苦い経験が、環境保護の精神につながっています

猟犬に必要な能力とは?

美しい毛並みが特長のワイマラナー。ニュージーランドでは優秀な猟犬として人気があります

美しい毛並みが特長のワイマラナー。ニュージーランドでは優秀な猟犬として人気があります

ニュージーランドで狩猟の対象となっているのは、鹿、シャモア、タール、野豚、ワラビー、ヤギ、ポッサム、野兎、水鳥(いずれも国外から持ち込まれた外来動物)など。
ハンティングには厳格な規則やルールが設けられており、狩りをする人の許可は当然ですが、犬自体も申請をしてパーミッション(免許、許可証)を取得しなければなりません。

猟犬のデータ取得を目的に犬の能力テストを行っている団体「ニュージーランド多用途狩猟犬試験協会」のマーガレット・コットンさんに尋ねたところ、この国で猟犬として活躍している犬種は、ブリタニースパニエル、チェスキー・フォーセク、ジャーマンショートヘアードポインター 、ジャーマンワイヤーヘアードポインター、ミュンスターレンダー、ビズラ、ワイマラナーなどが多いとのこと。
また、最も重要な素質は、犬が自身の気質をコントロールできるかどうかだと話してくれました。

 

自然の中で行われるハンティングは、一歩間違うと大事故にもつながることがあります。落ち着いて対処できることが大切です

自然の中で行われるハンティングは、一歩間違うと大事故にもつながることがあります。落ち着いて対処できることが大切です

「自分の気質をコントロールできる犬は、状況に応じて臨機応変に働いてくれます。私たちの団体のテストはヨーロッパ様式に基づくもので、その犬種が持つ本能的な力と、訓練で得た技術の両方をジャッジします」
特に多目的用途の猟犬には、野山を素早く走り回る身体能力や獲物の居場所を探す嗅覚、陸上や水中から獲物を回収する技術などが求められます。
同団体では生後6カ月から16カ月の若い犬を対象に本能的な力のテストを、12カ月以上の成犬には訓練による技術を見るテストを行っているそうです。

 

「犬によって得意な種目とそうでないものがありますが、訓練すれば大概の犬はすべての項目で平均以上の仕事ができるようになります。若い犬のほうが身体能力は高いですが、老犬になっても回収は可能ですし、経験がものをいう場面も少なくありません。猟犬にとって大切な“飼い主の指示を理解し、従うこと”がしっかり身についているのが、ベテラン犬の利点といえます」
初めてテストを受ける若い犬は合格基準に達しないこともあるそうですが、このテストは落とすのが目的ではなく、その子に何が足りないかを見極めてより良い犬に育てるための指針であるとか。
自然が相手のハンティングは一歩間違えると事故につながりかねないため、人間にも犬にもしっかりした知識と技術、そして教育が必要なのです。

獲物を回収するレトリーブも立派なお仕事。犬の遊びの中にもハンティングにつながる要素はたくさんありますね

獲物を回収するレトリーブも立派なお仕事。犬の遊びの中にもハンティングにつながる要素はたくさんありますね

優れた猟犬は、心優しい家庭犬でもある

日本でなじみ深いレトリバーたちも、もともとは猟犬でした

日本でなじみ深いレトリバーたちも、もともとは猟犬でした

猟犬登録の規定は地域によって異なりますが、飼い主と犬が講習を受け、テストに合格することを条件としている自治体も少なくありません。
猟犬になるための訓練は飼い主自身で行うほか、専門のトレーナーに依頼することも。
ニュージーランドの猟犬は信頼できる猟の仲間であるだけではなく、穏やかで温かい家族の伴侶であることも重視されます。
猟犬を含めた犬の訓練全判を扱う学校「ベスト・ビヘイビアー・ドッグトレーニング」によると、猟犬の訓練は一般の家庭犬として上手に暮らすためにも役立てられているといいます。

 

トレーニングで培った落ち着きや判断力は、街での暮らしでも役立ちます

トレーニングで培った落ち着きや判断力は、街での暮らしでも役立ちます

「大きな物音を聞いても冷静でいられる、ニュージーランド固有の生物を襲わない、見慣れないもの(毒エサなど)を誤って食べない、ノーリードの状態で突発的なことが起きても飼い主のコマンドを聞くといった訓練は、猟に出ない家庭犬でも日常生活で役立つ場面も少なくありません。猟犬としての仕事以外の時間は、家庭犬として一般の家庭で過ごすことになるのですから、良い猟犬は良い家庭犬である必要もあるんです」

ニュージーランドでは国内各地で定期的に狩猟大会が行われ、犬と一緒にスポーツ感覚でハンティングのトレーニングに親しむ人も多いとか。
そうした大会では獲物を得た犬たちが、皆どこか誇らしげな表情。
ニュージーランドの猟犬は、その能力を生かして楽しく働いているようです。

 

犬たちにとっては、家族や仲間と一緒に取り組めるハンティングは、充実感にあふれた時間のようです

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