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2025.09.11
ドイツの街角から~夏場のマルクト(市場)の様子~
*1 pochinski: スペインで保護された犬と暮らす、ドイツ在住の旅行&ファッションライター。趣味は犬の絵を描くこと、犬の首輪や冬用のセーターを作ること、たまに犬の手作り食やケーキ作りも。犬と暮らす日常のひとコマを不定期にお届けします。
我が家の飼い犬、タビィは決して散歩好きな犬とは言えません。道端で立ち話している人々や公園で遊ぶ子どもたちの笑い声、あいさつしようと近づいてくる犬、どこからともなく聞こえてくる大きな物音など、怖いものがあちこちにあるからです。
そんなタビィがとても楽しみにしている散歩の目的地があります。マルクトです。「マルクト」とは日本語で「市場」のこと。タビィはマルクトに並ぶスタンドの店員さんからもらえる“おやつ”を楽しみにしているのです。
ドイツのさまざまな街では日曜日や祝祭日を除き、毎日のようにどこかでマルクトが開かれています。私たちが暮らすケルンには約40カ所ものマルクトがあるのだそう。家から歩いて行ける範囲にも5つのマルクトがあり、日替わりで開かれています。
緑に囲まれた夏のマルクト。
ケルンの場合、マルクトは常設ではなく、広場や公園などの広いスペースを利用して開かれます。出店者の種類や雰囲気はそれぞれ異なりますが、一般的なマルクトには八百屋や精肉店、鮮魚店、生花店、パン屋、チーズ店など、日常生活に必要となる品々を扱うスタンドが並びます。さらに、人々が買い物途中で一息つけるコーヒースタンドや軽食のスタンドなども多くのマルクトにはつきものです。
旬の野菜や果物、魚、花などが並ぶスタンドから季節の移り変わりを感じられる点もマルクトの魅力です。例えば、盛夏から晩夏に向かういまの時期、八百屋のスタンドに並ぶ旬の果物はプルーンやアプリコット、グリーンゲージなど。さらに、さまざまなキノコ類、かぼちゃといった秋らしい青果も登場します。
さまざまな果物が並ぶスタンドと、マルクトを彩る生花売場の花たち。街中の生花店よりも割安に購入できるのもマルクトならでは。タビィは花よりも、その先にある鮮魚店が気になっています。
そんなマルクトも、8月の売場はややにぎわいに欠けます。夏の休暇でケルンを脱出する人が多いため、買い物客や出店するスタンドも通常よりも少なめです。買い物の選択肢は減ってしまうのですが、人混みが苦手なタビィにとっては好都合かもしれません。
おやつのためには、店員さんの「待て」や「お座り」のコマンドも聞きます。
毎週のようにマルクトを訪れるタビィは、各スタンドの店員さんからも知られる存在となりつつあります。特に、鮮魚店の店員さんはタビィを「ともだち」と呼び、小魚を手渡ししてくれるほどの仲です。店員さんを前にしたタビィはいまだにおどおどするものの、差し出された小魚を拒むことはありません。このように、店員さんとのふれあいを通して成長するタビィの姿を見れるのもマルクトを訪れる楽しみのひとつとなっています。


