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2019.03.06

子犬の成長に必要なカルシウムの摂取量と与え方

人にも犬にも成長期に必要とされるカルシウム。一般的に必要と言われてはいるものの、実際はどのように与えるのが適切なのでしょうか?
実は成長期のパピーにとってカルシウムを過剰に摂取することは、体調へ思わぬ影響を及ぼすこともあります。
子犬の体作りに必要な栄養がすべて含まれているパピー用総合栄養食のドライフードが主流となって、あまり気にすることが少なくなりましたが、手作り食やトッピングする飼い主も格段に増えてきたことを受け、今回は、摂取量や与え方など、犬とカルシウムについてご紹介します。

子犬に必要なカルシウムの摂取量の目安


子犬の成長に必要なカルシウムの摂取量は、体の大きさの差や犬種の差にもよって異なるため明確な数値はありませんが、成犬では、242mg✕体重(kg)、子犬では484mg✕体重(kg)が必要摂取量の目安(AAFCO基準)と考えられています。

犬用総合栄養食であれば、この基準を十分に満たしていますので、総合栄養食タイプのドッグフードを与えているようであれば、成長期だからと言ってカルシウムをさらにサプリメントなどで与える必要はありません。
たしかに成長期に必要なカルシウムですが、摂取し過ぎると逆に犬の体に良くない影響を与えることもあります。

カルシウムだけに特化してたくさん与えるというよりも、栄養バランスのとれた食事を与えることが大切だと考えておきましょう。

例えば、犬の健康に影響を与える栄養素として、「リン」が挙げられますが、カルシウムの摂取が不足してリンの摂取が過剰になると、カルシウムの吸収を阻害するはたらきがあります。

したがって、カルシウムと比較してリンをより多く摂取する状態になると、犬が「低カルシウム血症」や「高リン血症」になることがあるのです。

カルシウムとリンをバランスよく摂取するならば、「カルシウム:リン=1.5:1」程度を目安にするといいでしょう。

嗜好性を高めたり、体作りの基本である動物性タンパク質をプラスするためのトッピングには、できる限り「カルシウム:リン」のバランスを整えている、犬用レトルトや缶詰が、特に成長期にはオススメです。
例えば、鶏肉にはリンが多く含まれており、バランスの取れたドッグフードにトッピングしてしまうと、せっかくのバランスが崩れてしまうことがあります。

カルシウムの与え過ぎは犬の病気を招くことも


子犬にカルシウムを過剰に与えてしまうと、成長に伴い骨や関節に異常が生じることがあると言われています。

子犬用のドッグフードは、既に犬の成長に必要なカルシウムを含んだ状態で作られているため、あえてカルシウムを補う必要はないでしょう。

特に、子犬用のフードにはカルシウムがやや多めに含まれているものも多くあります。そのため特別な食事メニューにしなくても、十分に必要なカルシウム量を摂取できていると考えられます。

また、大型犬や超大型犬は、過剰なカルシウムの摂取によって成長のスピードが速まり過ぎ、自分の体に負担をかけてしまうことがあります。

カルシウムの過剰摂取は、犬が本来の速度で成長するのを妨げてしまうことにつながり、結果として骨格に異常が生じる危険性もあります。フード選びの際には、ドッグフードに含まれているカルシウム量が適切な量であることを確認し、与えるようにしましょう。

成犬の場合でも、カルシウムを過剰に摂取したからと言って骨などが丈夫になるなどの効果は特にみられません。また、カルシウムとシュウ酸などのミネラル類が結びついて結晶や結石の原因となるケースもあります。
その場合は適切な療法食を与えることが必要になります。

DOG's TALK

ペット栄養管理士:U

カルシウムは、体内への吸収がされにくいので、継続してバランスよく与えたほうが良いと思います。
トッピングでは、総合栄養食になっている缶詰や最近では犬たちが喜ぶおかずのようなレトルトも比較的吸収されやすいカルシウムを使用し、リンとカルシウムのバランスが調整されているアイテムが増えています。ただ、「栄養補完食」と書いてある缶詰やレトルトは、リンとカルシウムの調整がされているかどうか、チェックしてみてくださいね。

カルシウムが不足するとどうなるの?

とり過ぎは犬の体に良くない影響を与えるカルシウムですが、不足しても健康へ悪影響をおよぼします。

犬のカルシウム不足で起こりやすいのは「低カルシウム血症」です。ただし、これらは子犬だけではなく、出産後の授乳によってカルシウムが不足してしまった母犬に多く起こるとされています。

低カルシウム血症になると、骨折をしやすくなったり、筋肉にしびれやけいれんが起こり立てなくなったりする症状がみられます。子どもを産んで授乳中の母犬に異常がみられたら、すみやかに動物病院へ連れて行ってあげましょう。

おわりに

今回は、子犬の成長とカルシウムの関係についてお伝えしました。

成長期の子犬の体に必要とされるカルシウム。栄養バランスのとれたドッグフードには1日に必要な適量が含まれているため、不足の心配はあまりないと考えられますが、過剰摂取にならないよう気を付ける必要があります。

カルシウムの過剰摂取は骨や関節の異常につながる恐れがありますが、出産後に多くみられるカルシウムが著しく不足する低カルシウム血症もまた、犬の健康を大きく損なう恐れがあります。

ライフステージによって、犬のカルシウムの必要量は変化します。すくすくと育つ成長期の子犬には、豊富なカルシウムと毎日のバランスの良い食事が何よりも大切なのです。

適切なカルシウム量が含まれたドッグフードを使用するとともに、不足しがちな栄養素はトッピングやサプリメントで補ってあげましょう。