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2021.05.13

ドッグフードの有機ミネラルってどんなもの?ミネラル類に関するちょっとした豆知識

ドッグフードの有機ミネラルってどんなもの?ミネラル類に関するちょっとした豆知識

ドッグフードやサプリメントの商品説明をチェックしていると、ちょっと分かりにくい専門用語のようなものを見つけることがあります。普段はあまり気にせずに流し見してしまっているこういった用語の中から今回は、有機ミネラルについてご紹介します。

「そういえばこれってどういう意味なんだろう?」と気になっていた方はぜひご覧ください。

有機ミネラルとは?

まず、有機ミネラルとはどんなものなのでしょうか?
ミネラルの多くは水に溶けにくく、体内にあまり吸収されない傾向があります。これらのミネラル類を体内で別の物質と結びつけて吸収できるようにしています。この時、鉄などでは細胞を傷付ける活性酸素を出してしまうことも分かっています。

有機ミネラルの中でも特にタンパク質と結びついたミネラルをタンパク質キレートミネラル、タンパク質よりも小さなアミノ酸と結びついたものをアミノ酸キレートミネラルと呼びます。
また、酵母にミネラルを吸収させた「ミネラル酵母」と呼ばれるものもあります。酵母とミネラルを同時に摂取することができ、なおかつ単なるミネラル比較して粒が大きくなるのが特長です。ドッグフードを製造する際にはミネラル酵母の方が他の原材料と混ざりやすく、使いやすいといわれています。
これらの有機ミネラルは有機化されていないミネラルと比較すると腸からの吸収が良くなるといわれていて、ミネラルを効率的に摂取することにつながります。
また、有機物と結合することで成分が安定し、熱や酸素など成分を変質させる要因からの影響を受けにくくなります。

■ キレートとは

キレート化とは、ミネラル類を吸収しやすい形にするために行われる処理です。
この時、金属の原子と結びついたアミノ酸の形がカニのハサミに似ている形になることから、古代ギリシャの言葉でカニのハサミを表すキレート(chelate)にちなみこの処理をキレート化と呼びます。

有機ミネラルをドッグフードに使用する理由

有機ミネラルにすることで、本来は吸収しにくい一部のミネラル類を消化しやすい形にすることが出来ますが、必ずしもすべてのミネラル類で吸収効率が上がるという訳ではないので、注意が必要です。

鉄、セレン、クロムなどは有機ミネラルと無機ミネラルで比較すると有機ミネラルのほうが吸収効率が高いのですが、亜鉛、銅などではまだ有機ミネラルの方が吸収がよいというには十分な証拠が得られていない状態です。
亜鉛の吸収を阻害することが知られているカルシウムの摂取量が増えても、成犬の有機亜鉛の吸収効率には変化は見られなかったというデータもあり、現在進行形で研究が進められている最中のようです。

また、犬のライフステージによっても有機ミネラル・無機ミネラルの吸収には変化が見られ、亜鉛の場合は子犬の頃は有機亜鉛の吸収がよくなりますが、成長のスピードがゆるやかになると有機亜鉛の吸収性も徐々に低下していくことが分かっています。

さらに、有機ミネラルの形になったことで、本来体に吸収されるはずのものとは違う形でミネラル類が取り込まれてしまい、上手く体内で活用できないケースもあります。

ミネラル類同士は互いに影響しあい、吸収や利用効率を高めたり、阻害しあうことによって体内のバランスを維持する働き(ミネラル間の相互作用)と呼ばれるものがあります。特定のミネラルだけを過剰に摂取してしまうと、関連するほかのミネラルの吸収が阻害されてしまう可能性もあります。

相互作用を持っているミネラル類を効率的に取り入れるのはとても難しく、総合栄養食の基準を満たしたドッグフードを製造する際にはミネラル類の調整に細心の注意を払って作られています。多くの量の原材料を混ぜて大量に製造するドッグフードの製造では、成分が安定していることから微量ミネラルの調整に有機ミネラルをあえて使用することもあります。

おわりに

今回は犬のミネラルの吸収と、有機ミネラルについてご紹介しました。アミノ酸やタンパク質、酵母などと結びついたミネラル、というとなんだか体に良いイメージがあったという方も多いのではないでしょうか。ですが、吸収効率が上がったとしてもミネラル自体の特性やミネラル間の相互作用などによっては、あまり効果が期待できないものもあります。

子犬は有機ミネラルの方が吸収効率が高くなることもありますし、手術後の犬や出産を控えた母犬にとって不足しやすい鉄を効率的に取り入れる際には有機化されたものの方が効率的であると考えられます。有機ミネラルだからよい、そうではないから「よくない」と判断ができないのも難しいところですね。

10t単位で作られるドライフードであれば微量な配合量(割合)であってもそれなりの量になりますが、10㎏単位で作る場合は10tの1000分の1になるため、ミネラル類の計量はとても大変です。
そのため、吸収の過程においては必ずしも有機ミネラルの方が優れているわけではないようですが、ドッグフードなどを製造する過程では微量なミネラルを添加する際に有機ミネラルを添加するケースが多く、この背景には均一に混ぜる必要があるドッグフードには粒が大きく、品質が安定している有機ミネラルの方が向いているということがあるようです。