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2022.03.03

ドイツの街角から ~犬と人々の暮らしの関わり。ドイツで行われている犬税とは?~

ドイツの街角から ~犬と人々の暮らしの関わり。ドイツで行われている犬税とは?~

*1 この記事を書いた人:pochinski スペインのマジョルカ島で保護され、家族になった犬と現在ドイツで暮らす旅行&ファッションライター。趣味は犬の絵を描くこと、犬の首輪や冬用のセーターを作ること、たまに犬の手作り食やケーキ作りも。犬と暮らす日常のひとコマを不定期にお届けします。

わが家の犬、14歳のポチンスキーは、ここ1,2年前までは病気やケガとはほとんど無縁の犬でした。最近はシニア犬にありがちな健康面のトラブルで獣医に通う数も多少増えましたが、以前は年に1度のワクチン接種が唯一、獣医を訪ねる機会だったほどです。そのワクチン接種の時期と重なるように、毎年1月から2月にかけて年に1度、ケルン市からポチンスキー宛て、正確には飼い主である私たち宛てに封書が届きます。犬税(Hundesteuer)の通知です。

ドイツでは、犬税の支払いが飼い主に義務づけられています。居住地の自治体に登録した犬には税金番号が与えられ、その登録情報に応じてわが家にも犬税の支払い請求が毎年届きます。

 

 

私たちとポチンスキーが暮らしているのはケルンの都市部になります。

私たちとポチンスキーが暮らしているのはケルンの都市部になります。

平均的な1年分の犬税は100ユーロ(約1万3千円)前後ですが、税額は自治体によって大きく異なり、地方よりも都市部のほうが高く設定されています。さらに、ピットブルや土佐犬といった闘犬の犬税も高めです。犬税を高くすることで、都市部における犬の数や、闘犬の数を抑えるという狙いもあるようです。ちなみに、ポチンスキーは闘犬ではありませんが都市部に住んでいるため、税額は平均的な税額よりも高めの156ユーロです。

 

こちらのドッグランは囲いもなく広々としており、いつも犬たちが遊んでいます。ただし、公園を行き交う人や自転車には注意しなければなりません。

こちらのドッグランは囲いもなく広々としており、いつも犬たちが遊んでいます。ただし、公園を行き交う人や自転車には注意しなければなりません。

犬税の支払いは義務であるため、義務を果たさない飼い主には罰金が課せられます。罰金は最高で1万ユーロです。自治体に登録した犬には税金番号を刻印したメダルが与えられ、そのメダルを外出時に首輪などにつけなければなりません。メダルをつけずに散歩し、公的機関である秩序局の局員に見とがめられて犬税を払っていないことが分かると、罰金が課せられる可能性もあります。

パンデミックの中、各国で犬を飼い始める人が増えたと言われていますが、ドイツではその傾向が税収にはっきりと出ています。
連邦統計局によると、犬税の税収は2020年が前年よりも2.7%多い3億8000ユーロに、2021年は第1四半期だけで前年同時期よりも8.4%多い約1億5900万ユーロ(※)という記録的な数字だったそうです。

 

左:リードなしに犬を遊ばせることができる、いわゆるドッグランの1つ。こちらは、公園の一角にフェンスで囲っています。この日、遊んでいる犬はいませんでした。 右:街に置かれているゴミ箱の一部にエチケット袋が備わっています。

左:リードなしに犬を遊ばせることができる、いわゆるドッグランの1つ。こちらは、公園の一角にフェンスで囲っています。この日、遊んでいる犬はいませんでした。 右:街に置かれているゴミ箱の一部にエチケット袋が備わっています。


徴収された犬税は目的税でなく普通税のため、犬のために使われることはありません。ですが、例えばケルンには公共エリアに70カ所以上のドッグランがあるほか、犬のウンチを処理するエチケット袋が公園や歩道など各所に設置されているなど、犬に関する行政サービスはそれなりに充実しているのではないでしょうか。
エチケット袋もドッグランも、ポチンスキーにとっては大変ありがたいサービスです。