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2023.12.07

犬に甘いもの・砂糖はあり/ナシ?中毒の可能性や危険と言われる理由について

犬に甘いもの・砂糖はあり/ナシ?中毒の可能性や危険と言われる理由について

多くの犬は大好きな飼い主が美味しそうに食べているものに興味を持ちます。物欲しそうな顔でおねだりをされたとき、「これは砂糖を使っているから、食べちゃダメなの」と犬に語り掛けたことはないでしょうか。

『犬に砂糖を使っている食品を与えてはいけない』と思っている方は多いかもしれません。実際は砂糖そのものが犬にとって有害、ということではなく、使用する量に注意が必要なのです。
だから、砂糖を結構な量使用している人間用の甘いものを犬に与える時には、それなりのリスクを伴います。

今回はそんな甘いものを犬に与える時のリスクと注意点を改めてまとめてみました。

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。

砂糖は犬に有害なものではありません

まず、大前提として犬にとって砂糖が有害なもの、というのは大きな間違いです。

一般によく使われる砂糖=白砂糖の主成分はスクロース(ショ糖)と呼ばれるもので、これはブドウ糖と果糖の両方で構成されています。

ブドウ糖も果糖もいずれも自然界に存在している成分であり、犬自身もエネルギー源として活用することができる栄養素です。

ブドウ糖は非常に重要な栄養素の一つであり、脳が消費するエネルギーのほとんどがブドウ糖で賄われています。

ブドウ糖は、体内でも炭水化物を代謝することで作られていますが、使える形にするまで時間がかかります。一方で、砂糖を構成する成分の一部がすでにブドウ糖の形になっているぶん、スムーズにエネルギー源として使用することができるので、むしろメリットすらあります。

 

■犬は甘いものが大好きです

犬は甘みを感じるものを好むことが分かっています。当然、甘い砂糖を使っているものも大好き。

先ほどご紹介した通り、甘いということは効率的にエネルギーとして使える成分(糖)が豊富ということになります。だから、犬だけではなく、多くの生き物は甘いものが大好きなようです。

しかし、自然界では滅多に甘いものを獲得できないので、それだけ栄養としての糖は貴重なものだったと思います。

 

犬は、人間のような虫歯にならない

人間では砂糖を食べると虫歯になる、なんて言われますが、犬は「人間と同じ」虫歯にはなりません。
犬の口腔内トラブルと言えば、代表的なものは歯周病で、人間の虫歯とは原因となる菌や経過が異なります。

人間の虫歯の原因となる虫歯菌は、ミュータンス菌と呼ばれるもので、主に糖をエサにして繁殖し、酸を作り出して歯そのものを溶かしてしまいます。口の中に糖が多くあればあるほどミュータンス菌は繁殖して虫歯も進行していきますので、虫歯=糖と結び付けられることが多いようです。
このミュータンス菌は主に人間の口内のような弱酸性の環境で繁殖します。一方、犬の口内はアルカリ性に寄っています。そのため、ミュータンス菌が繁殖しにくい環境になっているのです。このことが、犬が「虫歯になりにくい」といわれている最大の理由です。

犬に多く見られる主な口腔内トラブルは、歯周病。犬の歯に付着した歯石を構成する菌が作り出す酸や毒素が、歯の周囲の組織や骨を溶かしていきます。こちらは歯茎や顎の組織や骨を溶かし、進行すると顎の骨の骨折などにも至ることがあります。

人間の虫歯とは口内トラブルの原因となる菌の種類や経緯が異なるため、糖が人間のような「虫歯」の原因になるとは言えません。

 

犬は砂糖で中毒にはなりません

砂糖が原因で犬が中毒症状になる、という話があるようですが、こちらも直接的には誤りです。砂糖には中毒症状を引き起こすリスクはありません。
ただ、犬は甘みをとても敏感に感じ、そして好む傾向があります。これは犬の味覚に関連する遺伝子によるものです。
そのため、甘い味のものを食べてしまうと、その味を覚えてすっかり夢中になってしまうことがあります。甘いものを欲しがり、主食となる栄養バランスが整ったフードを一時的に食べなくなってしまうことは、たびたびあるようです。
ただし、後述していますが、砂糖と甘味料は別物です。甘味料の中には注意が必要なものもあります。

 

■ 犬が甘いものを好きになった背景

犬が甘いものを好きな理由として、生き物は食べているものにどんな栄養が含まれているかを「味覚」を通して理解するということがあります。
「塩味」を感じさせるのは、塩を構成するナトリウムですし、タンパク質を構成するアミノ酸からは「うま味」、「酸味」の源は酢酸やクエン酸といった栄養です。
それぞれの味を好むということは、その生き物にとって味の源となる栄養が必要であるということを表しているのです。

甘味の場合は、糖に変換される炭水化物を多く含んでいると感じやすくなり、これが良いエネルギー源となることを知らせているそうです。
犬は甘いものを好むように、炭水化物を消化吸収することができますが、オオカミは犬と比べて炭水化物をエネルギーに換えるのがあまり得意ではありません。
これは、犬が人間と暮らすようになってから炭水化物をエネルギー源として使うように進化した結果だと考えられています。
だから、犬たちが甘いものを好むようになったのは、人間と一緒に暮らすようになってから…という説が有力視されているのです。

肥満のリスクには要注意

さて、砂糖繋がりで非常に優れたエネルギー源である炭水化物(=糖)ですが、そのエネルギー効率の良さがゆえに食べすぎるとすぐに太ってしまいます。
ましてや犬は甘いものを好み、食べたがる傾向ができていますから、ついついたくさん与えてしまって、体重が増えてしまった…ということにならないよう、注意が必要なのです。

危険な甘味料を知ろう

最近では、人間用のお菓子などで「甘味料」を使うことも多くなっています。
甘味料とは、その名の通り、さまざまな方法で作られた甘さを感じさせる添加物です。

同じ量で砂糖の数倍~100倍の甘さを感じさせるものもあり、少量で甘い味付けができるため、カロリーを抑えた砂糖の代替品として、清涼飲料水やガムなどさまざまな食品に使われています。
また、甘さを感じる強さに違いが合ったり、天然の酵母や微生物が作り出す成分があったりして、一概にはその性質を言い表すことができないものになってきています。使い方をかえれば、犬の健康維持に役立つものや、ドッグフードやおやつの安全性を高めたり、おいしさをアップするものも含まれます。

これらの甘味料を、犬は「甘い」と感じることができます。ですから、当然甘味料を使っているものであっても、甘い=美味しいと犬は感じて食べてしまう可能性が高いのです。
甘味料の中には、使い方を誤ると犬の体調を崩す原因になってしまうものも含まれます。
中でも特に注意が必要なのが、人間用のガムや歯磨き粉などでもよく使われているキシリトールです。

 

犬のキシリトール中毒とは

犬のキシリトール中毒は、低血糖と急性の肝不全を起こし、死に至ることもある危険な症状です。
キシリトールは犬によって感受性が異なり、1kg当たり同量を摂取した場合でも、回復する子もいれば、ごく少量でも重篤な中毒症状から、死に至る犬もいます。
これはキシリトールが犬の血糖値を下げるホルモン、インスリンの分泌を過剰に促進してしまうことで起こります。さらに、キシリトールを摂取したことによる低血糖症では、合わせて肝機能障害も起こりやすくなることが分かっているそうです。
(犬の低血糖症についてはこちらを参照:『犬の低血糖の原因は?低血糖の症状と応急処置【獣医師の解説】』)

困ったことにどれくらいの量食べたら重篤な症状が出るようになるのかもはっきりとは分かっていないので、原材料に入っていないかをしっかりチェックしましょう。

おわりに

今回は犬に甘いものを食べさせることについてご紹介いたしました。
甘いものだからと言って犬に有害なものだとは言い切れませんが、リスクとなる食べ物もあるのが実際のところです。
とくに人間用の歯磨き粉やガム、清涼飲料水などに使用される一部の人工甘味料に関しては、犬の体調に影響することもありますので注意が必要してください。