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2021.08.18

犬の低血糖の原因は?低血糖の症状と応急処置【獣医師の解説】

犬の低血糖の原因は?低血糖の症状と応急処置【獣医師の解説】

暑さやストレスが原因となり、犬が食事を食べてくれなくなってしまうことはたびたび起こります。ごはんやオヤツを少しでも食べてくれるようであれば、様子を見ることをオススメしますが、全く食べないような状態がつづくようであれば、低血糖症を起こしてしまう可能性があります。

犬の低血糖症とはどのような病気なのでしょうか?子犬の時期だけではなく、成犬になってからも注意が必要な犬の低血糖症についてご紹介します。

DOG's TALK

この記事の監修 菱沼 篤子

この記事の監修 菱沼 篤子

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はPOCHIのアドバイザー、商品開発などに携わる。シニアの大型犬、小型犬と一緒に暮らしています。

犬の低血糖症の症状・原因とは?

低血糖症とは、血液中の糖分濃度(血糖値)が低下してしまうことが原因で、さまざまな症状が出ている状態を指します。
犬だけではなく、哺乳類がエネルギー源として使える栄養には大きく分けて炭水化物から分解される糖、タンパク質から分解されるアミノ酸、脂質から分解される脂肪酸があります。
体の様々な臓器へとこれらの栄養は血液で運ばれて、それぞれ使用されているのですが、通常時は脳だけは糖の中でもグルコース(ブドウ糖)以外の栄養をエネルギー源として使用することができません。(緊急時には別の栄養が使われるようになります)
このため、血液中の糖分の量(血糖値)が急激に下がると、脳に十分なエネルギーが供給できず、体調に影響を及ぼします。

実は、猫の仲間などの肉食動物はアミノ酸や脂質など複数の成分を再合成して糖を作る糖新生という働きを持っていて、肉ばかりを食べていても血糖値が低くならないようになっています。
しかし、純粋な肉食動物と比較すると犬はこの糖新生の働きが低く、一定量の炭水化物や糖を摂取する必要があるのです。
そのため、肉などばかりを食べている犬でもたびたび低血糖の傾向がみられることがあるようです。

■ 低血糖の犬のサイン

低血糖状態になっている犬は、以下のような行動を見せることがあります。

・舌や歯茎が白くなる
・立ち上がろうとするとふらつくようになる

・ぐったりして、元気がなく寝てばかりいる
・【重度】全身性の痙攣発作、昏睡

しばらく食事を食べない状態が続き、痙攣や意識がないなどの状態は重度の低血糖症をおこしている可能性があります。
速やかに動物病院での処置が必要となります。

年齢別、低血糖に注意するべき犬とは。

犬の低血糖は、犬の年齢ごとに起こりやすい犬の傾向が異なります。
子犬と成犬では注意するべきポイントも違うので、それぞれご紹介します。

■子犬の場合

月齢が若い子犬は低血糖症が起こりやすいといわれています。
原因として、家族が留守だったり、新しい環境に馴染めずに長時間食事をとれないことが考えられます。子犬の時期は食事の回数をこまめに設けることが推奨されていますが、それは低血糖症を予防するためでもあります。
また、寄生虫やウイルス性の腸疾患などにより、十分に栄養を消化吸収できていないことや、門脈シャントなどの先天的な肝臓の病気などにより、糖の代謝が上手く働いていないことが原因になっているケースもあります。

成犬では数日間食事を摂らなかったり、下痢などで糖の吸収がスムーズに行えない時でも、ある程度は血糖値を維持できますが、子犬は血糖値を一定に維持する能力が未発達のため、その都度糖を食事からの取り入れる必要があります。

子犬の時期は、栄養バランスが整った食事をこまめに与えることが大切です。また、子犬の下痢が続いている場合は、動物病院で速やかに診察を受けましょう。下痢をしていなくてもぐったりとしている時間が長かったり、食事に興味を示さないようであれば、精密検査を受けるようにしましょう。

■成犬の場合

成犬の場合は、食事を全く食べなくなってしまった場合でも、血糖値をある程度維持する機能を持っています。
ただし、膵臓の腫瘍(血糖値を下げるホルモン(インスリン)の異常分泌)や副腎皮質機能低下症などの別の病気が原因となって低血糖を発症するケースがあります。
血糖値が異常に上がってしまう糖尿病になっている犬では、血糖値を下げるために飼い主がインスリンを投与する必要がありますが、誤った量のインスリンを与えてしまった時には、急激に血糖値が低下して低血糖症をおこすことがあります。

また、注意が必要なのはキシリトールの誤食です。人間用のガムなどでなじみ深いキシリトールですが、犬がそれなりの量を食べた時には糖が入ってきたと体が誤解して血糖値を下げるインスリンを放出させてしまうことが分かっています。この働きにより、血糖値が下がってしまい、犬の低血糖症が起こることもあります。

これって低血糖症かも?獣医師の応急処置法

犬の様子がおかしい、これって低血糖かも?と感じた時にできる応急処置にはどのようなものがあるのでしょうか?
動物病院に駆け込む前に、まずできる対処をご紹介します。


【家庭での応急処置】
・意識があるようなら、なんでも良いのでまずは食べさせる
・意識がないようであれば、口の中にガムシロップを垂らす

応急処置を済ませたら、速やかに動物病院に連絡し、適切な処置を受けるようにしましょう。
犬の意識がなく、口を開けるのが難しい場合には点滴や注射などで糖を摂取させる必要があります。家庭での対応が難しいので、緊急対応している動物病院にすぐに連絡をしましょう。

おわりに

本日は犬の低血糖症についてご紹介しました。子犬の内は比較的起こりやすいといわれていますが、成犬でもたびたびみられるトラブルです。
成犬の場合は、血糖値が下がってしまう原因として、ほかの病気が関係しているケースが多いので、必ず動物病院で検査を受けるようにしましょう。
病気と付き合いながら、上手く犬の血糖値をコントロールしていくための食事を選んでいく必要が出てくることがあります。