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2025.08.13

犬たちのストレスを緩和。NZの国をあげての花火大会に備えた動物のためのコンサートとは?~南半球のDog's letter~

犬たちのストレスを緩和。NZの国をあげての花火大会に備えた動物のためのコンサートとは?~南半球のDog's letter~
花火写真:© Auckland Unlimited / Overflo

世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?!共通してるかも?!と思える目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。今回は、国営ラジオ局の協力のもと、ペットたちの花火によるストレス緩和のためのコンサートについてご紹介します。

DOG's TALK

この記事を書いた人:グルービー美子

この記事を書いた人:グルービー美子

ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。

個人が花火を買えるのは年に3日間だけ

ニュージーランドに暮らしていて日本が恋しくなることは多々ありますが、そのうちのひとつが花火大会。夏の夜空を飾る日本の花火は本当に美しく、芸術的だと思います。

ニュージーランドにも花火の打ち上げはあるのですが、日本ほど頻繁ではなく、規模も小さくてバリエーションも少なめです。また、日常生活で家庭用花火に触れる機会もそうそうありません。というのも、個人が花火を購入することは禁止されており、唯一解禁となるのが11月5日の「ガイ・フォークスデー」を含む3日間(11月2日~5日)だけだからです。

ガイ・フォースデーはイギリス由来の記念日。1605年に当時のイギリス国王ジェームズ1世を爆殺しようと大量の火薬を持ち込んだガイ・フォークスが逮捕され、暗殺計画が未遂に終わったことを祝う日です。普段は禁じられている花火を買えるとあって楽しみにしている人が多く、国内のそこかしこで花火が行われます。こちらの花火は日本の手持ち花火や噴出花火とは異なり、爆竹のようなもので、かなり大きな音が出ます。花火の閃光や爆音に驚き、パニックになって脱走したり、問題行動を起こしたりするペットが多いのもこの時期の悩み。それを防ぐべく、2024年11月5日、新しい試みとして動物のためのコンサート番組が国営ラジオ局RNZ(Radio New Zealand)で放送されました。

国営ラジオ局RNZとSPCAが協力して番組を制作

この番組「コンサート・フォー・アニマルズ」はRNZとSPCA(動物虐待防止団体)とのコラボで実現したもの。SPCAの調査によるとニュージーランド国内に400万匹以上存在するペット(主に犬猫)のおよそ半数が花火にストレスを感じているそう。

飼い主と一緒に路上パフォーマンスをする犬。音楽が好きな犬もたくさんいます。

飼い主と一緒に路上パフォーマンスをする犬。音楽が好きな犬もたくさんいます。


そこで発案されたのがこちらの番組。ラジオのほか、テレビの衛星放送チャンネル、RNZのアプリなどのストリーミングサービスでガイ・フォークスデー当日の午後6時から深夜24時まで放送されました。
コンサートはクラシックとジャズを中心としたセットリストで、司会者も落ち着いた静かな声のトーンで番組を進行。SPCAはコンサートが動物のストレス緩和になると期待しながらも、犬の飼い主にはガイ・フォークスデーの日は①日中の早い時間に十分な散歩や運動をさせておく、②家のドアや窓をしっかり閉じ、カーテンを閉める、③イグルータイプのベッドやクレートなど快適に隠れることができる場所を用意する、といった注意喚起もしていました。

左:クレートなど安心できる場所/右:日中の十分な運動

左:クレートなど安心できる場所/右:日中の十分な運動

また、ニュージーランドでは義務であるマイクロチップの情報を最新のものにしておくことも推奨。マイクロチップを装着していれば、万一脱走して迷子になっても見つかりやすいからです。

実際の効果は?

2024年に初の試みとして行われたコンサート・フォー・アニマルズ。実際に利用したリスナーからは「雷も怖がる子なので心配していましたが、音楽のせいか落ち着いていました」「うちの犬はコンサートを楽しんでいたように思えました」「コンサート番組を流しているテレビのそばのキャビネットに頭をのせてくつろいでいました」など効果があったとの声が多数寄せられたそうです。

SPCAの担当者によると、犬によっては花火恐怖症になって治療を必要とするケースもあるのだとか。今回のコンサートのように音楽を使うほか、子犬や子猫の頃から少しずつ花火の音に慣れさせるのもひとつの手だと教えてくれました。