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2022.07.14

ドッグフードの保存容器は必要?保存方法は?ドッグフードの酸化の原因と対策について

ドッグフードの保存容器は必要?保存方法は?ドッグフードの酸化の原因と対策について

犬の主食となるドッグフード。中でも粒タイプのドライフードは栄養面と保存性に優れていることから、多くの飼い主から選ばれています。でも、意外と悩むのが自宅に届いた後のドッグフードの保存法。「袋のままで大丈夫でしょうか?」「保存用の容器に移し替えたほうがいいでしょうか?」という声もよくあります。ドッグフードの品質が保たれているのか、どれくらいまで保存することができるのかなど、特に湿気の多い季節になると心配される方が多いです。

そこで今回は、ドッグフード、中でもドライフードの保存と容器について、ペット栄養管理士と一緒に考えてみましょう。

■この記事を書いた人

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。

ドッグフードの酸化とは?

まず、「ドッグフードの酸化」についてです。「フードの酸化」という言葉は良く聞きますが、これは主にドッグフードに使用されている脂質が酸化しているという状態を指します。(酸化を生じやすい食品成分としては、脂質のほか、タンパク質、色素成分<例:カロテン>などがあります)

ドッグフードの原材料の脂質としては、生の肉や魚などのタンパク質源となる食材にもともと含まれている脂身、犬たちの嗜好性を上げ、栄養バランスを整えるために使用される脂肪分や脂、オイル類なども、この「脂質」には含まれています。

これらの脂質が酸素と結びつくことで変質している状態を「ドッグフードが酸化している」と言います。
酸化したドッグフードは嗜好性が下がるほか、酸化した脂質を摂取したことによる下痢、軟便、嘔吐などの症状がみられたり、作り手が意図したような栄養が摂取できないということが起こります。

ドッグフードの安全な保存に容器は必要?

ドッグフード(ドライフード)は極端な高温を避け冷暗所での保存が基本となっています。開封前のウェットフードも同様に、冷暗所での保存で問題ありません。

酸化を防ぐためにドライフードの保存には専用の容器を使った方が良いのか?と悩む方はとても多いです。ネットショップなどでも「ドッグフードストッカー」として色々な商品が紹介されていますよね。

「ドッグフードストッカー」も種類が豊富になっていて、一般的なコンテナタイプや、ドッグフードのパッケージをそのまま入れることができるタイプ、湿気が入りにくいというパッキン付きや、真空状態にすることができるものなど、選ぶのにも一苦労するほどたくさんあります。
特定のフードストッカーを勧める記事も多くありますが、正直なところ、よほど長期間の保存を前提としていないのであれば、ドッグフードの保存のための容器を用意するよりは、早めに使い切るというところに重点を置いたほうが良いと思います。
その理由には、ドッグフードの品質が劣化・酸化する原因の要素にあります。

ドッグフードの酸化を進める要素とは

ドッグフードの酸化を進める代表的な理由を以下にご紹介します。


■温度の影響
脂質の酸化のスピードは、温度が高くなるほど速くなっていきます。ですから、ドッグフードを保存する場所は高温にならない場所、できれば冷暗所が推奨されています。温度の管理はドッグフードの酸化を防ぐためには重要な要素のひとつになります。


■光の影響
意外なところでは、フードの酸化に光が影響しています。光は波長を持っていて、その波長も酸化を進める作用を持っています。特に紫外線は強いエネルギーを持っているため、酸化をより速く進めるといわれています。蛍光灯にも太陽光ほどではありませんが、紫外線が含まれていて、酸化に影響するといわれています。そのため、ドッグフードのパッケージには遮光性の高いものを使用しているメーカーが多いです。


■水分の影響
ドライフードはもともと水分含有量がそこまで高い製品ではありません。しかし、湿度が高い環境においておくと、ドライフードが水分を含んでしまい、酸化も相乗効果として進んでしまうことがあります。


■酸素の影響
やはり酸素に触れることで脂質の変質はより進みやすくなります。そのため、真空パックを採用するほか、ガス充填などによって酸化を抑制しているメーカーもあります。酸素に触れることがドッグフードの酸化を進める代表的な理由として取り上げられる機会が多いのですが、酸素に触れるだけではなく、ほかにも酸化を進める要素は複数考えられますので、総合的に考えて対策をしていく必要があります。

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

人間の食用の油であれば温度が10℃上がるごとに酸素に反応し酸化が進む速度が2倍ずつ上昇していくといわれています。そのため、高温で調理をする揚げ物などに使用された油は、急激に酸化が進むことが多いようです。もちろん、油の種類によっても酸素への反応速度はまちまちですが、超高温で使用された油の酸化が速いのは、共通しているようです。

■ 近年のドッグフードの工程について

最近では、油(オイル)を造粒後、冷やした状態にスプレーコーティングされるようになりました。これにより造粒のための加熱加圧加工による酸化の危険はなくなりましたが、粒表面がベタベタしてオイリーになるためヘルシーでないように誤解されることもあります。そのため、最新技術として、油(オイル)を真空状態でスプレーコーティングする方法が開発されています。
真空で冷えたドッグフードの粒に油(オイル)を吹きかけることで、製造工程でオイルが酸化しないだけではなく、ぎゅっと粒の奥まで油(オイル)が浸透します。油(オイル)が粒にきちんと浸透しているので、ムラになりにくく、まんべんなく成分をしみ込ませることができます。
油(オイル)は粒の奥にしみ込んでいますので、最初から練りこむのと同じように油(オイル)が染み出したりすることもなく、ベタベタ感も軽減できています。

ドッグフードの作り手が考える、保存方法より大事なこと

作り手の立場で考えると、ドッグフードの酸化や品質の劣化を防ぐ目的で、保存容器に移し替えをすることにはあまりメリットがないように思います。それよりも必要量を購入し、酸化が進む前に使い切ることが理想的です。

最近では、ドッグフードのパッケージに「ガスバリア袋」と呼ばれる袋を採用しているところがほとんどです。ガスバリア袋はドッグフードのような酸化のリスクがあるものを保存する際に使われる特殊な製法で作られた袋です。

ガスバリア袋とは、空気(酸素や窒素)などの気体を通さない「ガスバリア性能」を持つ袋のことで、ジッパー付きで遮光性もあるため、完全に封をすると袋の内外の気体の出入りを遮断することができますからプラ容器よりベター。
わざわざ別の容器に移し替える必要はないように思います。

しかし、ガスバリア袋に保存していたとしても、一度開封してしまえば酸化は進んで行ってしまいます。ですから、なるべく酸化の進むリスクを避けて素早くフードを使い切るようにすることが推奨されています。

(開封後のウェットフードは冷蔵庫、冷凍庫での保存が基本となります。詳細はこちら▽困ったときはウェットフードを冷凍保存。メリットと使い方のススメ)



基本的にはドッグフードは、開封してから徐々に劣化が進んでいきます。劣化に要する時間はドッグフードがどれだけ酸素や光、湿気などにさらされるかに左右されますので、なるべくこれらのリスクに触れないようにすること、そして酸化が進む前にドッグフードを使い切ることが一番の対策となるのです。

ドッグフードの酸化は急に進むものではありません。フードの酸化スピードに影響する要素はさまざまありますが、それらを抑える対策を行いつつ、早めに使い切ることを心がけたいですね。

おわりに

ドッグフードを保存するときに活用する保存容器の種類とともに、保存方法より先に心がけたいことをご紹介しました。ドッグフードが酸化してしまう理由を踏まえると、パッケージがしっかりしたものなら、一カ月以内に使いきることを心がければ、保存方法とか容器に移し替える必要性はあまりないように見えます。
もちろん、フードを出しやすくなる、整理ができるほか、ニオイ漏れを防ぐなどの目的でドッグフードの保存容器を使うのであれば十分にメリットを受けることができると思います。
ドッグフードの酸化を防ぐことを目的とするのであれば、だいたい一カ月以内に使い切れる量を購入し、冷暗所で保存したものを与えるという方法が一番なのではないでしょうか。