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2025.07.14
優れた聴覚で大活躍!船で働くドルフィン・ドッグのお仕事~南半球のDog's letter~
島国ニュージーランドではさまざまな海洋生物が見られます。例えばイルカは近海に8種類生息し、世界最小のイルカであるヘクターズ・ドルフィン(和名:セッパリイルカ)など、希少な固有種も存在。また、こうしたイルカを観察するクルーズツアーも人気です。今回は、ドルフィン・ウォッチング・クルーズ会社で働く犬「ドルフィン・ドッグ」をご紹介します。


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この記事を書いた人:グルービー美子
ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。
世界最小のイルカが生息するアカロア
希少なヘクターズ・ドルフィン。丸みを帯びた背びれが特徴。
ドルフィン・ドッグと呼ばれる犬が働いているのは、南島アカロアの「アカロア・ドルフィンズ」社。アカロアは南島最大の都市クライストチャーチから車で1時間30分ほど。2つの火山が侵食されて形成されたバンクス半島に位置する港町です。「海生哺乳類保護区」に指定されている沿岸の海域一帯にヘクターズ・ドルフィンが生息しており、観光の目玉として観察クルーズが行われています。
犬が働くクルーズ会社
ドルフィン・ウォッチング・クルーズを催行する会社は複数ありますが、「アカロア・ドルフィンズ」社のクルーズがユニークな点は、前述したドルフィン・ドッグがクルーの一員として乗船していることでしょう。10歳のベテラン、ミニチュアシュナウザーのバスターをはじめ、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのアルビー、ジャック・ラッセル・テリアのバスター2世、2歳の若手クルーであるミニチュアシュナウザーのテオの4頭が現役で働いており、人間と同様にシフトを組んで勤務しています。また、オフィスではリタイアした17歳のオーストラリアン・ケルピーのジェットがゲストを出迎えることもあるそうです。
ドルフィン・ドッグの仕事とは?
ドルフィン・ドッグの主な仕事はクルーズ中にイルカの群れを見つけること。イルカ同士がコミュニケーションの手段として使うクリックやホイッスルなどの音を聞き、人間に教えてくれるのです。
左上から時計回りに、バスター、アビー、ハンディキャップを抱えながらも元気な働き者のバスター2世、引退犬のジェット。
「アルビー、バスター2世、テオは3人のスキッパー(船長)それぞれの飼い犬で、バスターの飼い主は友人です。ドルフィン・ドッグになるために特別な訓練を受けたわけではなく、犬が本来持つ力を最大限に発揮して働いています」そう話すのはオーナーの1人であるジュリアさん。同社は約20年前に彼女の両親ヒューさん、ピップさん夫妻が立ち上げたもので、現在は夫妻の子供たち、ジュリアさんとジョージさんが中心となり、人間と犬のスタッフと力を合わせて運営しています。
犬の本能でイルカを探知
現役時代のジェットと初代ドルフィン・ドッグのヘクター。
最初のドルフィン・ドッグは、ヒューさんとピップさんの愛犬、ケアーン・テリアのヘクターだったそう。 彼らはヘクターをセーリングボートに乗せ、すぐにイルカの鳴き声が聞こえていることを発見したとか。ヘクターとイルカがボートの上と下で追いかけっこをして遊んでいることもあったといいます。「犬たちは教えなくてもイルカのサインを聞き分けることができます。難しかったのはイルカを見つけても吠えないようにすること。吠えるとイルカがびっくりしてしまいますから」
それぞれ気質や個性が異なる犬に合えることもこの船に乗る楽しみのひとつ。例えば4歳のアルビーは生後6カ月から船に乗っている頼もしいクルーですが、おっとりしたのんびりやさんで、船縁に腹ばいで寝転がり、頭を船先に出してイルカを眺めるのが好きだそうです。現在、ヘクターズ・ドルフィンの生息数はわずか7000頭と推測され、絶滅が危惧されています。同社は環境に配慮してクルーズを運航し、保護活動にも熱心に取り組んでいます。希少なイルカと賢い犬たちに合える「アカロア・ドルフィンズ」社のクルーズは通年催行されているので、機会があればぜひ体験してみてください。


