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2021.01.14

ドッグフードの油抜きは必要?油(オイル)の種類と役割について【ペット栄養管理士】

ドッグフードの油抜きは必要?油(オイル)の種類と役割について【ペット栄養管理士】

ドッグフードの原材料を見ていると、サンフラワー油(ヒマワリ油)やサーモン油などの「油(オイル)」が使用されていることに気が付きます。油というと「肥満の原因になってしまうのでは?」「酸化が進みやすいのでは?」と考えてしまいますよね。

ドッグフードに使用される油(オイル)は、どうして使われているのでしょうか?そして肥満や酸化の心配はないのでしょうか?気になることについて、調べてみました。

今回は、ドッグフードに使用される油とその疑問についてご紹介します。

ドライフードにはなぜ油(オイル)が使われているの?

ドッグフードには油(オイル)がなぜ使われているのでしょうか?その理由から探っていきましょう。

 

■必須栄養素である脂肪酸の供給源として

リノール酸、DHA・EPA(成長期・妊娠授乳期)は犬の必須栄養素であり、総合栄養ドッグフードには必ず配合しなくてはいけません。

 

■嗜好性を高めるため

ドッグフードに使用されている油(オイル)は、ドッグフードの嗜好性を高めるために使用されていることがあります。

犬が好きな匂いを使用することで、犬が興味を持ち嗜好性が上がります。

また逆に飼い主にとって身近な匂いで、ドッグフード特有の匂いを抑えるために使用されている側面もあります。

 

■栄養バランスを整えるため

嗜好性を高める以外にもドッグフードの油(オイル)には大切な役割があります。それは、栄養バランスの調整です。

犬の健康管理において、油分を含む脂質は必須栄養素の一つです。脂質はエネルギー源として活用されるほか、細胞を保護する膜を作ったり、皮膚や被毛の保護にも必要な栄養素です。

また、ドッグフードに使用される油(オイル)には機能性成分を含むものもあります。代表的なものとしては、EPAやDHAに代表されるオメガ3脂肪酸のほか、植物由来の油(オイル)には抗酸化力を持つポリフェノールやビタミンEを含むものもあります。

 

ドライフードに使われる油(オイル)の種類

ドライフードに使用される油(オイル)にはいくつか種類があり、それぞれ特長があります。POCHIで取り扱っているプレミアムドッグフードやサプリメントで使われるものをいくつかご紹介します。

脂肪酸源

■鶏脂肪(チキンオイル)

その名の通り、鶏肉の脂肪分です。人間用の食品を加工するにあたり、肉や鶏の皮などから出る脂肪を活用するケースもあります。
必須脂肪酸であるリノール酸を多く含み、嗜好性が高く犬の興味を引きやすいといわれています。

 

■サンフラワーオイル(ヒマワリ油)

ヒマワリの種から搾り取ることが出来る油分です。ロシアなどの一部のヨーロッパでは日常的に調理にも使用される油(オイル)で、リノール酸などのオメガ6脂肪酸が多く含まれています。

 

■サーモン油(オイル)

その名の通り、サーモンからとれる油(オイル)です。お魚系の良い香りがして食欲を誘うほか、オメガ3脂肪酸であるEPA・DHAを豊富に含みます。抗酸化成分であるカロテノイド、アスタキサンチンも含まれていることが特長です。

 

■(ニシンなど)フィッシュ油(オイル)


サーモン以外の魚(ニシンなど)からとれる油(オイル)のことです。魚の油(オイル)にはEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。魚が好きな犬の興味を引きやすく、嗜好性にも優れています。

機能性成分源

■フラックスシード油(オイル)

フラックスシード油(オイル)は、日本でも健康食品として人気の亜麻仁油の別名です。亜麻仁油は亜麻という植物の種子をしぼって作られていて、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)を含んでいます。

 

■ボラージ油(オイル)、月見草油(オイル)

月見草油(オイル)はその名の通り、月見草という植物から抽出される油(オイル)で、希少なγリノレン酸を含むことが知られています。
また、ボラージ油(オイル)も同様にγリノレン酸を豊富に含む油(オイル)で、こちらはルリジサという植物から抽出されます。伝統的に皮膚トラブルなどに使用されてきたオイルです。

 

■ヘンプシード油(オイル)

ヘンプシードオイルはヘンプ(麻)の実から抽出される油(オイル)で、最近世界的に注目を集めている食材です。

ヘンプシード油(オイル)にはリノール酸(オメガ6)、αリノレン酸(オメガ3)、γリノレン酸(オメガ6)が含まれており、なおかつ脂肪酸バランスが理想的。γリノレン酸は月見草油(オイル)やボラージ油(オイル)にも含まれていますが、3つの脂肪酸がバランスよく含まれているのはヘンプシード油(オイル)です。
また、世界的トレンドとなり注目されているのがヘンプシードに含まれているCBD(カンナビジオール)。この成分は、心を落ち着かせ、免疫系を底上げしてくれるものとして、安全性が確認され始め食用としてもラインナップが拡大中です。

 

■グリーンリップドマッセル(緑イ貝)油(オイル)

グリーンリップドマッセルとは、緑イ貝の別名です。グリーンリップドマッセルは、EPAを豊富に含んでいる貝の仲間で、見た目はムール貝に似ています。
EPA以外にも多種のオメガ3系脂肪酸を含んでおり、関節系サプリメントにも使用されています。
 

 

■クリル油(オイル)

クリル油(オイル)とは、オキアミと呼ばれる甲殻類の一種からとれる油(オイル)のことです。クリル油(オイル)にもEPAやDHAのようなオメガ3脂肪酸が含まれていて、サーモン油(オイル)同様にアスタキサンチンが含まれています。

 

ドッグフードのコーティングとは

栄養バランスを整えたり、機能性成分を含む油(オイル)をドッグフードに使用するとき、どのようにして油(オイル)を含ませるかというと、大きく分けて3つの方法があります。

まず、肉や魚などの他の材料と一緒に全て混ぜて練りこんでしまう方法。他の材料と同じように機械に入れてドッグフードに練りこむことで、手間もかからず手軽です。
ただし、この方法ではオメガ3脂肪酸などの熱に弱い成分が製造の工程で酸化が進んでしまう危険性があります。

そこで、油(オイル)を造粒後、冷やした状態にスプレーコーティングされるようになりました。これにより加熱加圧加工による酸化の危険はなくなりましたが、粒表面がベタベタしてオイリーになるためヘルシーでないように誤解されることもあります。そのため、最新技術として、油(オイル)を真空状態でスプレーコーティングする方法が開発されています。
真空で冷えたドッグフードの粒に油(オイル)を吹きかけることで、製造工程でオイルが酸化しないだけではなく、ぎゅっと粒の奥まで油(オイル)が浸透します。油(オイル)が粒にきちんと浸透しているので、ムラになりにくく、まんべんなく成分をしみ込ませることができます。
油(オイル)は粒の奥にしみ込んでいますので、最初から練りこむのと同じように油(オイル)が染み出したりすることもなく、ベタベタ感も軽減できています。

オメガ3脂肪酸のような加熱加工に向かない成分を配合するための最適な製造方法ですが、専用の機械が必要となります。
オイルコーティングをドッグフードに施すことで酸化が進みやすくなると考える人もいるようですが、オイルコーティングは酸化しやすい成分を製造工程で酸化させないために行う処理です。

おわりに

本日はドッグフードに使用される油(オイル)の種類とドッグフードのコーティングについてご紹介しました。一言で「油(オイル)」といっても、その種類や嬉しい成分はさまざま。

犬の健康管理をしていく上で、油分や脂質は「肥満」のイメージと結びつけて悪者にされてしまいがちですが、「なぜ」「なんのために」油(オイル)が使用されているのかがわかれば安心できます。

■この記事を書いた人

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。