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2022.09.21

今だから知りたい、ドッグフードの酸化防止剤エトキシキンやBHA、BHT とは。

今だから知りたい、ドッグフードの酸化防止剤エトキシキンやBHA、BHT とは。

かつては酸化防止剤としてエトキシキンやBHA、BHTという成分が当たり前にドッグフードに使用されていました。
これらの成分について知っている、という方は多いと思います。インターネット上には、エトキシキンやBHA、BHTが「犬の体に悪いもの」という印象を強く押し出した記事は多くありますが、どのような成分で、どうして見かけることが少なくなっていったのかまでは、きちんと紹介している情報はあまりないように思います。

そこで今回は、かつてはメジャーなドッグフードの酸化防止剤でもあったエトキシキンやBHA、BHTという成分について改めてご紹介いたします。 

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。

エトキシキンやBHA、BHTとは


用途が同じ酸化防止で、混乱しやすいのですが”エトキシキン”と"BHA"と"BHT"はそれぞれ別の成分です。
BHAの正式名称は「ブチルヒドロキシアニソール」といい、BHTの正式な名称は「ジブチルヒドロキシトルエン」です。

  • エトキシキンってどんな成分?

エトキシキンはドッグフードだけではなく、食肉用の動物の飼料にもよく酸化防止剤として使用されることがある成分です。ただし、エトキシキンは人間の食品に使用できる食品添加物ではなく、日本では動物の飼料添加物としてのみ使用ができる成分となっています。とはいえ、エトキシキンを含む飼料を食べて育った動物の肉や乳のなかにはエトキシキンが残留しています。これも一時期問題視されていましたが、現在では食肉、乳それぞれに農林水産省によって明確な安全基準が設けられています。
エトキシキンを過剰に摂取しすぎると、犬でも人間でも、他の動物でも腎臓に影響が出るといわれています。
エトキシキンは単体で使用基準値が設けられており、75μg/g以下となっています。

  • BHAってどんな成分?

BHAは、酸化防止剤としてドッグフードに使用される成分の中でも、「合成酸化防止剤」というグループに含まれる成分です。その名の通り、化学的に合成されて作られる成分で、非常に優れた酸化防止剤として知られています。現在でも化粧品や、人間用の食品にも使用が許可されている、食品添加物に指定されている成分です。

  • BHTってどんな成分?

BHTもBHAと同じく合成酸化防止剤の一種です。BHAとの違いは、BHTの方がより安価であり、化粧品やシャンプー、ボディソープなどに使用されることも多くありました。このことから、BHA以上に「ドッグフードや食品に添加される成分としてふさわしくない」というイメージを持っている方も多いようです。

■ エトキシキン・BHA・BHTの制限について

エトキシキン・BHA・BHTともにペットフード安全法において、使用基準にルールが設けられています。それは、"エトキシキン・BHA・BHTの総量で150ppm以下"というものです。
エトキシキン・BHA・BHTそれぞれに基準値が設けられているわけではありません。
いずれも厚生労働省によって食品添加物に指定されている成分ですので、適切な使用量を守る限りは健康への影響は認められない「安全な成分」であるということになります。

ドッグフードに「エトキシキン」「BHA」「BHT」が使用されなくなった背景

少し前に、とある大手のドッグフードメーカーでフードのレシピの見直しが行われ、BHAを使用しなくなったことが、話題になったことがありました。
このドッグフードメーカーだけではなく、多くのブランドで徐々にBHAやBHTなどの合成酸化防止剤を使用しなくなってきています。これっていったいなぜなのでしょうか?
やっぱり有害であることが判明したからでしょうか?

 

■発がん性があるって本当?

「エトキシキン、BHAやBHTは、発がん性がある!」と言われることがあります。しかし厚生労働省によると、BHAやBHTおよびその代謝物が直接的な毒性を示すことはない、と明言しています。
また、発がん性についても、これらの成分を大量に長期間投与したマウスなどのげっ歯類にのみ見られたものであるとの見解を示しています。というのも、BHAやBHTを投与したマウスでがんが見つかったのは前胃と呼ばれる臓器であり、この臓器は犬や猫、人間には存在しないものだからです。

ですから、BHAとBHTの発がん性は「げっ歯類に限ったこと」であるというのが、専門家や厚生労働省の見解です。
また、ドッグフードなどに使用される量は、発がん性が認められたケースよりもはるかに少ない量です。そのため、直接健康に影響が出る可能性は限りなく低いといわれています。

 

■エトキシキンやBHA、BHTが使用されなくなった背景

エトキシキンやBHA、BHTといった合成酸化防止剤を使用する最大のメリットは、安価で安定した酸化防止機能を持つことです。
かつてはドッグフードの酸化を進める要因が多く、対策しないと、酸化の進んだ危険なフードになってしまいます。だからこそ合成酸化防止剤を使用する必要があったという側面がありました。

しかし、今ではメーカーもドッグフードの酸化を防ぐために多くの技術を取り入れるようになりました。
パッケージの素材をガスバリアのものに変えたり、ガス充填などの技術なども開発され、徐々にエトキシキンやBHA、BHTのような「強い酸化防止剤」である必要がなくなってきているということは大きいと思います。

それでも、犬の健康のため、やっぱり強い酸化防止剤は気になります。だから、ドッグフードの酸化防止剤としてローズマリーエキスやミックストコフェロール(ビタミンE)など、自然界に存在する成分が使用さたものを選びたいですね。

ドッグフードの酸化防止剤の現在とこれから

ドッグフードだけに限らず、世界的に酸化防止剤は注目されつつあるトピックのひとつになっています。
やはり温暖化や気候変動、複雑な世界情勢などにより、食料の保存性を高めるために多くの科学者や技術者がより安全で、使いやすい酸化防止に役立つ成分や製法の開発に注力しています。
これから先「犬にとっても私たちにとっても安全で使いやすい」酸化防止剤が登場することになるかもしれません。
より優れた酸化防止剤が登場すれば、ドッグフードの保存方法や使用できる原材料の栄養バランスそのものも大きく変わる可能性を秘めています。
なんとなく"酸化防止剤"という言葉そのものに対して苦手意識を持つ方も多いのですが、悪者と決めつけるのではなく、この成分はどのようなものなのか、犬の健康とどのような関係があるのかを冷静に見定めていく必要があると思います。

おわりに

かつては主流だった合成酸化防止剤であるBHAやBHTは、ドッグフードにこそ使用される場面は減りつつありますが、それ以外ではまだまだ使用されています。
それこそ、ドッグフードの酸化防止剤としてのBHAやBHTは気になっても、自分が普段使っていて、口にしないボディソープに使用されていたことには気が付かなかった…、なんてことはあるかもしれません。