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2020.06.08

知っていますか?犬が雷を怖がる理由と対処法

知っていますか?犬が雷を怖がる理由と対処法

ついさっきまで穏やかに過ごしていたのに、雷が起きたら突然犬がブルブル震えたり、吠えたりする姿を見たことはないでしょうか。雷が苦手な犬は、じつは少なくありません。なかには「雷恐怖症」と呼ばれるほど、異常な恐怖反応を示す犬もいるようです。今回は犬が雷を怖がる理由や、パニックを起こしたときの対処法についてご紹介します。

人以上に、犬は雷が苦手な生き物

空を引き裂く光、鳴り響く雷鳴。人を不安な気持ちにさせる雷ですが、どうやら犬は私たち以上に雷が苦手な傾向があるようです。もちろん反応には個体差があり、雷が起きても平然としている犬もいますが、部屋をウロウロ歩き回ったり、震えたり、鳴いたりして、不安や恐怖を隠せない様子になることも多いようです。なかには恐怖のあまり下痢や嘔吐、痙攣を起こしてしまう犬や、その場から逃げようとして暴れてしまう犬もいるため、「たかが雷」とあなどってはいけません。

ではなぜ犬はそれほどまでに雷が怖いのでしょうか。理由ははっきりとは解明されていませんが、いくつかの説があります。

●野生時代の名残
その昔、犬が野生で暮らしていたとき、大きな気象の変化は命に関わることでした。その名残から、激しい雨や雷をともなう雷が苦手なのではといわれています。同じように嫌う傾向があるものに花火などもあります。

●慣れない音や光
普段の生活では聞きなれない大きな音や、雷光による強い光に驚いているパターン。とくに犬は人よりも聴覚が優れているため、雷鳴がより強い音で響いているのかもしれません。慣れない音や光が苦手な犬は、花火やカメラのフラッシュも嫌がる傾向にあります。

●静電気の刺激
雷のもとは静電気。敏感な犬の場合、この静電気を感じ取り、不快感を抱いている可能性があります。毛がフサフサした犬に多いといわれています。

●気圧の変化
気圧の変化で体調を崩す人がいますが、犬も低気圧が苦手だといわれています。犬が台風など、雷以外の気象にも影響されるなら、気圧の影響を疑ってみましょう。てんかん発作の持病を持っている犬やハイシニア犬は気圧の変化によって体調が変化することもあるようです。

●オゾン臭
雷によって発生するオゾンには独特のにおいがあります。人の何万倍も鼻が利くといわれている犬にとって、このオゾン臭が耐え難いのでは、と唱える説もあります。

飼い主の冷静な行動が犬を安心させる

雷が発生し、犬が恐怖をあらわしたとき、飼い主にとってもっとも大切なのは、普段と変わらない行動をとることです。飼い主がうろたえてしまうと、犬はその恐怖を感じ取り、かえって不安を募らせてしまいます。そのため「怖いね」と声をかけたり、抱き寄せようとしたり、過剰なスキンシップも逆効果。飼い主が普段通りであれば、犬も少しずつ状況を理解し、平常心を取り戻していきます。

過剰に心配をするのもいけませんが、叱りつけるのも恐怖行動を加速させる原因になります。怖がっている犬に対して罰を与えるような対応は、犬との信頼関係も壊しかねません。多少、落ち着きがない行動を見せても、なるべく平然と、いつも通りにふるまってください。

犬が室内にいるとき部屋の隅やベッドの隙間、クレートなどに移動した場合は、身をひそめることで安心を得ようとしています。安全が確保されている場所であるならば、そのままそっと見守りましょう。ただし行動が制限されるとパニックが増す恐れがあるため、クレートの扉はかならず開けておいてください。

留守番が多い犬には、留守番時に雷が発生したときのために、室内に逃げ場をつくっておくことをおすすめします。狭く静かな場所や使い慣れているおもちゃを置くなど、犬が安心できる工夫をしてあげましょう。雷による停電でエアコンが切れても大丈夫なよう、夏場は冷却マット、冬場は毛布を常備しておくとさらに安心ですね。

雷雨の日は普段よりも迷子の犬が増える


考えておくべきは、犬が恐怖心のあまり、嘔吐や痙攣、失神といったひどい身体な異変が出た場合です。このような場合は放っておかず、早急にかかりつけの動物病院に連れていきましょう。また恐怖行動がエスカレートし、極度のパニック状態に陥ってしまう犬もいます。こうなると飼い主の言葉やジェスチャーでは制御ができません。
犬はパニックになると不安行動から逃避行動に出ることが多く、家を飛び出してしまう場合も。実際、雷雨の日は普段よりも迷子の犬が増えるという報告もあります。雷が起きたら、玄関や窓など出入り口のカギはかならず閉めて不安行動に備えておきましょう。


雷に対する恐怖行動・不安行動があまりにもひどいようなら、「雷恐怖症」の可能性もあります。恐怖感の緩和をめざして、獣医行動診療科認定医がいる動物病院に相談するのもひとつの方法です。行動療法ではカウンセリングを通じて、原因を突き止めた後、認定医の指導のもと、日常生活の見直しやトレーニング、ときにはサプリメントなども使用しながら、恐怖心に負けない心を育んでいきます。

おわりに


雷は局地的な雷雨が発生しやすい8月に多いというデータがあります。まだ雷を見たことがない子犬の場合、雷が起きたときにどんな反応を示すかが分かりません。子犬を迎えたばかりのご家庭では、雷シーズンが来る前に、クレートに慣れさせる、部屋の安全性を保つ、パニックになって外に出てしまったときのために迷子札をつける、といった準備をしておくことをおすすめします。

犬の不安行動や雷への恐怖心は急に改善されることはまずないといえます。ですから、雷が苦手なことが分かっている犬の場合は、飼い主ができるだけ対策を講じておくことが大切です。