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2022.06.06

犬が消化しやすいドッグフードとは?消化の基礎をペット栄養管理士が解説します

犬が消化しやすいドッグフードとは?消化の基礎をペット栄養管理士が解説します

消化に良いドッグフードを探している、という方からのご相談は1年を通して多い傾向にあります。これは下痢や嘔吐などのさまざまな症状に悩む犬が多いのかもしれません。
なかなかおなかが安定せず、長引くと心配になりますし、飼い主としても困ってしまうことも多いですよね。小型犬でもトイレが上手くできなくなったり、大型犬ではさらに量が多いので処理に手がかかるほか、被毛にもついてしまいシャンプーが必要になる場面も出てきます。

”うちの子”にとって、消化に良いドッグフードを探すときに知っておきたい犬の消化に関する基礎情報をペット栄養管理士が解説します。
犬にとって消化に良い食事ってどんなものだろう?と考えたときの参考にしてみてください。

犬の消化器系の特長を知ろう。

人間は動物性のものも、植物性のものも消化吸収できる雑食性の生き物です。
では、ほ乳類の「食肉目」というグループに属する動物である犬はどうなのでしょうか?
食肉目というグループに属してはいますが、犬は人間との共同生活が長いことから雑食性が強くなっていると考えられています。

「でも、犬の親戚にあたるオオカミは肉食動物でしょ?」と思う方も多いと思います。しかし最近の研究ではオオカミも雑食性の強い動物であることが通説となっていて、仲間と協力して狩りをして手に入れる肉のほかにも、ほかの肉食動物の食べ残し、昆虫や魚、ベリー類などの果実、植物の葉や根っこ、人間の出した残飯など本当にさまざまなものを食べてきたことが判明しました。(※猫は、動物性の食事を中心としている純粋な肉食動物と言われます。)

人間最古の友達とも呼ばれる犬は人間と一緒に長く暮らしていく中で、人間と食事を分け合いながら消化器系はオオカミよりさらに雑食性が強くなったと考えられています。

ちなみに、犬を肉食動物として考え、肉をたくさん使用した食事こそが犬の消化に適していると考えるメーカーも多かったのですが、最近では犬=肉食寄りの雑食動物である、という前提で考えるところも増えてきました。

犬の消化不良?下痢・軟便になる原因は?

■腸内環境が乱れやすい

犬の下痢や軟便が続いてしまう理由の代表的なものには、腸内環境の乱れがあります。
犬だけではなく、ほ乳類の腸の中にはたくさんの細菌が暮らしていて、健康維持に役立つ成分を作ったりするもの(有用菌)や増えすぎると厄介な働きをするもの(悪玉菌)、どちらでもないもの(日和見菌)などがあり、それぞれが絶妙なバランスで共存している状態が理想的であるという考えが主流です。

腸内細菌の中には、人間が本来消化できない食物繊維を分解して別の栄養に作り替えるものや、腸の働きをサポートする成分を作るものなどがあります。
これらの有用菌は消化そのものに関係しますので、消化を適切に行うためには非常に重要な存在になります。
また、腸の中で悪玉菌が作る有害物質の中には腸の働きを妨げるものもありますが、そういった厄介者の菌が増えすぎてしまうことを防ぐことも重要です。

腸内細菌はとにかくバランスが大切ですが、日々バランスが変化し続けています。とくに軟便や下痢になり、ウンチの回数が増えると腸内細菌が排出されることも多くなり、菌のバランスが乱れやすくなります。
断続的に下痢や軟便を繰り返している犬は、腸内細菌のバランスが乱れている可能性が高いです。

■腸の動きが悪くなってしまっている

腸内環境のバランスが乱れてしまっている犬は、腸の動きそのものが悪くなってしまいます。

栄養バランスが偏った食事を続ける、ストレスがかかる環境が続くなどが原因で、腸の運動が過剰になると、腸の内容物が急速に通過するため水分や栄養の吸収が十分に行われず、水分量の多い便、つまり軟便になります。
また、腸からの水分分泌が異常に増えると、下痢や軟便を起こしやすくなります。

断続的に続く犬の軟便は、腸内細菌のバランスの乱れ、そして腸の動きの異常が相互に関係しあっていることが多いようです。
何度も繰り返してしまう犬の軟便の対策には、腸内細菌へのアプローチと腸の適切な働きの両面からアプローチをしていくことがカギになります。

■体質、遺伝的にお腹が弱い子も多いです

アニコム:家庭どうぶつ白書2021 より

アニコム:家庭どうぶつ白書2021 より

もちろん、犬の中には体質的にお腹が弱い子も多いです。お腹が弱い、というと分かりにくいのですが、ストレスの影響が軟便や下痢という形で出やすい子、食べなれないものを食べるとすぐにお腹が緩くなってしまう子など、心当たりがある飼い主さんもいるのではないでしょうか。

また、脂質が高いフードでウンチがゆるくなりやすい犬、高タンパク食が苦手という犬もいます。これらはその子の個性の一つですので、今までどんな食事で体調を崩してきたかを飼い主が注意深く観察していくしかありません。ほかにも、食物アレルギーによる消化不良も考えられます。

ただ、データとしてほかの犬種と比較して消化器系トラブルを起こしやすい犬種もあります。具体的には、トイプードル、ミニチュアダックス、ヨークシャーテリア、シベリアンハスキー、ジャーマンシェパードなどではほかの犬種と比較して、消化器系のトラブルが多くみられる傾向があるようです。

うちの子にとって消化に良いドッグフードの探し方

お腹が弱い犬にとって、体質に合ったドッグフードを探すのはとても大変です。
どんな基準で探したらいいのか、何があっているのか、あっていないのか分からない時は、タンパク質など原材料を限定しているフード(L.I.Dフード)からはじめたり、様々な種類のドッグフードを試すことが出来るトライアルセットやトライアルサイズのものからチェックしてみるのもオススメです。

いくつか試してみて、「これなら大丈夫そう!」というものがあれば、そのフードに書かれている原材料表記の中からタンパク源の種類をまずは主軸に探してみてください。

おわりに

今回は、お腹が弱い犬たちのために「消化にいいフード」を探す時に知っておきたい情報をご紹介しました。犬の消化は個体差が大きく、すべての犬にとって同じように消化にいいフードというのは難しいのが現実です。
繊維質などの栄養バランスの微妙な違いがウンチの状態を大きく変えることがありますし、飼い主は犬の体調の変化や食事の様子、ウンチの変化から推測しながらうちの子に合うフードを探していくことになります。傾向が分からない時には、お腹をサポートしてくれるサプリメントなどを活用しつつ、色々なフードをお試しできるトライアルセットなどをうまく活用して、食事の傾向を探ってみてくださいね。

■この記事を書いた人

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。