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2025.09.03
シニア犬に特化した預かりサービス「パウサム・ドッグケア」を取材~南半球のDog's letter~
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世界の様々な地域に順応して暮らしている犬たち。
ところ変われば犬とのライフスタイルも変わります。日本とはちょっと違う?!共通してるかも?!と思える目新しいドッグライフ情報を、自然豊かな南半球に位置するニュージーランドからお届けします。今回は、シニア犬のケア施設「パウサム・ドッグケア」についてご紹介します。


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この記事を書いた人:グルービー美子
ニュージーランド・オークランド在住のトラベルライター。JAL機内誌やガイドこの記事を書いた人:グルービー美子ブック「地球の歩き方」などに寄稿。子供の頃から柴犬と暮らし、現在はサビ猫のお世話係。趣味はサーフィン。
NZのシニア犬向けサービスとは?
人口約513万人のニュージーランドでは現在およそ83万頭の犬が飼育され、毎年2.4%ほど新規飼育頭数を増やしているとか。これは人口増加率(約2%)よりも高い数字で、この国の犬好き度合いを表しているといえます。
愛する犬にはいつまでも元気でいてほしい ―― それは国を問わず、全飼い主共有の願いです。とはいえ、犬も年を重ねると特別なケアが必要となってきます。そういえば、ニュージーランドのシニア犬ケアサービスはどうなっているのだろう……そんな疑問を抱き、8歳以上のシニア犬に特化した預かりサービス「パウサム・ドッグケア」のオーナー、ミシェール・デールさんに話を伺いました。
シニア犬を安心して預けられる場所に
ミシェールさんと彼女が初めて迎えたシニア保護犬のドジー。ドジーはすでに高齢のため虹の橋を渡っています。
「パウサム・ドッグケアを立ち上げたのは2023年5月。家を空ける用事ができたとき、自分が 飼っているシニア犬を預けるのに適した場所がないと気付いたことが設立のきっかけです」
そう話すミシェールさん。これまでなかなか引き取り手のないシニア犬ばかり家族に迎えており、現在もご夫婦で3匹の保護犬と暮らしています。シニア犬は人に預けるのが難しく、飼い主は外出しづらいもの。ニュージーランドには「ケンネル」と呼ばれる犬の預かり施設があるのですが、そこは広いドッグランが備わった犬舎で、たくさんの犬が共同生活をおくります。若い犬にとっては遊び相手にも事欠かず、楽しそうですが、のんびりしたいシニア犬には不向きな印象。
そこでミシェールさんは弁護士秘書としてフルタイムで働く傍ら、週末および祝日に自宅でシニア犬の預かりサービスを始めたといいます。「デイケアのほか、お泊りにも対応し、お預かりした犬は自分の犬と同じように愛情を注いでケアします。ケンネルは一般的に若くて健康な犬のためのもの。オークランドには体に障害があったり、投薬が必要だったりするシニア犬を預けられる場所がほとんどないのが現状です。私はシニア犬の飼い主さんが安心して愛犬を任せられる存在になりたいと思いました」
シニア犬のケアで大切なこと
寒い日はジャケットを着用
シニア犬をケアするうえで最も注意するのはどのようなことでしょうか? そうミシェールさんに尋ねると、温度管理だと教えてくれました。シニア犬は温度調節が苦手なため、冬はしっかり暖房し、ジャケットや毛布も活用して暖かく、夏はクーラーの設定温度を低めにして涼しく快適な環境を保っているそうです。
「パウサム・ドッグケアを利用する犬の多くが薬やサプリメントを服用しているので、それぞれ与える量と時間をきっちり守ることも重要です。ある犬は午前3回、午後4回の1日7回投薬しなければなりませんでしたし、糖尿病を患っていてインスリン注射が必要な犬もいます」
さらに、関節に問題があったり、足が弱っていたりして段差を乗り越えられない犬も少なくないとか。ミシェールさんはソファやベッドなどの上り下りの際、犬を抱えて補助も行っています。
時間をかけて忍耐強くシニア犬に向き合う
いずれはパウサム・ドッグケアを本業にし、フルタイムでシニア犬の世話をしたいと語るミシェールさん。現在預かっているのは1日最大4匹ですが、この仕事を本業にしたとしてもあまり規模を大きくしたいとは考えていないそうです。
「シニア犬には特別な魅力があり、特別なケアが必要です。1対1で時間をかけなくては適切なケアができません。食事ひとつとっても時間がかかりますし、手からでないと食べてくれない子もいます。例えば14歳になる我が家のシニア犬、ギズモは口腔ガンで食欲があまりなく、フードの好みもよく変わるので、どうしたら食べてくれるのかいつも頭を悩ませています。忍耐強く向き合うことが大切だと思っています」
ニュージーランドではまだ貴重なシニア犬の預かりサービス。この国でも犬の平均寿命は伸びつつあり、今後ますます需要が高まっていきそうです。
のんびりお昼寝したり、自宅で過ごすのと同じように過ごせるパウサム・ドッグケア。画像右はミシェールさんの愛犬ギズモ。


